ここでは、山梨県で農家を営み2019年に千葉県千葉市でもトマトのハウス栽培を始めた、有限会社アグリマインド 社長 藤巻公史さんの話を交えて、千葉市での就農メリットをお伝えします。
千葉県の農林水産物は?
千葉県といえば落花生のイメージが強いですが、農林水産業でほかに生産量の多いものに何があるのでしょうか。千葉県は全国4位の農業県
千葉県の農業産出額(平成30年)は4,259億円で全国4位。普段目にする野菜の大半の品目が作られています。野菜も多く栽培され、全国の産出額の86%を占める落花生をはじめ、産出額全国1位の農産物は11品目も!全国第1位の品目
品目 | 産出額(億円) | 全国に占める割合 | 他県の順位 |
ネギ | 173 | 12% | 2位 埼玉 3位 茨城 |
日本ナシ | 131 | 18% | 2位 茨城 3位 鳥取 |
ホウレンソウ | 90 | 10% | 2位 埼玉 3位 群馬 |
落花生(殻付き) | 99 | 86% | 2位 茨城 3位 神奈川 |
サヤインゲン(未成熟) | 55 | 19% | 2位 福島 3位 北海道 |
カブ | 46 | 29% | 2位 埼玉 3位 青森 |
マッシュルーム | 22 | 36% | 2位 山形 3位 茨城 |
春菊 | 21 | 13% | 2位 大阪 3位 茨城 |
かいわれ大根 | 8 | 42% | 2位 福岡 3位 北海道 |
三つ葉 | 13 | 17% | 2位 愛知 3位 茨城 |
ストック | 7 | 39% | 2位 山形 3位 鳥取 |
高級魚の漁獲や貝・海藻の養殖も
千葉県は東京湾、太平洋に面し、漁業も盛ん。スズキ、コノシロ、伊勢エビ、アワビ、マイワシなどの水揚げ量を誇る以外に、アサリやバカガイなどの貝類、アナゴ、ノリの養殖も盛んです。また畜産は、8代将軍の徳川吉宗が白牛を輸入して嶺岡一帯(現在の南房総市大井)で飼育し、現在のバターのようなものを製造したことが起源とされ、現在も千葉県は肉・卵・牛乳の生産地となっています。
千葉市で農業をする利点は?
出荷先もさまざま、輸送費も抑えられる
千葉市は首都圏にあり、大消費地東京に近いという強みがあります。農産物の出荷はスーパーなどの卸先のほか、東京都内のマルシェに出品したり、高級なレストランに卸したりとさまざまな可能性も広がります。そのうえ、輸送費のメリットがあります。アグリマインドの藤巻さんによると「まだ数字は出していませんが、実感として山梨県から輸送するときの費用より30~50%程度抑えられる感触です」だそうです。
水に困らない!
農業に大事な水。千葉県の農業用水は、約90%を河川から取水していますが、さらに、数十メートル掘れば井水が出るところも多いようです。ちなみに、千葉県で利用されている生活用水・工業用水・農業用水のうち、利用量が多いのは農業用水で、全体の約80%にものぼります。
育苗業者が千葉県に多い
藤巻さんが千葉県で農業を始めるにあたって調べたところ、育苗業者が多いことを知ったそうです。畑をやっていくうえで、これは大きな力になりました。「温暖な気候だから、苗を育てるのに暖房費を抑えられるからじゃないかと思っています」と藤巻さん。スタッフが集まりやすい
千葉市は人口も多く、スタッフを雇いたいときも人が集まりやすいというメリットが。藤巻さんの場合も、タウンワークに求人を出したところすぐに必要な人数が集まりました。現在の従業員は圃場の近隣に住んでいて、従業員にとっても通勤の負担が少ないようです。千葉市で新規就農したい!そんなときは
「ちばで農業を始めるための新規就農ガイド」
千葉県の「ちばで農業を始めるための新規就農ガイド」を見てみましょう。情報収集・ビジョンの決定→知識・技術の習得→就農準備→就農の4ステップで、見当すべきこと、学ぶべきこと、資金確保、土地確保などの手段や支援制度などのお役立ち情報が満載です!農林水産業関連の金融・共済・補助事業
千葉県で受けられる農業のための支援には次のようなものがあります。千葉県強い農業づくり交付金等交付
農林水産省の「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」に基づいて行う農業に対しての経費の一部が交付されます。参考:「千葉県強い農業づくり交付金要綱及び実施要領等について」
農林水産省「強い農業・担い手づくり総合支援交付金(先進的農業経営確立支援タイプ・地域担い手育成支援タイプ)(令和元年度)」
産地パワーアップ事業
農林水産省の「産地生産基盤パワーアップ事業」は、農業従事者が高性能な機械・施設を導入する際の支援。窓口は各自治体となります。
参考:千葉県「産地パワーアップ事業」
農林水産省「産地生産基盤パワーアップ事業関係情報」
農業経営収入保険
自然災害や農産物の価格の低下などで売上が減少した場合に、減少分を補填する保険も平成31年1月に始まっています。参考:千葉県「収入保険制度の導入及び農業共済制度の見直しについて」
農林水産省「収入保険制度の導入及び農業共済制度の見直しについて」
千葉市でトマトのハウス栽培を始めての実感
2019年から、千葉市でトマトのハウス栽培を始めたアグリマインドの社長藤巻公史さんに、千葉市での農業についてうかがいました。山梨県北杜市で農業を始めたアグリマインド
アグリマインドは、山梨県北杜市でオランダの最新セミクローズドタイプのハウスを使ってトマトを栽培している農業法人。現会長の藤巻眞史氏はもともとリサイクル業を営んでいましたが、従業員の高齢化に伴い、再雇用の受け皿として農業ができないか、と考えたことが就農のきっかけだったと言います。最初は、大豆、アスパラガスを育てていましたが、販路の確保が難しく、豆腐などの加工品を作って収入を得ていました。
転機となったのは、今から十数年前。大手食品会社が北杜市に自社農園を作る計画があったのですが、農地として予定していた場所で遺跡が出てしまったため撤退。北杜市がその食品会社に再度オファーしたもののその食品会社は自社での農園を作ることはしない方向に動いていたため、藤巻さんにトマト農園の話がきたそう。
北杜市の圃場は約19,000平方メートル。1反あたりのトマト生産量は60t。ほぼ全量を大手食品会社に生食用として卸しています。
社長の藤巻公史さんは、途中からアグリマインドの事業に参加しています。
千葉での生産を始めるきっかけ
2019年に、アグリマインドは千葉県千葉市でもトマトのハウス栽培を始めることになりました。これは、偶然が重なってのことだったのだそう。
千葉市に2カ所、6,000平方メートルと4,000平方メートルの圃場がありますが、どちらも元々は大手商社子会社が経営していたもの。事情があって、自社経営ができなくなったため、藤巻さんに引継がないか、という依頼がありました。そんなとき、たまたま九州に出張が入り、羽田から近いからということで立ち寄ってみたことからトントン拍子に話が進みました。
2カ所のハウスは建物リース契約で、栽培業務を委託されている状況。収穫したトマトは全量その大手商社子会社に納めています。
千葉市でのスタート時は、元々あったハウスをそのまま使い、栽培方式を変えただけだったので投資額は約2,000万円。千葉市のスタートアップ補助も受けることができました。
千葉市は人が暖かい!
従業員は、以前からから引き続き従事している社員2名に加えて、3名を新たに雇用。さらにパートタイム従業員も募集しました。仕事中のハウスの中を覗かせてもらったところ、ラジオの音が流れ、従業員同士も和気あいあいと仕事をしている様子でした。
「千葉は人が温かい。従業員にも恵まれていますが、この周辺に住んでいる人たちも暖かくすんなりと受け入れてくれました」と藤巻さん。
千葉県立農業大学校で本格的に農業を学ぶ
農業を一から勉強して就農するなら、千葉県立農業大学校への進学も考えてみては?
農業短期大学校と農業経営短期大学校が併合され、平成24年に専修学校としてスタートしました。先進農家などへの派遣もあり、実践的な農業を学べるほか、模擬会社を運営することで、生産から販売の過程と商品開発を総合的に学ぶことができます。
新規で就農を希望する人や、既に農業していて新たな部門を開発していきたい人向けの講座も開催されています。参考:「千葉県立農業大学校」
首都圏の台所、千葉市での就農を!
千葉市は、賑やかな市中から1本道を入ると田畑が広がります。都心へのアクセスもよく、生活にも便利。農産物の出荷先の選択肢も多いので、おすすめです。まずはいろいろ調べてみてくださいね。
取材協力
アグリマインド(山梨県北杜市・千葉県千葉市)
山梨県北杜市でラウンドトマトと高リコピントマト、千葉県千葉市でミニトマトを、最先端の設備を使って栽培。従業員はすべて合わせると90名近く。海外からの農業実習生も受け入れています。明野菜園 有限会社アグリマインド:http://agrimind.co.jp/akenogreenfarm