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ここでは、美しい花を育てて出荷する花きの仕事について、ご案内します。
花き(かき)とは?
花きとは、観賞用に栽培する植物のことを意味します。漢字では「花卉」と書きます(読み方は「かき」)。各切り花や球根、鉢もの、盆栽や芝生など多くの種類があり、冠婚葬祭、プレゼント、室内の装飾などさまざまな使われ方をしています。消費者が花を求める場面によって色や品種を細かく選ぶなど、嗜好性の高い品目といえます。このため、花きの栽培には、消費者の多様なニーズに応えていくことや、新たに消費意欲をかきたてるような工夫が求められるでしょう。
分類 | 内容 |
切り花類 | キク、バラ、カーネーションなどの切り花 ヤシの葉などの切り葉 サクラなどの切り枝 |
花木類 | ツツジ等庭木に使われる木本制植物で緑化木を含む (鉢物として生産されているものを除く) |
鉢物類 | シクラメン、ラン、観葉植物、盆栽など |
球根類 | チューリップ、ユリなど |
花壇用苗もの類 | パンジー、ペチュニアなど |
芝類 | 造園用など養成されているもの |
地被植物類 | ササ、蔓類など地面や壁面の被覆に供するもの |
花きの歴史
日本における花きの歴史は奈良時代にさかのぼります。『万葉集』に詠み込まれた花きは約160種に上り、平安時代の『枕草子』『源氏物語』にもそれぞれ100種以上の草木や花きが記されていて、日本人は古くから草木や花を愛してきたことがわかります。鎌倉時代、多数の僧侶によって、その他の芸術とともに盆栽の文化が取り入れられました。室町時代には生け花が成立し、花き園芸の振興につながりました。江戸時代になると、生活に余裕を持つようになった庶民も花きを手掛けるようになり、多様な園芸書が版行されました。
明治時代に入って、日本で最初のガラス温室が西欧人によって建てられ、熱帯性のランや観葉植物の栽培も始まっていきます。第二次世界大戦後、本格的な花き生産が行われるようになり、最初は露地栽培から、そして1953年ころからビニールハウスが普及し、さらにガラス温室も加わり施設園芸が増加していきました。
花きの産出額ランキング|冠婚葬祭用や贈答用が上位に
どのような花きが一番生産されているのでしょうか?日本では、お葬式で利用されるキクが産出額第1位、お祝いで利用される洋ランが第2位となっています。暮らしの中で必要不可欠な花が上位にきているといえますね。品目 | 産出額(億円) | 用途 | |
1位 | キク | 680 | お葬式、供花 |
2位 | 洋ラン(鉢) | 348 | お祝い |
3位 | ユリ | 217 | 供花、ギフト |
4位 | バラ | 180 | ブライダル、ギフト |
5位 | 切り枝 | 167 | 生け花 |
花きの生産農家数や気になる所得は?
花きの栽培経営体数は約4万6千戸(平成27年)で、そのうち「切り花類」栽培が約3万8千戸を占めています。生産者の年代構成は、45歳未満の若い農業者の割合が稲作と比較して約2倍と高く、若い世代が活躍しています。参考:農林業センサス「販売目的で栽培した花き類の品目別栽培経営体数」
1経営体当たり農業粗収益(全国平均)は、露地花き作経営は636万円、施設花き作経営は1,447万円となっています。一方、農業経営費は露地花き作経営が447万円、施設花き作経営は1,098万円となっており、この結果、農業所得は露地花き作経営が189万円、施設花き作経営は349万円となっています。野菜栽培と比べると、農業粗利益はやや多いものの農業経営費が高いため、農業所得が低く止まっています。
農業粗利益(万円) | 農業経営費(万円) | 農業所得(万円) | |
露地花き作経営 | 636 | 447 | 189 |
(参考)露地野菜栽培 | 602 | 368 | 234 |
施設花き作経営 | 1,447 | 1,098 | 349 |
(参考)施設野菜栽培 | 1,250 | 743 | 507 |
また、花きの流通は市場経由率が77%と高いことも特徴です。これは、他の農産物については、スーパーや加工メーカーなど大口需要者が産地から直接仕入れなどを行ったり、直接販売が増加する一方、花きは多様な品種が生産されているうえに、小売りの規模が小さいのでロットが零細であるためと考えられます。
花きの仕事の年間スケジュール|カーネーションの場合
花きの仕事の年間スケジュールは、育てる品目によって大きく異なります。ここでは、カーネーションの例を見てみましょう。時期 | 仕事 | 内容 |
6月 | 定植 | 苗を定植し、花を傷めないように水やりをします。害虫の早期発見、早期防除に努めることも大切です。 |
7月 | 摘心(1回目) | 定植後3週間を目安に摘心をします。 ※摘心とは花を大きくするために新しく伸びてくる茎を途中で摘み取ること。 |
8月中旬~9月 | 摘心(2回目) | 2回目の摘心をします。 |
10月~5月 | 収穫・出荷 | 1番花の収穫の際には次の花の芽を1~2本残して収穫します。収穫方法を工夫しながら、その後の収穫のピークを調整します。 |
12月~4月 | 加温 | 低温により花色が薄くなることがあるため、加温します。 |
新しいブランドの育成|青いカーネーション、トゲの少ないバラ
花きについては、新しい品種を作り出す育種が盛んです。新しい花の色や耐病性、日持ちの良さ等の優れた品種を育成しようと、民間会社や生産者自らが開発をしています。サントリーグループでは世界初の「青いカーネーション」を誕生させ「ムーンダスト」として販売しました。また、地方自治体においても、地元ブランドの花きを育成しようという取り組みがあります。愛知県農業総合試験場では、花弁数が多くボリューム感があり茎にトゲが少ない赤いバラ「アイチ1号」を開発しました。花き栽培の課題|高い燃料費!燃油価格の高騰に影響を受けやすい
花きは食料のように生活必需品ではないため、その消費については、景気の影響を受けやすい品目といえます。また、花き施設栽培の経営においては、経営費に占める燃料費の割合が大きく、燃料費の高騰はしばしば経営を圧迫します。燃料費は価格が変動しやすく、今後の価格の見通しが立てにくい点も経営を困難にするといえます。省エネルギー化に取り組むとともに、燃油価格に影響を受けにくい経営を意識する必要があります。消費者の生活に潤いを届ける
花は身近に置いておける自然の一部ですね。近年花と緑には癒しの効果があることがわかってきました。花きには、血圧や気分等を適正な状態に導く調整効果があること、花の香りやグリーンにはリラックス効果があることなどです。そして、私たちが花を買うとき…それは生活に潤いが欲しいとき、誰かに想いを届けたいとき、静かに祈りたいときなど、生活の中で一歩立ち止まるようなときではないでしょうか。生活必需品でないからこそ、消費者が想いを持って買い求める花。だからこそ、花を育てて消費者に届ける仕事は魅力的に見えるのかもしれません。参考:千葉大学環境健康フィールド科学センター(自然セラピープロジェクト)による「平成25年度花きに対する正しい知識の検証・普及事業」の調査結果について
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