施設野菜の仕事|最適な環境で育てた高品質な野菜を提供

施設野菜栽培の仕事についてご紹介。トマトやキュウリなど、ビニールハウスや温室などで野菜を育てる仕事です。気になる所得や栽培のスケジュール、やりがいから設置コストなどの課題まで詳しくお伝えします!


ハウス内でのトマト栽培

出典:写真AC
1年中スーパーに並ぶトマト、キュウリ、ホウレンソウ。野菜には旬があると知りながら、これらの野菜をいつでも食べられることに今や疑問を持つことはないのではないでしょうか。ここでは、私たちの食生活に欠かせない施設野菜を生産する仕事についてご紹介します。

施設野菜とは

ビニールハウス
出典:PIXTA
施設野菜とは、ビニールハウスや温室などの施設で栽培された野菜を意味します。人工的な加温設備を備えるものと、備えないものがあります。施設内は屋内になるため、野菜を育てる環境は人間が管理することになります。


施設野菜の歴史

温室天井
出典:写真AC
最初に人工的に保温して野菜を栽培したのは、ローマ時代といわれています。ローマ時代には石穴や室(むろ)を利用して保温しましたが、本格的な温室としては、1619年にドイツのハイデルベルクに建てられたものが最初で、その後1694年にはイギリスの薬用植物園でガラスを使った温室が建設されました。

日本では、1870年に東京にガラスを用いた温室が建てられたのが最初といわれています。当初は花き類の栽培への利用が多く、現在のような大規模な野菜栽培が行われるようになったのは、1955年ごろから盛んとなった大型ビニールハウスが始まりで、大型ガラス温室に移行したのは1965年前後からです。

現在では、施設内の光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分などを高度に制御したうえで、生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な植物工場と呼ばれる施設も登場しています。

施設野菜の経営体数や気になる所得は?

農業施設
出典:写真AC
施設野菜の栽培を行っている全国の経営体数は11万戸(平成27年)、作付面積は32,600haで、露地野菜と比べると経営体数は約3分の1、作付面積は約7分の1になっています。
参考:農林業センサス「販売目的の作物の類別作付(栽培)経営体数と作付(栽培)面積」

また、施設野菜作経営の(全国平均)の1経営体当たりの農業粗利益は1,250万円となっています(平成29年)。これは、露地野菜の602万円に比べ倍以上となっています。また、施設野菜作経営のうち、作付延べ面積規模1万平方メートル以上階層をみると、農業粗収益は3,327万円となっています。
参考:農業経営統計調査平成29年個別経営の営農類型別経営統計


施設野菜で栽培されている品目|トマト、イチゴ、キュウリなど

トマトとキュウリ
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施設野菜で栽培されている野菜は多様ですが、代表的なものにトマト、イチゴ、キュウリ、ホウレンソウなどがあり、品目によっては、生産量に占めるシェアが非常に高くなっています。例えばトマトは生産量の76%が施設で栽培されています。露地栽培のトマトが11月頃に出荷を終えると、次に露地栽培のトマトが出荷される初夏頃までの間、加温のハウスで栽培されたトマトが出荷されて、消費者の食卓を支えています。

施設野菜の栽培スケジュール|トマトの場合

暦
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施設野菜栽培はどのように行われているのでしょう?ここでは、例として、施設栽培のトマトの栽培スケジュールを見てみましょう。
時期 仕事 内容
8月 種まき・育苗 育苗箱に土を入れて等間隔でに種をまきます。発芽適温は25~28℃。育苗初期は⼟壌⽔分をやや多めにし、その後は次第に減らしていきます。
9月 接ぎ木 接ぎ⽊の前⽇に充分に潅⽔し、本葉4、5枚時に1枚⽬と2枚⽬の間で切除して、穂⽊を台⽊品種と接ぎ⽊します。
10月 定植 播種後50~55⽇程度で第1花房の第1花が開花し始めた苗を定植します。
ハウスの構造等に応じた適切な裁植密度で裁植することで、⼗分な⽇照を確保します。
10~12月 管理 ⽣育温度の管理が重要。温度管理が不十分だと農作物の⽣育に影響を及ぼしたり、燃料消費量の増加につながったりしてしまいます。
誘引・葉かき・芽かき・摘⼼・摘果・摘葉等を随時、適切に⾏います。
野外からの昆虫がいないハウス内ではマルハナバチによる受粉が広く行われています。
12~6月 収穫 収穫をします。

施設野菜栽培のメリット|気候に影響されないで高品質な野菜を作れる

苗への水やり
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施設野菜栽培では、環境を人為的にコントロールできるため、1年を通して季節を選ばず作物を栽培して収穫することができます。そのため、作物が市場に少ない時期でも収穫できるため、より高値で出荷することが可能になるほか、時期以外にも、与える水分や養分を調節することができるため糖度の調整が可能になり、品質の高い野菜を生産することも可能です。また、外と隔離できるので、天候や害虫による被害を避けやすいことも特徴です。

施設野菜栽培の課題|設置コスト、エネルギーコスト、災害への警戒

ビニールハウス
出典:PIXTA
施設野菜栽培に必要な農業用ハウスの設置コストは、資材や人件費の上昇を背景に近年大幅に値上がりしています。施設野菜栽培は農業経営費のうち施設費の割合が高く、設置コストを下げることが所得の上昇につながります。そのため、自分の目的に合ったハウスの強度や仕様を適切に選び、必要以上に施設費をかけないことを考える必要があります。農林水産省では、農業競争力を強化するため、農業用温室の設置コストを低減させる取り組みを行っています。
参考:農林水産省「農業用温室の設置コスト低減に向けた取組について」

施設の設置後は、施設内の環境を整えるために光熱動力費が必要です。主なエネルギーである燃油は価格が乱高下しやすいので、コストの見通しを立てることが難しい面があります。また、特にビニールハウスは雪や台風などの被害に遭うと復旧まで時間もコストもかかるため、警戒する必要があります。

最新の農業スタイルになる可能性も

自動走行の収穫コンテナ
撮影:AGRI PICK編集部
最近では、野菜価格の高騰や安全志向の高まり、LEDによるコストの低減などの条件が重なり、ICTを活用した野菜工場に注目が集まっています。今後、AIやロボットなど、より進んだ技術の導入も予想され、農作業の自動化やノウハウのデータ化、データ分析などが可能になるとみられています。今、施設野菜栽培にチャレンジすれば、農業の進化の現場に立ち会うことになるかもしれません。

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神山 朋香
神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報や農業体験の記事などを執筆しています。