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アドロミスクスはどんな多肉植物?
アドロミスクスは南アフリカの乾燥地帯が原産の多肉植物です。約30~50種が知られており、現在でも新種が発見されています。原産地では10~25℃くらいの気温で生育しているため、日本での生育型は春秋型。ただ「永楽」など一部の品種は冬型に分類されています。葉は肉厚で、ベンケイソウ科の中ではもっとも高度に多肉化します。アドロミスクスは多肉植物の中でも小型です。生長しても15cm程度とコンパクトなので、場所を取らずに育てられますよ。
ただネットや本で得られる情報が少なく、流通量も限られているため、お店で見かけることはまれかもしれません。また、エケベリアやセダムなどの人気種と比べるとほとんど紅葉もせず、見た目的には地味…。しかし、そのバリエーションに富んだ株姿から、ニッチながらファンの間では密かな人気を博しています。
アドロミスクスは葉姿のバリエーションが豊富
葉形はマイタケのようなヘラ状をしたものや円盤状のもの、ラグビーボール状のもの、円筒状のもの、卵形のものなどさまざま。質感もツルツルだったり、ボコボコだったり、白い粉に覆われていたり、産毛が生えていたりと個性的です。色は薄緑やグレー、赤褐色などがあり、まだら模様が入る品種も多く見られます。株姿は大きく分けて株元を軸に葉を展開するタイプと、茎を伸ばして葉を付けるタイプの2種類。中には糸状の気根を無数に生やす品種もあります。
アドロミスクスの名前の由来
ちなみにアドロミスクスという名前は、「大きな」「厚い」という意味の「adros」と、「幹」や「柄」を意味する「mischos」というギリシャ語が由来。多肉好きの間では親しみを込めて「アドロ」とも呼ばれています。アドロミスクスの花
初夏から夏にかけて花茎を長く伸ばし、筒状の花をたくさん咲かせます。花弁は5枚。真上から見ると星形に見えます。色は白や淡いピンクが多めです。小さくて地味なので、あまり観賞には向いていません。株を長く育てたい場合、養分が奪われないよう花が終わったら早めに花茎と花柄を摘み取りましょう。アドロミスクスの基本情報
基本情報
学名 | Adromischus |
科名 | ベンケイソウ科カランコエ亜科 |
属名 | アドロミスクス属 |
原産地 | 南アフリカ、ナミビア |
形態 | 多年草 |
生育型 | 春秋型、冬型 ※品種による |
特徴
草丈
5~15cm耐寒性
やや強い耐暑性
やや強い生長速度
遅め栽培難易度
普通アドロミスクスの品種・種類
アドロミスクスは形も色も模様も多種多様。ここからは代表的な品種をご紹介します!マリアンナエ
コロコロとした丸い葉が特徴のマリアンナエ。表面は硬くざらざらとしています。非常に蒸れに弱く、夏越しの難易度は高め。いくつもの園芸種が生み出されており、緑色の肌に白っぽい繊毛をまとった「銀の卵」などが人気です。クーペリー
ヘラ状の肉厚な葉を中心から重ねるように生長します。色は青磁色で葉先の方に薄く模様が入ります。生育はゆっくりですが、あまり手がかからないので初心者でも育てやすいでしょう。松虫
丸っこい肉厚な葉を群生させる小型種です。緑の葉は紅葉時期に黄色っぽく変わり、葉先はピンクに染まります。アドロミスクスの中でも特に葉が落ちやすい種類ですが、その分根付きやすいので簡単に増やすことができます。
永楽(天章、クリステイタス)
春秋型のアドロミスクスが多い中、永楽は秋から冬にかけて生長する冬型種です。ヘラ状の葉には細かい毛が密生し、フリルのように波打つ葉先が特徴。色は鮮やかな緑色です。日に焼けると葉先が赤く染まり、春になると白い花を咲かせます。神想曲
葉は笏(しゃく)のように細長くて肉厚。表面に白い産毛が生えており、葉先がウェーブしている姿は永楽似です。薄緑の葉は寒くなると黄色っぽく紅葉します。生長すると茎から根っこのような毛をたくさん生やし、奇妙ですが非常に見応えがあります。ヘレイ(ヘレー)
ラグビーボール型の葉に無数の突起を生やし、群生して生長するヘレイ。年中緑色の種類はグリーンボールとも呼ばれています。株は生長しても8cm程度と小さく、開花時期になると薄いピンクの花を咲かせます。レッドドリアン(レッドボール)
ヘレイの中でも秋口になって赤く染まるタイプはレッドドリアンと呼ばれています。まさに赤いドリアンのごとく、ゴツゴツとした突起に覆われた赤い葉が特徴です。
亀の卵
鮮やかなグリーンの葉に赤褐色の斑点模様が入ります。葉はコロンと丸く、さながら亀の卵のよう。セダムの品種「緑亀の卵」とは別物です。緑の卵
ぷっくり卵形をした緑色の葉を付ける緑の卵。新芽はつるんとした質感ですが、生長するにつれて白っぽい粉をまとうようになります。茎が長くなったら切り戻して増やすとよいでしょう。
天錦章
笏よりは厚く扇よりも細い、台形の葉が特徴です。クーペリーや永楽と同様、葉先にウェーブがかかり、緑の肌には茶色っぽい模様が入ります。トリギナス
白っぽい肌に赤く鮮やかな紋様が入り、非常に美しいコントラストを描く人気種です。高温多湿は苦手ですが、光量不足になると色が薄くなってくるので、遮光しながらたっぷり日に当ててあげましょう。
フィリカウリス
鷹の爪のように全体的にぷっくりと太っており、先端にかけて細くなります。フィリカウリスは種類が豊富。白っぽい肌の「フィリカウリスシルバー」や緑の肌に赤い模様が入る「フィリカウリスレッドエッグ(赤い卵)」、ほかの種よりも細長い「フィリカウリススレンダーレッドスポット」などがあります。
アドロミスクスの育て方
栽培カレンダー
- 生育期:4〜6月、9〜11月
- 休眠期:7〜8月、12〜3月
- 植え付け・植え替え:4〜5月、9〜11月
- 葉挿し・株分け:4〜5月、9〜11月
- 開花:8〜9月
- 肥料:4〜5月、9〜11月
日当たり・置き場所
アドロミスクスは日光を好みます。明るい日陰でも育ちますが、日照不足だと葉が落ちたり、徒長の原因になったりするため、一年を通してよく日に当てて育てましょう。置き場所は日当たりと風通しがよく、雨の当たらないベランダや軒下などがおすすめです。真夏や冬場を除き、戸外で管理したほうが丈夫で引き締まった株に育ちます。真夏は強い日差しと高温多湿を避け、室内で遮光しながら管理します。秋になってからいきなり戸外で直射日光に当ててしまうと、葉焼けを起こすことがあります。外に出しておく時間を1日数時間から少しずつ伸ばし、徐々に慣れさせてあげましょう。
室内で育てる場合
室内で育てる場合、日当たりの良い南向きの窓辺がベスト。レース越しに日光に当てましょう。エアコンの風が吹き付けると葉が乾燥してしまうので、風が直接当たらないよう工夫が必要です。水やり
生育期の4〜6月と9〜11月は、土の表面が乾いてから数日後、鉢底から水が流れるまでたっぷりと水やりします。目安としては1~2週間に1回程度です。もともと乾燥した砂漠に自生しているアドロミスクスは多湿な環境が苦手です。ウォータースペースが大き過ぎると土が乾きにくく、表面が乾いていても中はまだ湿っていることもあるので注意しましょう。また、水やり後は受け皿の水を捨て、水を溜めないようにします。
梅雨明けごろからは徐々に水やりを控え、休眠期の7〜8月は断水気味にします。ただ、株が乾き過ぎないよう、月1回くらいは軽く水やりをしましょう。気温の高い日中の水やりは鉢内が蒸れて根腐れを起こす原因になるため、朝や夕方などの涼しい時間帯に行ってください。12〜3月は再び断水気味にし、晴れの日の昼間を狙って軽く水やりします。
※夏と冬は、葉がしわしわになってきたタイミングが水やりのサイン。休眠しているので土の表面が湿る程度に行います。アドロミスクスは葉が非常に落ちやすいので直接葉にかけるのではなく、株元や鉢の縁の方に水を注ぎましょう。
夏越し
アドロミスクスの失敗原因で多いのが夏場の高温と蒸れです。最初は葉が変色し、やがて柔らかくなって溶けるように腐ってしまいます。高温多湿を防ぐには、遮光と風通しが大切です。戸外で管理する場合、遮光ネットや寒冷紗などで覆って直射日光を避けつつ、なるべく涼しくて風通しが良く、雨がかからない場所に置きましょう。冬越し
ある程度の寒さには耐えられますが、霜や雪に当てると株が枯れてしまいますし、氷点下では凍ってしまうことがあります。気温が5℃を下回るようになったら室内に取り込み、特に冷える夜は窓際や玄関から離して暖かい部屋に移してあげましょう。外気を遮断できる簡易温室などに入れてもOKです。Q.凍らせてしまったらどうする?
株をうっかり凍らせてしまっても、根さえ生きていれば春ごろに新芽が出てくる可能性があります。ブヨブヨになった部分は元に戻らないのですべてカットし、暖かい部屋に避難させたらあとはじっくり見守ってあげてください。カチカチに凍ってしまった株も同様に、暖かい場所に移して自然解凍しましょう。そのまま枯れてしまうこともありますが、運がよければ持ち直す可能性があります。ただし、ドライヤーや暖房で無理やり温めようとするのはNG。組織細胞が壊れてダメになってしまいます。冬は翌日の天気予報を注視して、しっかり寒さ対策を取ることが大切です。温度
5℃以上肥料
元肥だけでも十分育ちますが、生長期の4~5月、9~11月には緩効性の固形肥料を少量、もしくは薄めた液体肥料を与えても構いません。用土
アドロミスクスに限らず、多肉植物には基本的に水はけのよい土を用います。市販のサボテン・多肉植物用の土が手軽ですが、水やりの頻度や栽培環境に合わせて自分でブレンドするのもおすすめ。より排水性を上げるなら赤玉土、鹿沼土、軽石、くん炭などを混ぜます。アドロミスクスの植え付け・植え替え
購入した苗は黒いビニールポットに植えられていることがほとんどです。ビニールポットは長く栽培するためのものではなく簡易用。そのままだと土が蒸れたりするので、ポットから取り出して新しい鉢に植え付けてあげましょう。アドロミスクスは葉が落ちやすいので、移動中などに間に落ちてしまった葉は葉挿しにて殖やすのがおすすめです。植え替えは鉢が小さくなったタイミングで行います。時期は生育期の春先か秋、頻度は2~3年に1回程度が目安です。植え替えせずに何年も同じ鉢で育てていると、用土が痩せて水はけも悪くなり、根腐れや病気の原因になってしまいます。また、株のサイズに対して鉢が大き過ぎると、過湿による根腐れを起こしやすくなります。鉢は株に合った大きさを選び、植え替え直後の水やりは控え、数日経ってから水やりを再開してください。
アドロミスクスの殖やし方
11月まで可能ですが、気温が下がると根の生長が鈍るので、9~10月の秋ごろがベストです。葉挿し・挿し木
切り口を2~3日乾かしてから、葉や茎の付け根に少し土が被るくらいにして置いておきます。枝を切り取る際は菌の進入を防ぐため、消毒済みの清潔なはさみやカッターを使いましょう。はじめ3日くらいは水やりせずに管理し、葉が乾いていれば霧吹きで土を湿らせます。葉挿しと挿し木どちらも成功率は高めですが、葉挿しは芽が出るまでにけっこう時間がかかるので挿し木のほうがおすすめ。新芽が出たら新しい土に植え替えましょう。