目次
酪農とは
乳牛を育てて牛乳を生産する農業を酪農といいます。乳牛は乳房が発達していて、1日に約20kg以上の牛乳を出します。たくさんの乳を出すためには、牛自体がしっかりと栄養を取る必要があるため、そのための体、特に消化管を育てることが重要になります。生まれてから初めての子牛を産むまでの雌牛を育成牛といい、育成牛を立派な乳牛に育てて、乳牛から搾乳した生乳を出荷します。飼養戸数や飼養頭数は
畜産統計調査によると、2018年の全国の乳用牛の飼養戸数は1万5,700戸で、廃業等により前年に比べ700戸(4.3%)減少しました。飼養頭数は132万8,000頭で、前年に比べ5,000頭(0.4%)増加しました。なお、1戸当たり飼養頭数は84.6頭で、前年に比べ3.9頭増加しており、1戸あたりの規模の拡大が進んでいます。規模拡大に伴い六次産業化を進め、ソフトクリームやチーズなどを生産販売する事業者もあります。
参考:「畜産統計調査」(農林水産省)
生乳の生産量は減少傾向。自給率の低下も
2018年度の生乳の生産量は728万tで、頭数の減少により減少傾向にあります。一方、消費量については食生活の多様化が進んだことにより、1,243万tとなっており、特にチーズや生クリーム等の消費量が増えています。このような状況の中、1985年頃まで80%を維持していた牛乳、乳製品の食料自給率は、近年約60%にまで低下しています。参考:「2018年度食料需給表」(農林水産省)
酪農経営の所得
酪農経営(全国平均)の1経営体当たり農業粗収益は6,273万円で、前年に比べ8.8%増加しました。一方、農業経営費は4,671万円で、前年に比べ8.7%増加しています。この結果、農業所得は1,602万円となり前年に比べ9.1%増加しました。参考:「2017年営農類型別経営統計」(農林水産省)
乳用牛の種類と特徴
日本ではおよそ133万頭の乳用牛が飼育されています。品種により異なる特徴があります。ホルスタイン種
日本で飼育されている90%以上がホルスタイン種です。乳量が多いことが特徴で、乳牛として世界中で飼育されています。平均的な体形は、体長(肩から尾のつけ根まで)約170cm、体高(地面から肩の高さまで)約150cm、体重600~700kgです。暑さに弱い面があります。ジャージー種
日本ではホルスタイン種の次に頭数が多いジャージー種は、イギリス海峡のジャージー島原産です。小型でホルスタイン種に比べて乳量は少ないですが、乳脂肪分が高いことが特徴。主に岡山県や熊本県で多く飼育されています。ブラウンスイス種
乳脂肪分とタンパク質が高い濃厚な乳を出すため、バターやチーズの加工に適しています。主に北海道や九州で飼育されています。ほかにも、赤かっ色と白のまだらのガンジー種や角に独特な曲線があるエアシャー種など、さまざまな乳用牛がいます。
酪農の仕事内容
毎日、朝6時ごろから餌やりと搾乳、牛舎の清掃を行います。牛は青草の場合には、1日に50kg~60kg、乾燥した草の場合には約15kgを食べ、60~80Lの水を飲みます。搾乳はミルカーという機械で行うことが一般的です。ほかにも牛の健康チェックや子牛への哺乳などの仕事があります。生乳は生鮮食品なので、衛生に注意することがとても大切です。清潔な服装で作業を行うことや、搾乳の際にほこりが出ないように環境を整えること、搾乳器具をきれいに洗浄、殺菌することなどに気を配るようにします。搾乳方法が良いかどうかで、乳量や乳質が左右されます。しぼった牛乳はバルククーラーで適切な温度で管理し、出荷します。夕方にふたたび餌やりと搾乳と牛舎の清掃を行います。
また、牧草地などを有する牧場では、春から秋にかけての日中、牧草を育成する仕事があります。収穫にはトラクターなどを使うことが多いため、公道でトラクターが運転できるよう運転免許は取得しておいた方がよいでしょう。牧草は収穫後に長期保存ができるように乾燥させたり、発酵させたりします。良い餌を作ることが、乳質に影響を与えるので、餌づくりにこだわりを持つ酪農家もいます。
また、乳牛は出産しないと乳が出ないため、定期的に出産させる必要があります。出産から次の主産までのサイクルは通常12~15カ月で、1頭につき3~4回繰り返します。人工授精や出産の補助なども大切な仕事です。牛の人工受精、受精卵の移植を行うことができる家畜人工授精師の資格を持っていると役に立ちます。
酪農の仕事のやりがいや向いている人は?
酪農の仕事は、毎日牛の世話と搾乳をすることが基本なので、動物が好きな人にはやりがいが感じられるでしょう。あわせて羊や豚などほかの動物も飼育している牧場もあるので、幅広い動物と接する場合もあります。動物は人間の思うとおりに動くとは限らないので、根気よく動物と向き合える人に向いている仕事です。また、生産した生乳を利用して、アイスクリームやヨーグルトなどの加工品を生産している法人に就職した場合には商品の企画や販売、観光客をターゲットにした観光牧場として運営している場合には接客などの仕事があるので、商品企画のアイデアを出せる人や、客を楽しませるサービス精神がある人は活躍できる場面があるでしょう。
生乳の需要は安定的にあるため、きちんとした仕事をすれば、収入を得られる仕事です。
酪農の仕事の厳しさ
酪農の仕事の厳しいところは、牛のリズムに合わせて生活をしなくてはならないところにあります。乳牛は毎日搾乳しないと病気になってしまうため、朝早くからの搾乳はもちろんですが、牛の病気や出産時には、深夜であっても立ち合いをしなければならないなど、生活時間が不規則になることもしばしばです。就業を考えるにあたっては、牧場の多くは都市部から離れた場所にあることや、仕事と生活が近いライフスタイルを送ることについて、よく理解をしておく必要があるでしょう。このような厳しさはありますが、現在はシフト制で仕事を行う法人や、酪農従事者が休暇が取れるように手伝いに来てくれる酪農ヘルパーが増えてきています。