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栃木県農業大学校いちご学科第1期生インタビュー|「サラリーマンよりも経営者、いちご王国・栃木で就農を目指す」秋元新さん


2021年4月に創設された栃木県農業大学校いちご学科。いちご専門の農業経営者を育てる日本初の学科の1期生が来春に卒業を迎え、いちご農家としてデビューします。大学4年生時に企業の内定を断り、就農というまったく異なる道を志した秋元新(あきもとしん)さんに、いちご学科へ入学を決意した背景や実際の学校生活について伺いました。

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Bansho

道産子と九州男児のハーフ。関西弁、大分弁、金沢弁を話すトライリンガル。 アーティスト山村幸則氏の作品制作に携わったことをきっかけに、働き方や住む場所に捉われない生き方を模索するようになる。 コミュニケーションアートを通してまちづくりに関わるなか、「人の集まる場所には食がある」ことに気がつき、以来、食を媒介した街・人・アートの仲立ちプロジェクトを幅広く展開。 役者として舞台に立ちながら開始した劇場ケータリング”劇場メシ”では、演者やスタッフを食で支える裏方の裏方として活動。生産現場にも足を運び、土を耕し自ら収穫して料理をつくる体育会系ライター。 動画作成チーム”ButterToast”ではシナリオも担当。…続きを読む

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秋本さん画像

写真提供:栃木県農業大学校
就農を目指す人や農業従事者が経営発展のため専門的な技術や知識を身につける栃木県農業大学校。作物や畜産などを学ぶ農業生産学部、社会人対象の就農や経営スキル向上が目的の研修科、そして2021年に新設された農業経営学部「いちご学科」に分かれています。今回はいちご学科2年生の秋元新さんに、学校生活や今後のビジョンについてインタビューしました。

「ITを学ぶ大学生」からいちご農家を目指した背景

大学での収穫
写真提供:栃木県農業大学校

自分に合った働き方を考えて就農を決意

東京でIT情報関連の大学に通い、セキュリティを専門とする研究室に所属していたという秋元さん。実はソフトウェア開発の企業から内定ももらっていたと言います。
秋元新さん
秋元新さん
卒業を間近にして、ふとこれから就職することを考えたとき、組織に入って仕事をするよりも事業主として個人の裁量でできる仕事の方が、自分に合っていると思い直しました。

もともと祖父が米農家で、実家のある栃木の田畑をいずれは相続しなければいけないことも背景にあり、大学4年生の11月には東京の大学を辞め、栃木県農業大学校いちご学科への受験を決めたそうです。
秋元新さん
秋元新さん
家族からも自分の性格や適性は農業に合っていると言われ、背中を押してもらったかたちです。

就農するなら栃木県の特産品で

いちご学科が新設されることを知る前から、栃木で就農するならいちご農家になろうと決めていた秋元さん。栃木はいちごの生産量が日本一多い県で、魅力と可能性を感じていたと言います。
秋元新さん
秋元新さん
いちご以外にメロンなども候補でしたが、迷っているころに栃木県農業大学校でいちご学科新設の話を聞きました。栃木と言えばいちごのイメージなのでいちごづくりに対するサポートが手厚いのではないかと思い、最終的にいちごに決めました。

独学での就農も考え、いちごづくりに関する本も読みましたが、専門用語が多く難しかったそうです。ほかの農家さんに弟子入りすることも考えましたが、いちご農家に知り合いもおらず、弟子入りする方法もわからなかったと言います。

秋元新さん
秋元新さん
ちょうど学科ができるタイミングなら学校で学ぼうと思ったんです。いちご学科の募集について知ったときにはオープンキャンパスも終了していたため、独自に学校訪問に行き、カリキュラムなど学校生活について聞きました。


教科の幅広さだけなくさまざまな年代の仲間ができる

栃木県農業大学校いちご科集合写真
写真提供:栃木県農業大学校

わかりやすい講義

いちご学科は農業に関する知識や経験がない人を視野に入れたカリキュラム構成になっています。また、学生の習熟状況を見ながら授業内容の進度を調整します。
秋元新さん
秋元新さん
独学の際に感じていた知識や技術のハードルの高さは、学校に入ってからは感じなくなりました。学んでいくと、「いちごで経営者になれる」と思うようになりました。独学で農業を学ぶことに挫折した人は、ぜひいちご学科に来てみてください。

卒業後すぐに独り立ちできるカリキュラム

1年次は農業の基礎知識や情報処理などの座学と並行して実技を行います。夏休み・冬休みの後にはそれぞれ2週間程度の実地研修もあり、1年次から実践が多いカリキュラムになっています。
2年次になると1週間のうち月・水・金は実地研修と実践の割合が増え、さらに就農に関する手続きの書類作成など、卒業後すぐ就農するための具体的な準備もカリキュラムの一環として盛り込まれています。
秋元新さん
秋元新さん
入学する前、農作物を育てるので、土日や年末年始も収穫があって休みが少ないということを聞いていたのですが、休日は当番制になっていて、想像していたものとは違いました。学校での収穫もそうですが、研修先の農家さんのところも睡眠時間を削って作業するようなハードさはなく、思っていたよりも余裕があるとは感じています。ただ、卒業後に独り立ちしたときには、作業に追われてしまうかもしれません。

トラクターの運転など多彩な授業

トラクター運転中
写真提供:栃木県農業大学校
経営面も含め、いちご農家の経営に必要なすべてのことを自分一人でできるようになる授業を受けられるのが栃木県農業大学校のいちご学科。カリキュラムの内容は多岐に渡ります。その中でも特にいちごの株の管理とトラクター作業が印象的だったそうです。
秋元新さん
秋元新さん
一番楽しかった授業がいちごの株の管理。葉っぱを掻(か)いて減らす作業など、いちごを整える作業は比較的楽しいと思いました。逆に苦手だったのが大型特殊免許取得の授業と、トラクターでの作業です。今では実家の畑を自分でトラクター作業するほどですが、1年次は車に乗り慣れていないこともあり免許取得の授業が苦手でした。

同期は全員が仲間。信頼し合える関係性

いちご農家を目指して入学した同期は、10~40代まで年代もさまざま。年齢構成が幅広くいろいろな価値観の人と出会えるのもいちご学科の魅力のひとつです。
また、先生方は就農に向けて熱心に指導してくれます。相談にも親身になって乗ってくれる、気軽に質問しやすい先生ばかりです。
秋元新さん
秋元新さん
お昼や学校帰りには同期と一緒に食事に行くなど、歳は違っても同じ道を志すメンバーなので、仲は深まります。自分はちょうど真ん中くらいの年齢ですが、正直なところ40代の同期のほうが体力があって、すごいなと感心することも。話題は農業のことメインになりがちですが、それ以外に趣味の話もできて、ちょうどいい距離感の関係性が築けていると思います。
学科の定員が10名と少ないからこそ同期と仲よくなれるし、気を遣わなくてもすむところは、自分に合っていると感じている秋元さん。
秋元新さん
秋元新さん
学科の人数が多いと、自分ひとりくらいは大丈夫だろうとサボる気持ちも出てきてしまいますが、人数が少ないからこそ一人ひとりが責任感を持ちやすい環境です。



独り立ちを見据え、実践的な技術と経営が学べる

収穫実習
写真提供:栃木県農業大学校
2年次に行う実地研修での受け入れ先は、学生の就農予定地や就農イメージを踏まえ栃木県農業大学校と地域の関係機関・団体が連携して、選定します。実地研修では、夏の暑い時期は涼しい時間の6〜10時まで作業して、その後15時からまた作業もあるなど、「研修先で農家さんと一緒に行う畑作業は大変だ」と秋元さん。忙しいだけでなく就農後の働き方により近く、実践的な内容が学べていると言います。
秋元新さん
秋元新さん
研修先では、恐らく一人で4,000本以上は定植していると思います。段階を踏みながら、こうした方がいいよと教えてくださるので、徐々にスピードも上がってきています。最終的には1万5,000本くらい定植するので、一緒に働いているパートの方々からは効率的な定植の方法や腰を痛めないやり方などを実践の中で学んでいます。
大人数ではなく一人で作業をする時の具体的なアドバイスに加え、いろいろなパターンの定植方法や一人でもできるハウスの張り替え方といったことまで多岐に渡って学ばせてもらえる、とても勉強になる研修だと秋元さんは言います。研修の日はさすがに疲れが出ますが、独立後を考えると、今から実践に近いかたちで体験できていることは非常に有難いと感じているそうです。
秋元新さん
秋元新さん
就農時は自分と家族だけでいちごづくりをする予定です。パートの方がたくさんいる研修先だと、大勢で定植する実践方法になってしまうため、少人数でのやり方を教えていただけることは、将来必要な作業に直接つながる内容だと思っています。

いちご新品種「とちあいか」で就農予定

就農準備演習
写真提供:栃木県農業大学校

就農準備は栃木県農業大学校と関係機関・団体がしっかりサポート

秋元さんは現在、どういう農業を展開したいのか、どのように経営をしていくかなどを含め、この先5年間の見通しや雇用人数などを具体的に練り上げているそうです。さまざまな疑問や悩みが絶えませんが、栃木県農業大学校だけでなく、地域の関係機関・団体が一体となったサポートにより、着実に準備が進んでいます。
秋元新さん
秋元新さん
2018年に栃木県が育成したいちご新品種「とちあいか」をつくろうと考えています。パック詰めのしやすさなどもありますが、最新の県オリジナルの品種なので今後つくる農家も増え、市場も大きくなるのではないかと期待しています。

農業は夢のある業界

入学前は、いちごは種から育てるのか苗から育てるのかも知らなかったと言う秋元さん。2年目の今はもう、いつでも就農できる状態までに成長を遂げています。
秋元新さん
秋元新さん
いちごづくりは簡単ではないと思いますし、ハウス建設の初期投資など元手が多くかかります。また就農する場合には軽トラなども必要になるので、自己資金があるに越したことはありません。とは言え、農業はまだこれから大きく伸びる夢のある業界だと考えています。いちごは栃木で就農するからこそ育てていきたい、魅力的な作物だと思っています。


就農後、まずはJAへ100%出荷できるように頑張って、将来的には面積を増やしていき法人化したい、という目標を語ってくれました。秋元さんのつくったいちごが流通する日が楽しみです。

 

栃木県農業大学校いちご学科
概要:日本初のいちご学科。「いちご王国・栃木」の将来をけん引する優れた経営者を育成。技術力、経営力、実践力等を養う徹底した実践教育を行い、次代の産地や農村社会のリーダーとなりうる人材を輩出する
対象:高等学校を卒業した者、令和5(2023)年3月に高等学校卒業見込みの者等(定員:10名)
在学期間 : 2年間
WEBサイト:栃木県農業大学校いちご学科公式ホームページ
個別相談:事前予約の上、随時受け付けます。(オンライン相談可)

栃木県農業大学校いちご学科 お問い合わせ

いちご学科オープンキャンパス情報
詳細はこちら
実施日:
【第1回】令和5年5月7日(日)9:30~12:00
【第2回】令和5年10月15日(日)9:30~12:00
【第3回】令和6年1月28日(日)9:30~12:00
※上記以外に農業生産学部との2学部合同オープンキャンパスも開催予定
【第1回】令和5年6月25日(日)13:30~15:00
【第2回】令和5年7月30日(日)13:30~15:00
対象者:高等学校を卒業した者(年齢を問わない)もしくは高等学校在学者(学年を問わない)及び保護者など
内容:いちご学科紹介、いちご栽培実習農場見学、いちご専門実習体験、入学案内など
※希望者には解散後、個別相談を実施します
申込方法:下記の「オープンキャンパスお申し込み」フォームから、栃木県農業大学校学生課宛てに申し込み。各回実施日の1カ月前から受付可
・オープンキャンパスリーフレットはこちらから
・オープンキャンパス開催要項はこちらから
※そのほか詳細は公式ホームページからご確認ください

オープンキャンパスお申し込み

いちご学科入試情報
【第2回】
実施日 :令和4年12月11日(日)
出願期間:令和4年10月17日(月)~11月21日(月)必着
合格発表:令和4年12月21日(水)
【第3回】
実施日 :令和5年2月16日(木)
出願期間:令和5年1月16日(月)~2月6日(月)必着
合格発表:令和5年2月27日(月)
【試験内容】
一般教養、小論文、面接
※第2回までで定員となった場合は、第3回は実施しないことがあります

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