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多肉植物の育て方|土づくり・土選びの基本を栽培歴40年のベテラン園芸家が解説

多肉植物の栽培にどんな土を使用していますか?市販の培養土でももちろん問題なく育ちますが、慣れてきたら自分で土をブレンドしてみるのも一興です。そこで本記事では、多肉植物の栽培に適した土の条件や、土ごとの特徴、おすすめの配合比率などをご紹介します。


培養土

出典:写真AC
土は植物が生育する上で土台となるもの。最適な土の条件は植物によってさまざまですが、その植物の性質を理解してベストな配合で土づくりをすると、すくすくと育ち、枯れる心配も少なくなります。この記事では、多肉植物の土づくりの基本を園芸家のShabomaniac!さんに伺いました。

多肉植物の土づくりについて教えてくれたのは?

Shabomaniac!さん

Shabomaniac!
写真提供:Shabomaniac!
幼少期から40年以上、世界中のサボテンと多肉植物を栽培している園芸家。栽培が難しい種の播種や育成、新種の輸入にも早くから取り組む。実体験に基づく栽培方法や、自身が所有・栽培する植物の写真、自生地巡りの紀行をブログとInstagramで発信。長年の栽培経験に基づく豊富な知識で愛好家たちからの信頼も厚い。

Blog:http://shabomaniac.blog13.fc2.com
Instagram:https://www.instagram.com/shabomaniac/
著書:『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』(日本文芸社)『多肉植物サボテン語辞典』(主婦の友社)

多肉植物の栽培に適した土の条件

多肉植物の土
出典:PIXTA
多肉植物の土といえば「水はけのよい土」が常識ですが、多肉植物にとって理想的な土の条件はほかにもいくつかあります。押さえておきたいのは主に「通気性・排水性・保水性のバランスが取れていること」「pHが適切であること」「清潔であること」の3点です。

通気性・排水性・保水性のバランスが取れていること

通気性のいい土とは、空気の通り道が確保された土のことです。植物の根は地上部分と同様に呼吸しているので、粒がつぶれて隙間なく固まった粘土のような土では、空気が入らず根が窒息して枯れてしまいます。また、通気性のよい土は排水性(水はけ)のいい土でもあり、土の中に空気があればそこを水が通り抜けていけるため、鉢内に水が滞留することがありません。乾燥地帯に自生している多肉植物はいつまでも土が湿った状態でいるのを好まないため、この水はけのよさはとても重要です。

保水性とは、水分を一時的に蓄えておく性質を指します。排水性と真逆の性質のように思えるかもしれませんが、必要な水分を保持しつつ、余った水分だけを排出するということです。

多肉植物の栽培によく赤玉土や鹿沼土が使われるのは、これらの土が団粒構造を持っており、通気性・排水性・保水性のバランスに優れているからです。団粒とは土の微細粒子がだんご状に固まったもので、内部に一定の水分を蓄えつつ、団粒と団粒の間に生じる隙間によって空気と水の通り道も確保することができます。

pHが適切であること

多肉植物の栽培に強い酸性やアルカリ性の土は適しません。pHバランスの崩れた土は中性から弱酸性に調整する必要があります。中には石灰岩の多いアルカリ性の土壌に生えている植物もありますが、狭い鉢の中でpHを酸性やアルカリ性に調整しようとすると極端に傾きやすいので、基本的にほとんどの多肉植物が中性から弱酸性の土でOKです。

清潔であること

何度か使い回した古い土や、あまり質の良くない土を使うのは望ましくありません。異物や害虫、病原菌が混入している恐れがあり、植物の生長に悪影響を及ぼすことがあります。できるだけ新しく、高温で焼くなどの殺菌処理が施された清潔な土を使いましょう

水はけの悪い土や古い土を使用していると何が起きるのか

多肉植物の土
出典:PIXTA
通気性や排水性の悪い土を使用していると、鉢内が常に湿った状態になり、根腐れを起こしやすくなります。また、何年も植え替えをしていない土は団粒構造が崩れて密状態となるため、水分がなかなか浸透していきません。ほかにも土が硬過ぎて植物が根を伸ばせない、土中の化学バランスが酸性に傾き、肥料分が土壌にとどまらずに流れ出してしまうなど、植物が生長するうえでいろいろな不都合が生じます。

多肉植物の栽培に使う土の種類と役割

多肉植物の土
写真提供:Shabomaniac!
多肉植物に限らず鉢植え植物に使う土は大きくわけて「鉢底石」「培養土」「表土」という3つの土で構成され、それぞれ役割が異なります。

鉢底石

鉢底石
出典:写真AC
鉢底石とは、鉢底部分に空間を作って水切れをよくし、不要な微塵(みじん)の排出を助けるためのものです。通常、鉢の下の方にある土は徐々に押しつぶされて硬くなり、やがて鉢底穴を塞いで水の抜けを悪くさせることがあります。そこで鉢底に多孔質で排水性に優れる軽石や、潰れにくい大粒の赤玉土などを敷き詰めると、水が流れやすくなり、鉢内が過湿状態になるのを防ぐことができるのです。かつて「鉢底石」として売られている石の原料は軽石が中心でしたが、現在では黒曜石のパーライトもよく使われています。

培養土1. 基本の土

培養土とは、その植物の栽培に適するように複数の土を配合した土のことです。水分や養分を蓄えたり、根を張り巡らせて植物の体が倒れないように支えたり、植物が生きていくうえで欠かせない役割を果たします。培養土は普通、複数の材料を混ぜ合わせて使いますが、その材料には基本の土と、土の機能向上や養分の補給を目的とした改良用の土の2種類があります。

赤玉土

赤玉土
出典:PIXTA
関東ローム層の火山灰土を乾燥させた団粒構造の土。多孔質なため鉢内に空気が入りやすく、水はけに優れる一方、保水性や保肥性もあります。pHも中性から弱酸性と、多肉植物の栽培に適した土の条件のほとんどすべてを満たしている理想的な土です。一般的に小粒、中粒、大粒と団粒の大きさごとに分類して販売されています。質が悪いものだと時間とともに粒が潰れてしまうことがあるため、あまり植え替えができない場合は少し値段が高くても硬質の赤玉土を使った方が安心です。

鹿沼土

鹿沼土出典:PIXTA
栃木県鹿沼市の周辺地層にあり、赤玉土よりも軽量な黄色い土。保水性と通気性に富んでいますが、やや酸性寄りなので赤玉土と混ぜて使われることがほとんどです。

軽石(日向土)

日向土
出典:PIXTA
火山の砂礫(されき)。非常に軽くて多孔質なので通気性と排水性に優れる反面、保水性には劣ります。赤玉土や鹿沼土に混ぜて使うのが一般的です。大粒のものは鉢底石として使われます。日向土は軽石の一種で、主に山野草やラン、盆栽などに使われますが、通気性と保水性に優れているため多肉植物の培養土に混ぜて使う人も多いようです。

川砂

川底で採取された砂。細かい石の粒が集まってできており、排水性に優れ、根腐れ防止に役立ちます。一方で保水性は非常に低く、水を与えてもすぐに浸透して排出されるため、頻繁な水やりが必要となります。また、保肥力に乏しいのも弱点です。
Shabomaniac!さん
Shabomaniac!さん
沙漠に生える植物というイメージからなのか、昭和40年代ころまで多肉植物やサボテンといえば川砂での栽培が中心でした。中京地域に多肉植物やサボテンの専門農園が多いのは近隣の川で良質な川砂が採れたからだといわれています。実際のところ川砂は水はけが良過ぎるため水やりの管理が大変で、日本における多肉植物の栽培技術は赤玉土や鹿沼土の使用によって飛躍的に向上しました。

培養土2. 改良用の土

ピートモス

ピートモス
出典:PIXTA
水苔などが地中に堆積して泥炭化したもの。排水性、通気性、保水性、保肥性に優れますが、酸性度が高いためブルーベリーなど酸性の土壌を好む植物に使われます。多肉植物の栽培ではあまり使われないものの、メセン類など酸性の土に生えている一部の種に混ぜることもあります。粒が非常に細かく根が絡みやすいので種まきの表土としても優秀です。

くん炭

敷き詰めたもみ殻くん炭
出典:写真AC
もみ殻を低温でいぶして炭化させたもの。アルカリ性で、酸性に傾きがちな用土を中和する効果があります。多孔質なため、微生物のすみかとなって根の生長を助けるなど、環境改善にも役立ちます。

パーライト

黒曜石や真珠岩といったガラス質の火山岩を1,000℃の高温で熱し、高圧で焼成した多孔質の人工用土です。黒曜石を原料とするパーライトは通気性や排水性、保水性に優れ、水はけが悪い土の土壌改良や、鉢底石として使われます。一方の真珠岩を原料とするパーライトは、土の軽量化や水はけが良過ぎる場合の保水性改善に使用されます。

バーク堆肥

樹皮やおがくずなどを粉砕して堆積させ、発酵させたもの。土の排水性を高める効果があります。

腐葉土

腐葉土
出典:写真AC
クヌギやケヤキといった落葉広葉樹の落ち葉を堆積・発酵させたもの。土が固まるのを防ぎ、通気性や保水性、保肥性を高める効果がありますが、虫の混入が多いことから敬遠されがちです。

鶏ふん

 
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元肥として使用されることの多い有機肥料。動物性の堆肥の中でも牛ふんなどは肥料成分をほとんど含まないのに対し、鶏ふんは肥料成分が多くよく効くため大型に育つ種には特に有効です。鉢底に少量を加えての使用が一般的で、株が小さいうちは根が傷みやすいので使い方には慎重になる必要があります。最近はペレット状に加工して臭いを抑えたものが人気です。

バーミキュライト

バーミキュライト
出典:PIXTA
蛭石(ひるいし)と呼ばれる鉱物を1,000℃で焼いて膨張させた人工の土。軽くて吸水性と保水性、保肥性に優れ、無菌状態なことから種まきの用土としても使われます。

ゼオライト

 
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ゼオライトとは沸石類(ふっせきるい)と呼ばれる鉱物の総称で、火山灰が海や湖の底に堆積してできた天然のものと、土壌改良材として人工的に作られたものがあります。多孔質で通気性、吸水性、保水性、保肥性に優れ、老廃物を吸収して土を浄化する効果もあります。

表土(化粧砂)

化粧砂
写真提供:Shabomaniac!/自生地をイメージした花崗岩の砂を表土に使用
表土とは、鉢植え植物の見栄えをよくするために培養土の表面に敷く土のことです。この土の有無や選び方で、鉢植え植物の見え方や楽しみ方は大きく変わります。例えば川砂や花崗岩(かこうがん)が砕けた錆砂・山砂などは、自然な感じで鉢のなかに自生地の荒野を再現するような仕立てができます。一方で真っ黒な富士砂や白い寒水石などは、デザイン性の高い鉢をあわせてインテリア的に魅力ある植え付けになります。材料には園芸用だけでなく、熱帯魚の底砂や庭園用、工事用の砂を代用することも可能です。化粧砂にマッチする石や岩の破片などもレイアウトすると、鉢のなかに自生地さながらの風景が再現できます。化粧砂は植物の生育には直結しませんが、植物をしっかり支えたり、培養土が流れ出ないようにするとともに、植物体が地面と接する部分を清潔に保つことで地際からの腐敗を防ぐ役割もあります。この土の一工夫で多肉園芸の奥行きがぐっと広がりますよ。

市販の「多肉植物の土」とは?

土
出典:PIXTA
「多肉植物の土」とは、排水性や通気性といった物理的な性質と、pHや保肥性といった化学的な性質の両方が多肉植物にとって理想的となるように調整された培養土のことです。「観葉植物の土」や「花・野菜の土」などいろいろな種類の培養土が市販されていますが、それらに比べて多肉植物の土は水はけに優れているのが特徴です。市販の培養土ではうまく育たないという人もいますが、大半の多肉植物は丈夫で適応力が高いものです。自分で土づくりをする時間のない人や、園芸の初心者にとっては使いやすいでしょう。

多肉植物の土づくり|おすすめの配合

Shabomaniac!さんおすすめの多肉用配合
写真提供:Shabomaniac!
植物の培養土は複数の土を混ぜてつくるのが基本です。そうすることで各土の弱点が補われ、植物の栽培に最適な土をつくることができます。とはいえ、改良用の土だけでも10種類近くあり、何をどれくらいの割合で混ぜればいいのか悩んでしまう人もいるでしょう。そこで、ここではShabomaniac!さんおすすめの配合比をご紹介。土づくりに絶対的な正解はありませんが、園芸初心者の方は参考にしてみてください。

Shabomaniac!さんの基本配合

赤玉土鹿沼土軽石バーク堆肥くん炭
32110.5
Shabomaniac!さん
Shabomaniac!さん
このほかに元肥として、マグァンプKのような化成肥料を3号鉢にひと摘みくらいの分量で加えています。粒の大きさはいずれも5mm未満の小粒が中心で、ほとんどすべての多肉植物がこの配合です。

多肉植物の土づくりに関するQ&A

多肉植物の土
写真提供:Shabomaniac!

土から虫が湧くのを防ぐには?

Shabomaniac!さん
Shabomaniac!さん
堆肥を含んだ土は虫やその卵などが混じっていることも多く、気になる人は加熱殺菌済みの土を選ぶとよいでしょう。

古い土を再利用する方法はある?

Shabomaniac!さん
Shabomaniac!さん
私は比較的丈夫な植物の培養土に混ぜて使うことがあります。ただ、古い土は化学的なバランスが崩れてしまっている場合がほとんどです。老廃物が蓄積され、必要な養分が抜けてしまっているので、再利用はあまり望ましくはありません

多肉植物の土を自分でつくってみよう

多肉植物の土
写真提供:Shabomaniac!
市販の培養土を使えばたしかに大抵の多肉植物は問題なく育ちますが、自分で土をつくってみると、土ごとの特性や配合比率による育ち方の違いがわかって楽しいと思いますよ。もっとも植物が元気に育つためには光や水、温度といった環境条件も同じくらい大切なので、土づくりだけにこだわらないようにしましょう。「忙しくてまめに水やりできないから土の保水性を高くしよう」など、環境条件や栽培管理を土でカバーしようとするのもおすすめできません。土は植物にとって家のようなもの。のびのびと根を張り、必要な水や養分を蓄え、不要なものが出て行きやすいような住み心地のよい土づくりを意識してみてください。

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kiko

出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、現在はWebライターとして活動中。多肉植物・観葉植物の魅力にはまり、鉢が増えていく日々。

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