今回は、トマトの品種の分類やその特性について解説します。
トマトの歴史と種類
トマトの原産地は、南アメリカの北西部にある高原地帯(ペルー、エクアドル)とされています。15世紀末以降にヨーロッパにもたらされましたが、実際に食用とされたのはしばらく経ってからのことでした。生食用から加工用に用いられるようになるとトマトは急速に普及し、世界各地に広がっていきました。ちなみに、日本に初めてトマトが入ってきたのは江戸時代で、食用として普及し始めたのは明治末ごろからです。
世界中で品種改良が進められ、現在では8,000種以上の品種が存在するといわれています。
「桃色系」と「赤色系」
トマトの品種を色で大きく分けると、「桃色系」と「赤色系」の2つがあります。日本で栽培されている生食用の品種の多くは、桃色系のものが利用されています。果皮が薄くて無色透明、クセや酸味が少ないのが特徴です。
一方、ミニトマトやミディトマト、加工用トマトなどでは、赤色系の品種が利用されています。果皮が厚くて黄色や赤色に着色しており、酸味や甘みが強いのが特徴です。
それ以外にも、ミニトマトを中心に橙色系品種や黄色系品種など、多様な品種が存在しています。
「夏型」と「冬型」
トマトによって実の大きさや形、味などが異なるのはもちろんですが、違いはそれだけではありません。たとえば同じ大玉系トマトの品種でも、肥大が進みやすいもの、着果数が多いものなどがあります。なかでも、背丈や葉の大きさなど草姿の違いによって「夏型タイプ」と「冬型タイプ」の2種類に分類されますので、それぞれの違いをご説明します。
夏型タイプ
「夏型タイプ」は、日中の光線が強い時期に生育期を迎えるので、葉の幅が広く大きめで、葉と葉の節間が短いのが特徴です。これは、強い日中の光線を少しでも遮り影を作りやすくするためです。
私が栽培している大玉トマトのりんか409は、このタイプです。
冬型タイプ
一方、「冬型タイプ」は、葉の幅が狭くて小さく、節間が長いのが特徴です。葉が小さい方が、実の方に多く光線を取り込むことができますよね。
ハウス桃太郎やCF桃太郎はるかなどがこのタイプです。
ただし、同じ桃太郎シリーズの品種であっても、夏型と冬型両方が存在するなど、シリーズごとに明確に分かれているわけではありません。
重要なのは品種の特性をつかむこと
品種のタイプによって生育にも違いがあり、「夏型タイプ」であれば、吸肥力が強く夏の暑さにも負けない体力があるのですが、反面、株が暴れやすく過繁茂になることもあります。いずれにせよ、その品種の特性をうまくつかんでおくことが必要です。
私が実際に栽培している品種の特徴
トマトは品種によって特徴が異なりますので、栽培する際にも追肥や灌水のタイミングなど工夫が必要です。私が実際に栽培している2品種の特徴についてご紹介します。
りんか409
私がメインで栽培しているトマトは、サカタのタネが販売している「りんか409」という夏型タイプのトマトです。桃太郎と同じくらい流通しているトマトなので、誰でも一度は口にしたことがあると思います。
実は硬めで日持ちが良く糖度も安定して高いのですが、初期の草勢がやや強めで過繁茂になりやすく注意が必要です。
耐病性、収量、味のバランスが良いことから、プロのトマト農家にはおすすめの品種といえます。
フルティカ
フルティカはタキイ種苗が販売している中玉サイズのトマトです。実の重さは40g程度とピンポン玉くらいの大きさで、同じくらいの果重のトマトの中では糖度は最高クラスです。
酸味が控えめであることから甘さを感じやすく、フルーツのような甘さを好む方にとっては人気の高いトマトです。
年間を通じて栽培することが可能ですが、初期の草勢が強いので過繁茂にならないよう、元肥は控えめにする必要があります。
実際私も、窒素過多が原因で起こる異常主茎を何度も発生させてしまいました。
品種の特性を見抜いて生かす
トマトの品種が夏型か冬型かによって、栽培する際のポイントが異なります。「夏型タイプ」なら、元肥をやや控えめにしたり少量多灌水にしたりすることなどを押さえておくべきでしょう。
ただ、タイプが変わっても基本的な育て方は同じです。品種ごとの特性をよくつかみ、その特性を生かした栽培を行うことが大事です。
ご自身の栽培時期や面積、あるいは好みに応じて冬型か夏型かを判断し、その特徴に合わせて栽培を工夫するように心がけましょう。