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ほうれんそうの甘さを引き出す冬収穫のタイミング


冬は、寒さに耐えようと糖をため込み、ほうれんそうがいちばん甘くなる季節。この記事では、甘みを引き出す冬収穫のタイミングと育て方のコツを紹介します。

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さつき

植木屋&ガーデニングライターです。1級造園施工管理技士・2級造園技能士の資格を活かし、植物と暮らしをつなぐガーデニングをお手伝いしています。「何を植えればいい?」「うまく育たない…」そんな悩みに寄り添いながら、植物がもっと元気に育つ小さな工夫やコツを丁寧にお伝えしています。「楽しそう!」「やってみたい!」と思える、実践しやすく役立つ記事を目指しています。…続きを読む

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ほうれんそうの甘さを引き出す冬収穫のタイミング

冬に甘くなるほうれんそうのひみつ

冬のほうれんそうが甘いのは、寒さの中で自分を守ろうとするから

気温が下がると、細胞が凍らないよう糖をため込む自己防衛反応です。

甘くなる3つの理由

  1. 寒さで糖を蓄え、コクのある味わいになる
  2. アミノ酸が増え、えぐみ成分(シュウ酸)が減って口あたりがまろやかになる
  3. ビタミンCや鉄分が増え、栄養価が高く色つやも濃くなる
 

寒さにゆっくりあたるほど、味・香り・色がそろった冬ならではの甘さになります。

甘く育てるための冬栽培スケジュール

甘く育てるための冬栽培スケジュール
冬のほうれんそうを甘く育てるには、寒暖差を上手に利用して育てるのがコツです。

種まきから収穫までの流れを、季節ごとのポイントに分けて紹介します。

発芽〜定着期(10〜11月)|根を張らせる準備期間

種まき時期と発芽管理

地域にもよりますが、種まきの目安は10月上旬から中旬ごろ。

発芽適温は15〜20℃で、昼夜の冷え込みが強い場合は不織布をかけて保温します。

間引きと株間調整

本葉が3〜4枚になったら、込み合った部分を間引いて株間を4〜5cmに整えましょう。

この時期にしっかり根を張らせておくことで、寒さに強く、甘みののった株に育ちます。

低温期(12〜2月)|寒さの中で甘みを仕込む期間

寒じめ栽培の効果

この時期は寒じめの本番です。

寒じめとは、寒さにあててゆっくり育てることで、糖分やうま味をため込ませる栽培法のこと。

寒気にさらされることで葉が厚く締まり、甘みとコクがぐっと深まります

トンネル栽培の日常管理

トンネル栽培では、日中に少し開けて冷気を取り込み、夜は閉じて保温を

晴れた日は過湿を防ぐために換気を忘れずに行いましょう。

葉が地面に広がって厚みが出てきたら、甘みがのり始めているサインです。

収穫期(1〜2月)|冬収穫で甘みがピークに

収穫の合図

霜に2〜3回あたるころになるとほうれんそうの糖度はぐっと上がり、甘さのピークを迎えます。

草丈が20〜25cmほどになり、葉が厚く締まってツヤが出てきたら収穫の合図です。

2月末までに収穫を

3月に入って気温が上がると、日長の影響でトウ立ち(花芽形成)が始まり、葉が硬くなって味が落ちてしまいます。

甘みを保つためには、2月末までに収穫を終えましょう

昼夜の寒暖差が大きいほど糖が濃縮され、より深みのある味わいになります。

甘みを最大限に引き出す3つのタイミング

甘みを最大限に引き出す3つのタイミング
冬のほうれんそうは、ちょっとしたタイミングで甘さが変わります。

ここでは、家庭でも実践できる「甘みを引き出す3つのコツ」を紹介します。

夕方に収穫して、光合成でたまった糖を逃さない

夕方は糖が蓄えられる時間帯

ほうれんそうは、日中に光合成をして糖をため込み、夜のあいだにその糖をエネルギーとして使います。

つまり、夕方は一日の中で最も糖が多く蓄えられている時間帯です。

日が傾きはじめたころに収穫

このタイミングで収穫すると、甘みがしっかり残った濃い味わいになります。

朝採りよりもえぐみが少なく、まろやかでコクのある風味に。

家庭菜園では、日が傾きはじめたころに収穫するのがおすすめです。

霜の後に収穫する|寒さで甘みがギュッと濃縮

軽い霜に当てると糖分が濃縮

ほうれんそうは、軽い霜に当てると細胞内の水分が減り、糖分が自然に濃縮されます。

寒さを受けるほど寒じめが進み、甘みと旨みがいっそう引き立つのです。

−5℃以下の強い霜は注意

ただし、−5℃以下の強い霜が続くと葉が傷むことがあるため注意が必要。

そんなときは不織布をかけて軽く保温し、過度な凍結を防ぎましょう。

適度な霜が降りた翌日の晴れた午後

甘みを引き出すには、適度な霜が降りた翌日の晴れた午後が理想的

寒さの刺激で甘みがぎゅっと凝縮された、冬ならではの深い味わいが楽しめます。

収穫前は水やりを控えて糖分を凝縮

収穫前の水やり管理

収穫の5〜7日前になったら、水の与えすぎに注意しましょう。

やや乾かし気味に管理することで、ほうれんそうが軽い乾燥ストレスを感じ、糖分をため込もうとします。

糖度が高まる効果と注意点

この反応によって、葉の中の水分が減り、糖がぎゅっと濃縮されて味が締まった甘い葉に育ちます。

ただし、乾かしすぎると株がしおれてしまうため、枯れない程度の控えめな水やりを心がけるのがコツです。

家庭菜園で甘みを逃さない育て方のコツ

家庭菜園で甘みを逃さない育て方のコツ
冬のほうれんそうを甘く育てるには、日々の管理も大切。

ここでは、家庭菜園で味を落とさず育てるためのポイントを紹介します。

酸性を嫌う!pH6.5前後に整える土づくり

土のpHが低いとうまくいかない

ほうれんそうは酸性の土を嫌う植物で、土のpHが低いと発芽や生育がうまくいきません。

畑で育てる場合は、種まきの1週間ほど前に苦土石灰を混ぜて、pH6.5前後に整えておきましょう。

 

排水性のよいふかふかの土にする

さらに、排水性のよいふかふかの土にすることで、根腐れも防げます。

プランターで育てるなら、市販の「野菜用培養土」がおすすめ

多くはあらかじめpH調整されているため、石灰を加えずそのまま使えます。

間引きと追肥のタイミングを逃さない

株間を4〜5cmに

株が密集しすぎると、風通しが悪くなり、徒長や病気の原因になります。

本葉が出そろったころに間引きを行い、株間を4〜5cmに整えましょう

 

草丈が10〜15cmほどになったら追肥

草丈が10〜15cmほどになったら、1㎡あたり約30gの化成肥料を追肥します。

その後、軽く土寄せをして根の張りを促すことで、株がしっかり育ちます。

間引いた若葉はやわらかく、ベビーリーフとしてサラダで楽しむのもおすすめです。

防寒と換気のバランスを保つ|閉めっぱなしはNG

寒さを利用して甘みを引き出す

冬のほうれんそうは、適度に寒さにあてることで甘みが深まります。

トンネル栽培では、晴れた日中に裾を少し開けて冷気を取り込み、寒さを感じさせましょう。

この刺激によって寒じめが進み、糖分がじわじわと増えていきます

換気と保温のバランス管理

ただし、湿気がこもるとベト病や徒長の原因になるため、日中の換気は必要です。

夜間や強風、霜の朝だけトンネルを閉じて保温し、冷気を通しつつ過湿を防ぎましょう。

このバランスが、甘く締まったほうれんそうに育てるコツです。

春になる前に収穫を終えて甘みをキープ

3月のトウ立ちリスク

3月に入って気温が上がると、ほうれんそうはトウ立ち(花芽形成)しやすくなります

花芽が出ると葉が硬くなり、甘みも風味も落ちてしまうため、2月中の収穫完了を目安にしましょう。

収穫適期の気温目安

目安は平均気温が10〜12℃前後

日中15℃・夜間5℃以上が続くころや、日が長くなる2月下旬〜3月には、一気に茎が伸びやすくなります。

寒いうちに採り切ることで、冬ならではの甘みとやわらかさをしっかり保てます。

冬収穫におすすめの甘いほうれんそう品種

朝霧(あさぎり)

寒ちぢみ系の代表的な品種で、低温期でも育ちやすく、冬収穫に向いています

寒さにあたることで糖度が上がり、やさしい甘みと風味のよさが特徴。

根元が赤みを帯び、見た目も美しく、おひたしや炒め物など幅広く楽しめます。

野菜種子 ホウレンソウ「朝霧」


寒締め吾郎丸(かんじめごろうまる)

名前のとおり、寒締め栽培にぴったりの品種です。

寒さにあたるほど甘みとコクが増し、葉肉が厚く食べごたえがあります。

渋みが少なく、葉軸が折れにくいため調理しやすいのも魅力。

家庭菜園でも育てやすく、冬の味わいをしっかり楽しめます。

ほうれんそう 寒締め吾郎丸



 

伸兵衛(しんべえ)

低温期でも生育しやすい秋冬どり向きの早生種

成長がゆっくりで、糖分をじっくりため込むため、えぐみが少なく甘みが際立ちます。

葉肉が厚く、濃い緑色が映える美しい株に育ちます。


よくある質問(Q&A)

ほうれん草よくある質問

霜に当てすぎると傷みませんか?

軽い霜に当たると甘みが増しますが、強い冷え込みが何日も続くと葉が傷むことがあります

とくに気温が-5℃以下になる場合は、不織布をかけて保温しておくと安心です。

また、朝日が当たる前に霜が急に溶けると葉が傷みやすくなるため、日よけネットなどで直射日光を和らげてあげるとより安全です。

トンネル栽培でも甘くなりますか?

はい、トンネル栽培でも甘く育ちます。

コツは「寒暖差をしっかり作る」ことです。

トンネル栽培で甘く育てるポイント

  1. 晴れた日中は裾を開けて換気し、冷気を取り込む
  2. 夜間や霜の朝だけトンネルを閉じて保温する
  3. 湿気をこもらせず、ベト病や徒長を防ぐ
この温度差の刺激で寒じめが進み、露地栽培と同じように甘みが増していきます

どのくらいの大きさで収穫すると甘い?

種にもよりますが、草丈が20〜25cmほどになり、葉が地面に広がって厚みが出てきた頃が収穫の目安です。

外葉にうっすらと光沢があり、手で触ったときにハリと弾力を感じる状態が理想的。

このタイミングで収穫すると、甘みとやわらかさのバランスが最もよく、冬ならではの濃い味わいが楽しめます。

まとめ

ほうれんそうの甘さを引き出す冬収穫のタイミングまとめ
冬のほうれんそうを甘く育てるコツは、収穫までの3つのタイミングを見極めることです。

 
  1. 寒じめの時期にしっかり冷気にあてて、糖をため込み甘みを深める
  2. 霜の翌日や夕方に収穫して、糖を凝縮させ味を濃くする
  3. 2月末までに採り切り、トウ立ちによる味の低下を防ぐ
 

寒さをうまく利用して育てれば、家庭でも驚くほど甘い冬ほうれんそうが味わえます。

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