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プレイオスピロスはリトープスと同じメセンの仲間
プレイオスピロスは、南アフリカを原産とする多肉植物です。リトープスなどと同じメセン(女仙)の仲間で、メセンとはハマミズナ科の植物全般を指します。自生地は年間を通じて雨が少ないことから、乾燥に耐えられるよう超肉厚な葉を持っています。半球状の葉が真ん中でぱっくり割れたような姿が特徴で、自生地の環境に適応し、小石にふんしてこのような姿になったのだとか。メセン類の中では大型種が多く、割れ目から新芽が顔を出す「脱皮」を繰り返しながら、大きいもので15cm程度まで生長します。表面は硬くざらざらとした質感。光を取り入れるための無数の窓があり、それがボツボツとした斑点模様に見えます。時期によって色合いが変化し、紅葉する種類もあるようです。
原産地では30種類くらいが知られており、日本では「帝玉」や「令和の桃子」といった品種が人気があります。
プレイオスピロスは多肉植物の中では栽培が難しい部類です。高温多湿な環境が苦手で、夏の蒸し暑さに負けて溶けるように腐ってしまったり、カビてしまったりすることがあります。また、生育期に日照時間と光量が不足すると葉が太らず、花付きも悪くなります。株を大きくするには、生育期の春と秋にしっかり日に当てて、適切に水やりすることが大切です。
プレイオスピロスの基本情報
基本情報
学名 | Pleiospilos |
科名 | ハマミズナ科 |
属名 | プレイオスピロス属 |
原産地 | 南アフリカ |
形態 | 多年草 |
生育型 | 冬型 |
特徴
草丈
2~15cm耐寒性
普通~やや強い ※種類による耐暑性
やや弱い生長速度
遅い栽培難易度
難しいプレイオスピロスの花
種まきから数年後、ある程度生長した株は冬に花芽を付けます。リトープスと同様、葉の割れ目から花茎を伸ばし、菊に似た花を咲かせます。色は種類によってピンク、赤、黄、オレンジなどさまざまです。株のサイズに対して花は大きく、4~7cmくらいになります。開花させるには日光と気温がポイント。昼に開花して夜に閉じるを1週間くらい繰り返しますが、開花し始めても途中で気温が低い日が続くと花が閉じたままになってしまいます。天候と気温によっては、開花から咲き終わりまで1カ月くらいかかることもあるようです。
プレイオスピロスの品種・種類
帝玉(ネリー)
豆のような超肉厚な葉を1〜4対ほど付ける「帝玉」。肌はグレーに近い緑色が多く、濃い褐色の斑点が株全体に広がります。健康な株は少し赤みを帯びるようです。生長すると高さ5cm、長さ12cmくらいまで大きくなります。花は黄色〜オレンジです。帝玉の突然変異種で、全体が濃い紫色の「紫帝玉」という品種もあります。帝玉は比較的暑さ寒さに強く丈夫ですが、紫帝玉は葉緑素が少ない分、通常の帝玉よりも頑強さでは少々劣ります。紫帝玉は花も赤紫色です。
令和の桃子・令和の桃太郎
帝玉の突然変異種で、新時代にぴったりのネーミング「令和の桃子」。新芽が着色したかのような鮮やかなピンク色に染まり、桃のように見えることからこの名前が付けられたそう。桃のところはほかの部分よりも環境変化に弱く、管理に失敗すると黄色っぽく色褪せ、ひどい場合は傷んでブヨブヨになってしまうことがあります。きれいなピンクを保つためには、しっかりと日光に当て、水やりをし過ぎないことがポイントです。なお令和の桃子が大きく育ったものは「令和の桃太郎」と呼ばれます。花は桃子・桃太郎ともに鮮やかなピンク~オレンジ色です。青鸞
「青鸞」は帝玉を真横に引き延ばしたかのような姿が特徴。「鸞(らん)」とは中国における想像上の霊鳥とされており、確かに鳥が翼を広げているように見えなくもありません。夏ごろに黄色〜オレンジの花を咲かせます。鳳卵(ほうらん/ボルシー)
「鳳卵(ボルシー)」はプレイオスピロスの中では大型の品種です。生長すると直径10cmくらいになります。肌はグレーに近い緑色。帝玉が2~4対の葉を付けるのに対し、ボルシーは新しい葉が生長するにつれて外側の古い葉が枯れるため、基本的に一対の葉のみが残ります。巨鳳(きょほう)
石を真っ二つに割ったような見た目の「巨鳳」。白味がかったグリーンの葉に、濃い緑色の斑点が入ります。帝玉よりもさらに大きくなり、直径12cmくらいまで巨大化します。開花は秋ごろ、色は黄色です。プレイオスピロスの育て方
栽培カレンダー
- 生育期:3〜5月、10〜11月
- 休眠期:6〜9月
- 植え替え:3〜5月、9〜10月
- 肥料:3〜4月、10〜11月
- 開花:11月
日当たり・置き場所
生育が旺盛な3~5月、生育期の10~11月は戸外に出して直射日光に当てます。生育期にたっぷりの日光に当てることが株を良好な状態に保つ上で大切です。休眠期の6~9月は50~70%程度に遮光し、直射日光に当てないようにします。ただし、5~10月にかけては新芽と花芽の形成期に当たります。直射日光を避けるためとはいえ、夏場にずっと半日陰で管理していると、日照時間と光量が足りず溶けやすくなってしまうので気を付けましょう。11~2月は気温が3℃を下回るようになったら室内に取り込み、日当たりのよい窓辺などで管理します。
※季節にかかわらず、外に出している間は雨に当てないための工夫が必要。雨をしのげて日差しが差し込む軒下などがおすすめです。
室内で育てる場合
室内で育てる場合は日光不足にならないよう日当たりのよい場所に置きます。風通しも確保し、必要に応じてサーキュレーターで風を当てるなど工夫しましょう。水やり
3~5月、10~11月は土が乾いたタイミングで月に2回程度水やりをします。あげるときはしっかり、あとはカラカラになるまで放置し、メリハリをつけて水やりすることが上手く育てるコツです。※葉が赤っぽく変色したら乾かし過ぎのサインです。
プレイオスピロスの根はいわゆるゴボウ根。太い根がまっすぐ下に伸びていくため、表面だけ湿っていても根が水を吸収できません。生育期は鉢底から流れ出るまでたっぷりの水を与えましょう。5月ごろ気温が上がってきたら、水やりの頻度と量を徐々に減らしていきます。6~8月は休眠に入るので断水気味に。プレイオスピロスは多肉質な葉に水分をため込んでいるので、夏場にほとんど水をやらなくても平気です。とはいえ完全に水やりを止めるのではなく、月1回程度、葉水を与えるくらいがベター。個体差や栽培環境の違いも考慮し、あまり乾いているようであれば軽く水やりした方がよいでしょう。暑い時期は鉢内の蒸れを防ぐため、朝方か気温が下がる夕方に行ってください。
厳寒期の12~2月は生育が鈍るので、水やりは月1回程度。あまり多く与えても根が水を吸わないため、土の表面が湿る程度に軽く行います。気温の低い日や時間帯に水やりすると凍結の恐れがあります。晴れの日の午前中など、気温の高い時間を狙って水やりしましょう。
夏越し
プレイオスピロスは夏の高温多湿が苦手です。真夏は特に風通しに配慮し、水やりを控えましょう。直射日光に当てるとあっという間に溶けてしまうので、寒冷紗や遮光ネットで遮光してください。冬越し
できるだけ3℃以上をキープします。九州や近畿など、冬でも気温が0℃を下回ることのない温暖地であれば軒下などでも越冬可能です。関東以北では凍ってしまう可能性があるので、室内か簡易温室などに取り込み、霜や雪に当てないようにします。栽培適温
5~25℃肥料
植え付け時に元肥としてマグアンプなどを土に混ぜておきます。多肉植物用の土など、もともと肥料が含まれているようであれば元肥は不要です。追肥は生育期の10~11月ごろ、薄めた液体肥料か、緩効性の置き肥を月1回程度与えましょう。プレイオスピロスに限らず、メセン類は少し肥料を与えた方が生育がよくなります。用土
水はけのよい土を用います。市販のサボテン・多肉植物用の土でもOKです。原産地では砂漠など砂の多い土地で自生しているので、自分でブレンドする場合は小粒や中粒くらいの細か過ぎない土を使いましょう。赤玉土をメインに、鹿沼土、軽石、ゼオライト、パーライトなどを混ぜます。プレイオスピロスの植え付け・植え替え
開花後の春や、9月上旬の秋口に行います。植え替えの目安は2~3年に一度。鉢底から根がはみ出していれば植え替えのサインです。また、古い葉が鉢の縁にぶつかっていると新芽が出た時に古い葉が外側に開けず、葉の付け根が割れてしまうことがあります。植え替え前の数日間は水やりを控え、土を乾かしておいた方がスムーズに株が抜けます。プレイオスピロスは根が太く長いので、ちぎれないよう注意しましょう。根が長く張れるよう一回り大きな深めの鉢に植え替えたら、4~5日あけて水やりをし、その後は通常通りに管理します。
株の選び方
直径が5cmに満たないような小さい株は暑さや寒さに弱いため、夏越し・冬越しで失敗しやすくなります。店頭で購入する場合、形がよくて葉にハリがあり、葉が2対以上ある大きめの株がおすすめです。プレイオスピロスの剪定
剪定は特に必要ありません。開花後の花柄をそのままにしていると害虫が寄りやすくなるので、種子を取らないのであれば早めに摘み取りましょう。プレイオスピロスの殖やし方
プレイオスピロスは実生か株分けで殖やせます。時期はいずれも生育期の早い段階、9~10月ごろがベストです。実生
プレイオスピロスは実生で殖やすのが一般的です。冬に開花後、受粉させると春ごろに種が採れます。種の収穫は実が茶色く完全に乾いてから。寒い環境に置いておくことで発芽率が高まるため、採れた種は冷蔵庫の野菜室などで保管しておき、涼しくなりはじめる9月ごろには種します。受粉が面倒であればネットでも購入できますよ。種まきに使う土も、市販されている多肉植物用の土などで構いません。ただ、表面1cm程度はバーミキュライトや種まき用の土など、柔らかい土をのせておいた方が根が張りやすくなります。2~3cmくらい間隔をあけて種をまいたら軽く覆土しましょう。マグアンプなどを細かく砕いて表土に混ぜておくと、発芽後の生長が早くなります。
は種後は気温を25~30℃くらいに保ち、腰水に浸け、ラップなどでふたをして管理します。水が切れると生長が止まるので常に土を湿らせた状態にしておきましょう。種まきから4~5日で発芽し、次第に厚みが出て多肉らしい葉姿に近付きます。1カ月くらいすると双葉の中心に本葉の芽が見え始め、この新芽がやがて立体的に太って小さな玉のようになります。
植え替えは発芽から3~5カ月後、本葉が1cm程度に育ったタイミングで行いましょう。プレイオスピロスは生育が遅いのでのんびり生長を見守ってあげましょう!