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東京農業アカデミー第3期生インタビュー|「福祉施設や学校においしい野菜を届けたい」中村しのぶさん


東京農業の担い手を育てるために、東京都が設立した「東京農業アカデミー」第3期生にインタビュー。十数年介護職に就いていた経験をもつ中村しのぶさんは、「子どもでも障がいをもつ人でも同じようにおいしく食べられる野菜がつくりたい」という夢をもち、家族での就農を目指しています。
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中村しのぶさん

撮影:上溝 恭香
東京の農業の担い手を育成するため、2020年に誕生した東京農業アカデミー。第3期生として学ぶ中村しのぶさんに、就農を目指す理由、研修の印象、将来のビジョンなどを伺いました。

父親の大病で就農の決心を

中村しのぶさん
撮影:上溝 恭香

介護職から就農の道へ

中村しのぶさんは、社会人になってから両親の仕事を手伝ったのちに、十数年介護職に従事していました。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
高齢者のデイサービスと、かけもちで子どもから大人まで重度障がいのある方への訪問介護をしていました。

子どものころから農業は身近に

中村さんの祖父は農家を営んでいて、クリをJAに卸していました。そのため、子どものころから農業は身近なものでした。また、父親が家庭菜園を趣味でやっていて、ずっとそれを手伝っていたため農作業自体もなじみのあるものでした。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
ただ、農作業はやっていたけれど、まさか自分が就農を志すようになるとはその時点では思ってもいませんでした。

父親の大病がきっかけに

5年ほど前、中村さんの父親が大病を患い、一時は助からないと医者からさじを投げられるような状態にまで陥っていました。それが、奇跡的に回復したのです。中村さん一家は、このことをきっかけに地方に移住して、家族みんなで農業ができないかを考え始めたといいます。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
実際に、福井まで行って移住しての就農を検討しました。
就農は家族みんなの夢だったんです。農作業をしていると幸福度も高くなりますしね。

東京に落ち着いたのは

役所関係の人と話したり、空き家バンクに行ってみたり、現地の学校を訪問したりしたのですが、なかなか決心するまでに至りませんでした。そんな中、東京に戻り悩んでいたところ、東京農業アカデミーを見つけたのです。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
自宅がここから車で5分くらいなんです。こんな近いところに農業の学校があるなんて知りませんでした。東京農業アカデミーをネットで見つけたときに、ここしかないと思い、応募しました。

研修で学んだことを家族に共有

中村しのぶさん
撮影:上溝 恭香

家族とともに学びを深める

父親はその後、周りが驚くほど元気になり、家庭菜園も再開しました。中村さんは研修で学んだ内容を家族にも伝えて、自宅の菜園で家族と一緒に再現しています。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
家の庭でも野菜を育てています。父もいろいろ勉強になると喜んでいます。

ほ場での作業が楽しい!

研修が始まる前は、学校だから座学が多いのかと思っていたという中村さん。でも、実際にはほ場での作業のほうが圧倒的に多いといいます。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
最初は身体づくりが大変でしたが、やっぱり現場作業のほうが楽しいですね。身体で覚えることの大切さも痛感しています。

無駄な研修はひとつもない

研修の一環で、トマトとトウモロコシの畑に大きな防鳥ネットを、職員を含めて12~13人で作り上げました。3mの鉄管パイプを運んだり、ハンマーで打ち付けたり、一人の力ではできないことでも力を合わせれば自分たちの手でできるんだ、ということが印象に強く残りました。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
ここでは一流の機械を使わせてくれるのですが、就農後同じものはすぐに買えないかもしれません。でも、指導員は、それをいかに安く手づくりできるのかということも教えてくれます。

就農後の不安は研修の中で解決

中村しのぶさん
撮影:上溝 恭香

同期に女性が一人ということ

5人の同期で女性は一人だけということを入校式の日に知り、うまくやっていけるのかという不安もあったそう。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
毎日一緒に作業するようになって不安は吹き飛びました。みんな個性豊かでとにかく楽しいです。笑いがない日はありません。もう何年も一緒にやってきた仲間のように感じます。

女性ならではの悩み

身体を使うことの多い介護職についていたため、体力には自信があったという中村さん。それでも、20~30kgもあるタマネギを運ぶときなどは相当きついと話します。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
就農後はタマネギをメインに考えているので、高齢の両親とやっていくことができるのだろうかと悩むこともあります。
でも、アシストスーツで解決したらどうだろうかなどと、研修中にいろいろなシミュレーションしています。

不安なことは指導員にすぐ相談

指導員は中村さんと同年代の人が多く、いつも楽しい現場づくりをしてくれています。ただ、やはり楽しいばかりではなく、就農後にうまくやっていけるんだろうかと不安になることもあります。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
不安なことや、疑問に思ったことは、指導員にすぐぶつけるようにしています。その場でていねいに手取り足取り教えてくれるので、不安が解消されます。

先輩たちとの交流で学ぶ

先輩たちからは、アルバイトを紹介してもらったり、来年やるべきことを教えてもらったりしています。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
農地が決まっている先輩はその農地の手入れもありますし、毎日忙しそうです。
パソコンとにらめっこしながら経営の計画を立てている先輩たちが、画面を見ながら「こういうのも覚えておくといいよ」といった具体的なアドバイスをしてくれます。

介護の経験も就農像につながる

中村しのぶさん
撮影:上溝 恭香
就農後の販売ルートはまだ定まっていませんが、できるだけ早い段階で決めたいと思っている中村さん。
中村しのぶさん
中村しのぶさん
ずっと福祉関係の仕事をしてきたので、例えばとろみを付けないと食べられない嚥下(えんげ)障がいをもつ人なども含めて、どんな人にもおいしく食べてもらえる野菜をつくるのが夢です。高齢者施設にも学校給食にも提供したいと思っています。

将来的には、バリアフリー施設での農園レストランや、障がい児が農業を体験できる場所を提供することもできたら、と語ります。父親の病気がきっかけでの転身でしたが、今までの経験は全てつながっています。「人にやさしい農家」を目指して、夢は広がります。

東京農業アカデミー八王子研修農場
概要:就農希望者を都市農業の担い手として育成することを目的として東京都が開設した研修農場
対象:18歳以上で都内で就農を目指す人(毎年5名程度を受入れ)
研修農場 : 八王子市大谷町(約20,000m2
研修期間 : 2年間(年間約220日)
問い合わせ:東京農業アカデミー八王子研修農場 042-649-3444、東京都産業労働局農林水産部農業振興課 03-5320-6221(直通)

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この記事の筆者:
小林 由弥

フリーの編集・ライター。 カントリースタイルの暮らしを楽しむ、という主旨のムックで主にガーデニングやDIYの記事を担当していました。 現在は集合住宅住まいで土のない生活を送っているため、花や紅葉を追っての小旅行が楽しみです。

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