- YasuhiroOgawa
植物園に勤務していた経験を活かして、正確でわかりやすい記事を書いていきたいです。好きな花はハイビスカス。現在は、トロピカルフルーツの新しい栽培に取り組んでます!…続きを読む
バナナの概要
バナナは「草」!
バナナは高さ10mにもなる多年草で、熱帯では重要な植物です。茎のように見える偽茎(ぎけい)は、葉が重なり合ってできており、生長点は地下部にあります。実は葉が40~45枚ほどつくと結実し、株はその後枯れてしまいます。生長は早く、熱帯地域では植え付け後1年ほどで花芽がつきます。ただし環境が悪かったり、鉢植えで根詰まりするなどして生育が遅い場合は、開花まで数年かかります。
また開花から収穫までの日数は温度によって変わり、高温期は70日ほどで収穫できますが、低温だと半年ほどの時間を要します。次の世代へは、株元にできる子株が育つことで更新されます。
品種を選べば、家庭でも最終的に12~15号の鉢で実を収穫することが可能です。沖縄でよく栽培される矮性の三尺バナナは、2mほどの高さで実がなります。さらに1m以下の高さで結実する、超矮性の品種も流通しています。
寒さにも比較的強く、0℃近くに温度が下がっても葉は傷みますが枯れません。室内の日当たりのよい暖房が入る部屋に置けば、冬越しは簡単です。
観葉植物としても
観葉植物として部屋に飾れば、みずみずしく大きな緑の葉が展開する株姿がトロピカルムードの演出に最適でしょう。果実も食べることができる付加価値のある観葉植物として、今後さらなる普及が見込まれます。バナナの起源
マレー半島を中心とした東南アジアからインドが、主にバナナの起源とされます。またさまざまなバナナの種類が見られるパプアニューギニアも、起源とされる説があります。バナナの原種は、ムサ・アクミナータ(Musa acuminata)と、ムサ・バルビシアーナ(Musa balbisiana)の2種です。アクミナータはAA、バルビシアーナはBBという2倍体の遺伝子型(ゲノムタイプ)をそれぞれ有しています。
日本で食べられるバナナのほとんどは、ムサ・アクミナータの同質3倍体品種(AAA型)の「ジャイアント キャベンディッシュ」です。またフルーツとして生食されるほかの品種のほとんどは、アクミナータ同質3倍体です。
バナナの生産・流通状況
世界のバナナの主要生産国はインドが最も多く、全体の4分の1近くを占めます。次に中国、フィリピン、ブラジル、エクアドルと続きます。戦前~戦後のころの日本では、バナナは主に台湾から輸入されていましたが、その後、輸入自由化からエクアドルに変わりました。現在はドール社などの多国籍企業による生産により、フィリピンからの輸入が大部分を占め、次にエクアドルが少量と続きます。バナナの安定生産には台風が大敵のため、台風の通り道になりやすい台湾より、台風があまり到来しないフィリピンが生産の主流になりました。
現在、台湾産バナナは全体の1パーセントにも満たないほどですが、甘みが強く味が濃厚で、ほかの産地のバナナに比べて2倍近く高い価格が相場となっています。台湾産のバナナが糖度が高いのは、果実が熟すまでの期間が1.5倍ほど長いためです。バナナは適度に冷涼な気候でゆっくりと熟したほうが、おいしくなる性質があります。近年はフィリピン産バナナでも、熟すまで時間がかかる高地産バナナが高値で流通するようになってきました。
国内では沖縄や鹿児島、宮崎で、やや酸味のある島バナナや三尺バナナが栽培されます。全体の消費量に占める割合は非常に少なく、0.01%以下です。また最近は、宮崎や大分など国内各地で温室産の高級バナナが出荷されるようになり、話題となっています。
バナナの育て方
人の背丈ほどの高さで結実する三尺バナナなど、矮性品種のバナナなら家庭でも十分育てることができます。バナナの栽培は、水と肥料を多く与えることがポイントです。置き場
日なたに置きます。日照不足では茎が細くなって軟弱になり、果実も小さくなってしまいます。最低でも半日以上日光が当たる場所に置いてください。春から秋の生長期は、戸外で日光がよく当たる場所で育てるとよいですが、強風が当たると葉が傷みやすいので注意が必要です。
水やり
葉が大きいので、水分を多く必要とします。生育期間中は用土をあまり乾かさないよう水を十分に与え、特に結実期間は多くの水分を必要とするので水切れに注意しましょう。春と秋は鉢土の表面が乾いてから水を与えますが、旺盛に生育している夏の晴れた日は、毎日水やりしてください。生育が停止する冬は、やや乾かし気味に管理します。
肥料
よい果実を収穫するには、肥料を十分与えることが大切です。春から秋の生長期間中に、肥料を規定量よりやや多めに与えるようにしてください。肥料の配合は、カリを最も多く必要とし、チッソの1.5倍程度の量を必要とします。またチッソもリン酸よりやや多めに必要です。
植え替え
バナナは生育が早く、根詰まりすると生育が衰えます。順調に生長させるには不可欠な作業なので、必ず行ってください。4〜6号のポット鉢を購入した場合は、すぐに2回りほど大きなサイズの鉢に植え替えます。最終的には、12〜17号程度の大きさの鉢に植えてください。
1m以下でも実がなる超矮性の品種は、10号鉢に植えても結実する可能性は高いですが、実の数は少ないでしょう。いずれも実をたくさん収穫したい場合は、最終的に使う鉢は大きいほうがよいです。
用土
用土は通常の培養土がそのまま使えます。自分で配合する場合は、赤玉小粒6割+堆肥2割+腐葉土2割+くん炭1割などが目安です。実がなったら
果実が生長するには15℃以上の温度が必要です。冬に結実した場合は、できる限り保温に配慮してください。温度が低過ぎると低温障害を受け、果実が落ちてしまいます。最低でも7~8℃以上は保つようにしてください。手入れ
茎のように見える偽茎の表面についた枯れた葉は、そのままにしておくと皮の裏が害虫類の隠れ場所になるため、取り除いたほうが見栄えもよいでしょう。取り除く際は無理に引っ張ると生きている部分も傷める可能性があるので、ハサミなどで切るようにしてください。バナナの品種|苗の販売先は?
株の入手方法
大型のグリーンショップやホームセンターなどで、春から夏に苗が流通することがあります。また通販なら、入手できる可能性が高いです。1株で実がなるので、結実させるための受粉樹は購入する必要はありません。秋は苗の流通は少ないのですが、専門のナーセリーなどに問い合わせるとよいでしょう。
熱帯植物専門ナーセリー:エクゾティックプランツ
バナナの品種
三尺バナナ
矮性で2mほどの高さで結実し、台風の被害を受けにくいので、沖縄でよく植えられています。家庭では、12〜15号(口径30〜45cm)ぐらいの大きさの鉢を使えば、実を収穫することができます。ドワーフモンキーバナナ
0.6~1mほどの高さで結実する超矮性のバナナです。実は小さいですが、スペースを取らないので家庭で育てるには最適です。島バナナ(小笠原原種)
大きさは通常目にするバナナの半分くらいですが、甘さと酸味のバランスがよく皮が薄いです。1888年に小笠原から沖縄に導入され、庭先などに植えられて愛されてきたバナナです。背が高くて台風の被害を受けやすく、多くは流通していません。ちなみにネット通販で島バナナの苗として販売されているものがありましたが、筆者が見たところ繊維用として栽培される琉球糸芭蕉のようでした。バナナに近い仲間たち
バナナとは別種ですが、同じMusa属の仲間です。寒さに強いものなど、さまざまな種類があります。ピンクバナナ(アケビバナナ)
インド原産の原種(Musa velutina)で、ピンク色の花や果実が美しく、鑑賞目的でも栽培されます。高さは1.5~2mほどに生長します。果実は種が多いですが、果肉は甘く食べることができます。アケビのようにタネを吐き出しながら食べることから、アケビバナナの名でも流通しています。春に苗を植え付ければ秋に実を収穫できるほど生育が早いです。耐寒性もバナナより強く、関東で地植えした株が冬に地上部は枯れても地下部が越冬し、春先に新芽が出てくることが多いです。食べる部分は少ないのですが、庭植えなどで栽培するには、さらに適した種類といえるでしょう。
バショウ(芭蕉)
東北など寒い地域などでも、庭でバナナが植えてある光景を見たことがあるかもしれません。その植物は、中国原産が原産といわれるバショウ(Musa basjoo)です。耐寒性が非常に強く、冬に地上部が枯れても来春に新芽が地面から出てきます。霜が降りない地域で環境がよい場所では、バナナそっくりの小さな実がつくことがあります。バナナの栄養や保存方法
バナナの栄養
バナナを食べ続けることで若返りなどさまざまな効果が見込めます。身近で優れた、人間にとって非常に重要なフルーツといえるでしょう。低カロリー、低脂肪で栄養バランスに優れます。また植物繊維や腸内の善玉細菌を増やすフラクトオリゴ糖も豊富で、整腸作用があります。人間の体内からも分泌される消化酵素・アミラーゼを含み、消化吸収がよいことから、朝食や運動時の栄養補給に適し、さらに赤ちゃんの離乳食にも使われます。
また皮にも栄養が豊富なので、本来は皮ごと食べると、バナナの栄養をあますことなく取ることができます。自分で育てて収穫した果実なら、農薬の心配もありません。また最近話題の国産バナナも、無農薬で栽培されているものが多いようです。抵抗がある場合は、丸ごとミキサーにかけてジュースやスムージーにすると、おいしくいただけます。
バナナの保存方法
完熟させるための保存方法
バナナを保存する適温は、13~25℃です。日光があたらず、室内の適度に風通しのよい場所に置いてください。冷蔵庫に入れたり、冬の低温に当てたりすると、皮が黒ずみ追熟しません。また25℃以上の高温下では、急速に熟してしまいます。皮に茶色い斑点が多数入るシュガースポットができたときが、完熟の合図となります。一番糖度が高いだけでなく、免疫力を高める成分も最も多く含まれます。