マルチャーとは
苗の定植に欠かせないマルチシート、そのマルチシートを張る道具を一般的にマルチャーといいます。マルチを張るだけといっても、実際は畝を立て、マルチを畝にかぶせ、畝のサイドの土をマルチの端に盛るという3つの工程があり、畝の数によっては大変な作業になります。マルチ張りの効率化や機械化は農繁期の作業や体力消耗軽減に直結するので大事な選択といえます。
マルチャーの種類と主なメーカー
マルチを張る道具は大きく分けて表の4種類です。基本的には畑の面積に応じて選択します。栽培面積 | 栽培品目数 | 30m畝作業時間 | 主要メーカー | 新品価格 | |
一人けん引タイプ | 〜500坪 | 中〜小品目 | 30分 | 槍木産業 | 1〜2万円 |
二人けん引タイプ | 〜1500坪 | 中〜小品目 | 20分 | アグリテクノ矢崎 | 5〜7万円 |
管理機タイプ | 〜2000坪 | 多品目 | 10分 | ヤンマー、ホンダ | 10〜15万円 |
トラクタータイプ | 〜4000坪 | 中〜小品目 | 5分 | アグリテクノ矢崎、ヤンマー | 10〜20万円 |
1〜300坪|自作する
畝が10m程度であればヒモを両端に結んだイボ竹やハウス用単管パイプをビニールマルチの軸にしてけん引する自作マルチャーでOK。500円以下でできます。300〜500坪|一人けん引タイプ
自作は面倒という場合、市販の一人けん引タイプのマルチャーがおすすめ。500〜1500坪|二人けん引タイプ
畑の広さが1000坪以上になると畝が長くなるので、人手があれば二人でけん引するタイプを。土寄せも同時にできて作業も楽になります。ただ、息が合っていないとうまく張ることができないという難点があります。私の知り合いで、夫婦げんかの火種になるという理由でけん引タイプを捨ててトラクターマルチャーを買ったという方もいたほどです。アグリテクノ矢崎 人力用マルチャー MR-3B
重量 | 25kg |
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対応フィルム幅 | 80~180cm ※アタッチメント(オプション)で300cmまで対応 |
1500〜2000坪|管理機マルチャー
管理機にマルチャーを接続したもので、管理機は本体と呼ばれ、マルチャーはロータリー、畝の整形機と土寄せ盤がセットになったものを指します。有機栽培で多品目の野菜を作りたい場合は、畝が30mほどの長さで、品目ごとに細かく畝立てやマルチ張りの作業をすることが多く〔spacekey_affiliate_shortcode key=3 title
ホンダ 平畝整形マルチセット 11421
適合本体機種 | F530LB+LB用HRロータリー(F510LB/710LB/805) |
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用途 | 平畝内盛整形マルチセット |
適応フィルム幅 | 95〜150cm ※この商品に管理機本体は含まれません |
2000〜4000坪|トラクターマルチャー
一般的なトラクターのロータリー(本体)にマルチャー(成型機と土寄せ盤)を接続したものです。通常の耕耘作業時はマルチャーを上げた状態で運転し、マルチ張りや畝立ての作業時のみマルチャーを下ろして使います。トラクターのアタッチメントについてはこちらの記事をチェック!
マルチャーの選びの落とし穴
管理機タイプとトラクタータイプは本体とマルチャーが別々に販売されています。どちらの場合でも本体を購入しないことにはマルチャーは機能しません。本体を持っていない場合は本体の購入価格も予算にいれておく必要があります。また、マルチャーの適応フィルム幅が90cmの管理機マルチャーでは90cmより幅の広いマルチを敷くことはできません。普段の畝幅や使っているトンネル支柱の長さとのマッチングも考慮して、マルチャーの適応フィルム幅を決めるようにしてください。フィルム幅の調節が可能なマルチャーもあります。
マルチャー購入のポイント
管理機・トラクター用マルチャーはほかの道具より高額なものになるので間違いやトラブルのないよう注意が必要です。不安な方は、近くの農機具屋さんに相談して購入するとよいでしょう。新品を買う場合はセット購入
管理機・トラクター用マルチャーを新品で購入する場合は、本体とマルチャーがセットで販売されているものや同じメーカーを選ぶようにしましょう。本体とマルチャーが違うメーカーの場合、接続ができなかったり、特殊な部品が必要になることがあります。すでに持っているトラクターにマルチャーを付ける場合は、本体を買った農機具屋さんに希望するマルチャーが接続できるか確認してから購入しましょう。クボタ耕運機 アタッチメント 多菜マルチ95(平うね)
対応機種 | クボタ耕耘機FTR70、FTR90 |
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対応フィルム幅 | 95cm ※こちらの商品は耕うん機本体は含まれません |
中古を買う場合は必ず試運転!スポンジは初心者でも交換も可能
マルチャーは故障しにくい一方、操作のバランスや調整が難しく、使っている人の癖が出やすい農機で、中古での購入が難しいといえます。中古を購入する際は、必ず試運転するようにしましょう。また、両サイドの車輪についているスポンジは一番劣化しやすいので、中古のものでははがれてしまっていることがあります。ただし、初心者でも簡単に交換できるので、なくても心配する必要はありません。Yahoo!オークションでマルチャーをチェックする
マルチャー選びのベストタイミング
なんとなく自己流でマルチを張ってきたという方も多いかと思いますが、栽培面積が広くなるときや体力の衰えを感じたときはマルチ張りの効率化を考えるベストタイミングです。知らずに自己流を続けてしまうと、思いのほか苦労することに…。私が畑を5反から倍の1町へ拡大したとき、マルチを張る本数は年60本から180本以上に増えました。一方で、マルチを張る期間は春と秋のそれぞれ1カ月間ということは変わりませんでした。つまり同じ期間に倍以上のマルチを張らなくてはならず、少し高い出費でしたが人力けん引から管理機マルチャーを導入しました。もしそのままの張り方を続けていたら、ただただマルチ張りに追われるだけでほかの作業ができず、増えた面積に見合った生産量を上げることはできなかったと思います。
規模拡大または体力の低下は畑をやっていれば誰しもが経験することです。思い当たるという方はここでご紹介したマルチャーを参考にマルチ張りの効率化や機械化を検討してみてはいかがでしょうか。