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出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、コロナ禍をきっかけに観葉植物の魅力にハマる。現在はフローリスト&グリーンコーディネーターとして勤務する傍らWebライターとしても活動中。家の中をジャングルにするのが夢です。…続きを読む
出典:写真AC
多肉植物の中でも特に女性からの圧倒的な支持を誇るエケベリア。バラの花のように放射状に葉を展開する姿が美しく、いろいろな園芸種をコレクションしたり寄せ植えにしたりして楽しまれています。この記事では、栽培歴40年のベテラン園芸家監修のもと、エケベリアの基本的な育て方と人気種の特徴をご紹介します!
エケベリアの特徴
エケベリアはロゼット多肉の代表格で、女性の多肉植物ブームを盛り上げた立役者ともいえる存在です。栽培が容易なので初心者でも育てやすく、多肉植物の入門的な位置付けにあります。バラの花のような整った株姿が美しく、色や葉姿はさまざまです。よく日に当てて育てると秋から春の初めごろまで紅葉し、夏場とは違うカラフルな姿を見せてくれます。サイズは直径5cm程度から大きいものだと直径30cmにもなり、種類によっては古くなると茎が立ち上がった姿になります。多くの種は強健で、鉢植えのコレクションのほかに寄せ植えやガーデニングの植え込み用としても普及しています。
エケベリアは180種以上の原種に加え、交雑のしやすさから数えきれないほどの園芸種が流通しており、見た目では区別できない種も少なくありません。近年は韓国苗が多く輸入されているほか、日本国内でも育種がさかんに行われています。種間交雑種だけでなくセダムやグラプトペタルム、パキフィツムなど異属間の交雑種も多く作出されていて、それぞれセデベリア、グラプトベリア、パキベリアとして知られています。
エケベリアの自生地
メキシコを中心にアメリカ南部からボリビアなど南米北部まで広く分布し、比較的温暖で乾燥した岩場などに自生しています。
エケベリアの花
エケベリアの花は赤やオレンジ、ピンクなど色鮮やかですが、大きさは直径1cmに満たないものがほとんどです。基本的には花を鑑賞するよりも葉のロゼットを花の代替物のように楽しむところがあります。
エケベリアの入手方法・価格
エケベリアは比較的入手がしやすい多肉植物で、ホームセンターや園芸店はもちろん、100円ショップや雑貨店などでも売られています。値段も1株数百円と手頃なので、いろいろな株をコレクションして楽しむのもよいでしょう。
エケベリアの基本情報
分類 | ベンケイソウ科エケベリア属 |
原産地 | メキシコを中心に北米南部から南米北部にかけて |
生育型
春秋型
耐暑性
普通
耐寒性
普通
生長速度
早い
エケベリアの人気種
ここからはエケベリア属の基本種を紹介していきます。それぞれの栽培難易度は、星の数(☆~☆☆☆☆☆)で表示していますので、育てる際の参考にしてください。星の数が少ないほど栽培難易度が低くなります。
アガボイデス(Echeveria agavoides)
古くから育てられているエケベリアの原種です。形が良く型崩れもしにくいため、多くの交配種の親に使われています。「東雲」という日本名があります。
エボニー(Echeveria agavoides ‘Evony’)
出典:PIXTA
三角の鋭い葉が魅力のエボニー。アガボイデスの選抜種で、肉厚の葉に独特の艶があります。葉先から縁にかけて赤黒く染まり、さわやかな緑色との対比がとてもきれいです。
ロメオ(Echeveria agavoides ‘Romeo’)
アガボイデスの変種・コーデュロイから生まれた突然変異種。一年を通してピンク色に色づきます。よく日に当てることがきれいに発色させるコツ。「レッドエボニー」という流通名で出回っていることもあります。
桃太郎(Echeveria ‘Beatrice’)
出典:PIXTA
リンゼアナとチワワエンシスの交配種。黄緑の葉に赤い爪が鮮やかに映えます。「マリア」に似ていますが、爪の入り方がより強めです。生長は遅めですが直径15cmくらいまで大きくなります。
ブルーバード(Echeveria ‘Blue Bird’)
基本種のカンテとピーコッキーの交配種。白い粉をまとった葉はうっすらと青緑色が透けて見えます。締まった株姿が持ち味です。
カンテ(Echeveria cante)
写真提供:Shabomaniac!
直径30cmくらいまで生長することからエケベリアの女王と呼ばれる大型種です。葉は広くて薄く、あまり多肉質ではありません。葉の表面に純白の粉をまとい、肌は淡い緑で葉縁はうっすらと赤く、秋から冬にかけて十分日に当てると全体が赤みを帯びます。女性だけでなくコーデックスなど武骨な多肉植物を好む男性にも人気です。エケベリアの中では珍しく葉挿しができないため、栽培難易度は高め。見頃が過ぎたら種を採って更新しましょう。
チワワエンシス(Echeveria chihuahuaensis)
形の良いロゼットを形成する中型種。黄緑色の葉に白いパウダーをまとい、葉先が赤やピンクに染まります。
メキシカンジャイアント(Echeveria colorata ‘Mexican Giant’)
エケベリアの代表的な中型種・コロラータを親にもつ大型種。真っ白い肌と肉厚な質感が特徴で、最大で直径50cmまで大きくなります。蒸し暑さに弱いので夏は涼しい場所で風通しよく管理しましょう。
エレガンス/月影(Echeveria elegans)
出典:Flickr(Photo by stephen boisvert)
青みがかった葉色の小型種。多くの園芸種の親として利用されています。冬になってもほとんど紅葉しないのも特徴です。
七福神(Echeveria ‘Glauca’)
出典:PIXTA
整ったロゼットとやや丸みを帯びた葉が美しい中型種です。寒くなると葉の先端と縁がピンクっぽく紅葉します。
マリア(Echeveria ‘Malia’)
ふっくらした黄緑色の葉の先端が赤く染まります。アガボイデスの変種「マリア」とは別ものです。
ラウイ(Echeveria laui)
ホワイトブルーの丸い葉が特徴の基本種。直径は生長してもせいぜい20cmくらいで、あまり大きくならないエケベリアです。白いパウダーをまとうエケベリアはたくさんありますがその中でも別格の白さを誇り、原種の最高峰ともいえる美しさで珍奇植物の愛好家にも好まれています。過湿には弱いものの比較的耐暑性があります。葉挿しをしても根が出にくく、実生で増やすのが一般的で、繁殖が難しいことから値段も高めです。
ラウリンゼ(Echeveria ‘Laulindsa’)
ラウイとリンゼアナの交配種。肌が白く強健で、ラウイの血を引いているため直径20cm以上まで大きくなります。
リラシナ(Echeveria lilacina)
直径20cmほどまで生長する中型種。ピンクグレーの美しい葉色が魅力で、「リラキナ」や「ライラシナ」などとも呼ばれます。
ローラ(Echeveria ‘Lola’)
ティッピーとリラシナの交配種。白い粉をまとった淡いグリーンの葉と均整の取れたロゼットが美しく、直径10cmほどにしかならない小型種です。
ピーコッキー(Echeveria peacockii)
出典:PIXTA
いろいろな園芸種の親になっている基本種です。幅の広い青磁色の葉を持ち、寒くなってもあまり色づきません。
サブセシリス(Echeveria peacockii ‘Subsessilis’)
ピーコッキーの変種。ブルーグレーの葉の縁がほんのりとピンクに染まります。時間が経ってもあまり大きくならない小型種です。
フロスティ(Echeveria pulvinata ‘Frosty’)
濃い緑の葉の表面にビロードのような白い生毛を密生させるフロスティ。生長が早く丈夫で、枯れた下葉はどんどん落ちていくので茎立った姿になります。茎の立った姿が好みでなければ胴切りして仕立て直しましょう。
パープソルム(Echeveria purpusorum)
戦前から栽培されてきた歴史ある種で、葉がぷっくりと厚く、先端が鋭くとがっているのが特徴です。葉身には赤い斑点模様が入り、縁も赤く染まります。貫禄があってどこか和の趣が感じられ、「大和錦」という日本名でも流通しています。
シャビアナ(Echeveria shaviana)
フリルのように波打つ葉とスモーキーな淡いピンク色の肌が魅力。エケベリアの中でも高温多湿が苦手なため、夏は涼しい場所で管理してあげましょう。
エケベリアの育て方
出典:写真AC
エケベリアの生長期は主に春と秋です。生えている地域によっては冬型に近い動きをするものもありますが、多くは冬に休眠します。また、比較的に丈夫とはいえ0℃以下の低温と35℃以上の高温多湿な環境は苦手です。夏は水やりを控えめにして風通しよく過ごさせ、冬は室内に取り込むなどして最低でも5℃以上をキープしましょう。
水やり
春と秋は土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいまでたっぷりと水やりします。冬は根が凍らないよう気温が高い晴れの日の日中を狙ってごく少量のみ水やりしましょう。夏は土がぬれたまま高温にさらされると鉢内が蒸れて根が腐ることがあるので、水やりは朝や夕方など気温の低い時間帯に行います。またロゼットの隙間に水が溜まっていると蒸れの原因になるので、鉢を傾けたりストローで吹いたりして水を落としましょう。
日当たり・置き場所
生長期には日当たりと風通しの良い屋外で管理しましょう。屋内ならよく日の入る窓辺がおすすめです。ただ、ガラス越しの光では日照が足りず徒長を招くほか、室内だとどうしても空気が滞留して風通しが悪くなりがちなので、できるだけ外に出して過ごさせてください。真夏は強い日差しに当てると葉焼けしてしまうので30%くらい遮光します。
用土・肥料
用土は水はけのよい土を使用します。生長速度が早く肥料もよく吸収するので、一定程度の肥料が必要です。培養土に元肥として肥料を混ぜておき、生長期にはハイポネックスなどの液体肥料を適量与えましょう。
エケベリアの植え替え・植え付け
出典:写真AC
生長が旺盛なのでできれば毎年、少なくとも2年に1回はひと回り大きな鉢に植え替えましょう。適期は休眠が明けて生育期に入る春の初めごろです。群生する傾向があるので、鉢が窮屈になっていれば一緒に株分けもするとよいでしょう。
エケベリアの剪定・仕立て直し
出典:写真AC
エケベリアは生長が早い分、見頃は短めです。大きくなるにつれてロゼットの形が崩れたり、茎が伸びてきたりするので、適宜挿し芽や葉挿し、胴切りで更新していきましょう。
エケベリアの殖やし方
出典:写真AC
エケベリアは株分け、挿し芽、胴切り、葉挿しのいずれの方法でも殖やせます。ただしカンテやラウイなど一部の種は葉挿しをしても根が出にくいため、試してみて根が出てこなければ他の方法にトライしてみてください。
エケベリアの病気・害虫
病害虫の心配はほとんどありませんが、まれにアブラムシやカイガラムシがつきます。これらの害虫は一般的に風通しが悪く乾燥した環境でつきやすいといわれますが、風通しのよい場所で毎日水やりしていても完全には防ぎ切れません。発見したら殺虫剤で駆除し、浸透移行性の農薬を用土に混ぜて予防しましょう。カイガラムシの成虫には農薬が効きにくいので、歯ブラシなどで取り除いてから農薬を散布してください。
エケベリアに関するQ&A
エケベリアを徒長させずに育てるコツは?
徒長の原因は基本的に日照不足です。生長期は外に出してたっぷりと日光を浴びさせてあげることが整ったきれいなロゼットを維持するコツです。
葉挿ししても根が出ずシワシワに
葉が途中でちぎれていると葉挿しは成功しません。親株から葉をもぐときは横にスライドさせるようにして、成長点となる付け根からもぎ取りましょう。
下葉がブヨブヨになって枯れてしまう
夏場の高温多湿や水のやり過ぎ、風通しの悪さなどが原因で土の中が蒸れ、根の腐りが地上部まで進行すると、葉がジュレ状に溶けてしまいます。また、葉が地面とくっついて風が通らずに蒸れてしまう場合もあります。根腐れを起こさないためには風通しのよい場所で管理し、過湿にならないよう注意して管理することが大切です。また、用土の表面に化粧砂を敷いておくと、水やり後にさっと乾いてくれるので蒸れ防止になります。
整ったロゼットと紅葉が美しいエケベリアを育ててみよう!
エケベリアは比較的に丈夫でそこそこ耐寒性もあり、栽培経験が少ない方でも育てやすい植物です。割と簡単に殖やせるので、栽培に慣れてきたらぜひ葉挿しや交雑にも挑戦してみてくださいね!