目次
間引きとは?株間を広げて甘く柔らかく育てる
間引きとは、野菜の種をまいた後に芽が出た苗の中から、生育の悪いものや密集しているものを抜き取り、株と株の間に適切なスペースを確保する作業です。
間引きをすることで残った株はのびのびと育ち、甘く柔らかいほうれん草に仕上がります。
間引きをするメリット
- 光と風が通り、病気に強い株に育つ
- 根がしっかり張り、養分を効率よく吸収できる
- 蒸れを防いで病害虫の発生リスクを軽減できる
間引きのタイミングは2回が基本
ほうれん草の間引きは、生育に合わせ「2回」に分けて行うのが一般的です。株の成長段階に応じて株間を広げ、最終的に元気な株だけを残すようにします。
1回目|本葉1〜2枚で混み合い解消
この段階ではまだ苗が小さいため、特に密集している部分を優先的に間引き、混み合いを解消します。
弱々しい株や葉の形が不揃いな株を抜き、元気な株を残すことでその後の成長がスムーズになります。
最終的には株と株の間を2〜3cm程度に整えるのが目安です。
2回目|本葉3〜4枚で元気な株を残す
この時期になると株の大きさや色に違いが出て、成長の良し悪しが見分けやすくなります。
ここでは、葉色が薄い株や成長の遅れた株を間引き、元気な株を均等に残していきましょう。
最終的な株間は5〜7cmほどを確保し、収穫まで安定して育てられる環境を整えます。
ほうれん草の間引き方
間引きを上手に行うには、道具をそろえ、残す株をしっかり見極めて、丁寧に作業することが大切です。ほんの少し工夫するだけで株の生育が安定し、収穫まで元気に育ってくれます。
ハサミ・手袋を用意
間引きを始める前に、必要な道具をそろえておきましょう。細かい作業になるため、扱いやすいものを準備しておくと安心です。
- 切れ味の良い細めのハサミ
- 小さな株をつまみやすいピンセット
- 手や爪を守るための手袋
成長の遅い株・重なり株を抜く
間引きでは「どの株を残すか」を見極めることがとても重要です。迷ったときは、元気な株を残すと考えるとわかりやすいでしょう。
間引く対象となるのは、例えば次のような株です。
葉色が薄く、生育が遅れている株
→ このままにしても大きく育ちにくく、全体の生育を妨げる原因になります。茎や葉が隣と重なっている株
→ 光を奪い合いどちらも弱ってしまうため、早めに整理が必要です。こうした株を優先的に抜いておくことで残した株に光や養分がしっかり行き渡り、より健康で立派なほうれん草が育てられます。
根元から優しく、水やり・追肥も忘れずに
苗を抜くときは、周囲の株や根を傷つけないように、株元を持って丁寧に作業しましょう。無理に引っ張らず、必要に応じてハサミを使うと安心です。苗が小さいうちはピンセットを使うとつまみやすく、よりスムーズに作業ができます。
間引きが終わったあとは、株元にたっぷり水を与えて土を落ち着かせましょう。
さらに2回目の間引き後には追肥を施すと、株がより丈夫に育ちます。
こうしたひと手間を重ねることで生育は安定し、収穫時には立派で美味しいほうれん草に仕上がります。
間引き菜は丸ごと食べて楽しむ
間引きで抜いた小さなほうれん草は「間引き菜」と呼ばれ、やわらかくてえぐみが少ないのが特徴です。
収穫したての新鮮さを活かして、丸ごと美味しくいただきましょう。
サラダやおひたしに
そのまま生で食べればシャキシャキとした食感が楽しめ、さっと茹でておひたしにすると優しい甘みが引き立ちます。味噌汁やスープに
仕上げにサッと加えるだけで彩りがよくなり、栄養もプラスされます。煮すぎないのがポイントです。保存方法
間引き菜はしおれやすいので、できるだけ早めに調理して食べましょう。食べきれない場合は、湿らせたキッチンペーパーで包んで保存袋に入れ、冷蔵庫で保管します。
目安は2〜3日以内に使い切ることです。
長く保存したいときは、軽く茹でて水気をしっかり切り、小分けにして冷凍すると約1か月楽しめます。
美味しく育てるための追加ポイント
間引きとあわせて、栽培環境を整えることも美味しいほうれん草づくりには欠かせません。土や肥料、水やり、害虫対策を見直すだけで、仕上がりがぐっと変わります。
土は中性からやや弱アルカリ性に
ほうれん草は酸性の土を苦手とします。理想のpHは6.0〜6.5で、酸度調整石灰を混ぜて中和してから植えると安心です。
市販の野菜用培養土なら最初からバランスが整っているものが多く、そのまま使えるので手軽です。
元肥は控えめにして根張りを促す
ほうれん草は、種まき前に与える元肥を控えめにするのがコツです。肥料が多すぎると葉ばかり茂って根が弱まり、味も落ちてしまいます。
適度に抑えることで根がしっかり張り、えぐみの少ない甘みのあるほうれん草に育ちます。
水やりは土が乾いたら朝にたっぷり
ほうれん草は乾燥にも過湿にも弱い植物です。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れるまでたっぷり与えましょう。
水やりは朝の涼しい時間が最適で、真夏にしおれている場合だけ夕方に補います。
水やりのコツ
- マルチを敷くと乾燥防止と泥はね防止に役立つ
- 風が強い日や空気が乾燥している時期は回数をやや増やす
- 冬は水やりを控えめにし、凍結しやすい時間帯は避ける
アブラムシ・ヨトウムシは早期発見で除去
ほうれん草はアブラムシやヨトウムシがつきやすい野菜です。葉の裏を時々チェックし、見つけたらすぐに葉ごと取り除きましょう。
被害が広がる前に対処することで、株への影響を最小限に抑えられます。
おすすめほうれん草3選【家庭菜園向け】
ここでは家庭菜園で育てやすく、美味しさにも定評のある3品種をご紹介します。強力オーライ
「強力オーライ」は寒さに強く、秋冬どりに適した定番のほうれん草です。生育が旺盛で株張りが良く、根元が赤く色づくのが特徴です。
病気にも比較的強く、栽培管理がしやすいため家庭菜園でも安心して育てられます。
プランター栽培にも向いており、初めてほうれん草を育てる方にもおすすめの品種です。
牛若丸
「牛若丸」は葉柄が太く、株張りがしっかりしていて、見た目にもボリュームのある株に育つ品種です。比較的病害虫に強く、家庭菜園でも育てやすいのが特徴。
在圃性(畑に長く置いても傷みにくい性質)が高いため、忙しくて毎日収穫できない方でも安心です。
収穫のタイミングが多少遅れても味が落ちにくく、柔らかさと甘みを保ったまま楽しめます。
寒さにも強く、冬の家庭菜園に適した育てやすいほうれん草です。
吉兵衛
「吉兵衛」は中早生タイプで生育が旺盛な品種です。株張りが良く収量も多いため、一度にたっぷり収穫できるのが魅力。
さらに成長が早いため、数回に分けて種まきをすると長い期間にわたって収穫できます。
家庭菜園で「長く味わいたい」「途切れなく楽しみたい」という方に特におすすめの品種です。
よくある質問
間引きのタイミングを逃した場合はどうすればいいですか?
遅れても間引きは可能です。
ただし株が大きくなってから根ごと抜くと、隣の株の根を傷つけやすい点に注意しましょう。その場合は無理に引き抜かず、ハサミで株元をカットするのがおすすめです。
多少遅れても株間を整えてあげることで、残した株がのびのび育ちます。
間引きは手で抜くのとハサミで切るの、どちらが良いですか?
どちらでも構いませんが、状況に応じて使い分けるのがポイントです。
土が柔らかく苗が小さいうちは、手で抜いても問題ありません。反対に、株が大きくなって根が絡み合っている場合は、無理に引き抜くと周囲の株まで傷めてしまう恐れがあります。
その場合は、ハサミで根元を切るようにしましょう。
間引き菜は生で食べられますか?
生でも食べられます。
間引き菜は成長のためのエネルギーを小さな葉に蓄えているので、とても栄養価が高いです。葉が小さくやわらかいうちは、そのままサラダに加えるとみずみずしい食感が楽しめます。
一方で、株が育ってやや硬さが出てきた場合は注意が必要です。
ほうれん草のようにシュウ酸(あく)を含む野菜は、大きくなるほどシュウ酸量が増えるため、必ず下茹でしてから料理に使うようにしましょう。
まとめ
ほうれん草を美味しく育てるには2回の間引きがポイントです。1回目は本葉1〜2枚の時期に株間2〜3cm、2回目は本葉3〜4枚の時期に株間5〜7cmを確保しましょう。
抜いた間引き菜はやわらかく栄養も豊富で、冷蔵なら2〜3日・冷凍なら約1か月保存可能。
サラダや味噌汁などで美味しく活用できます。
さらに、土のpHは6.0〜6.5を目安に整え、乾燥したら鉢底から水が流れるまで朝にたっぷり水やりをすることで、最後までふんわり甘いほうれん草に育ちます。