ご当地品種もいろいろ!里いもの種類とおすすめ料理

秋の味覚として多くの人に愛される「里いも」。里いもと一口に言っても、実はいろんな種類があるのをご存知ですか?この記事では里いもの旬や栄養素など基本情報から、里いもの品種を「子いも」「兼用」「親いも」「ずいき用」の4つの分類ごとに詳しく紹介します!


出典:写真AC
「石川早生」「土垂」「セレベス」「たけのこいも」…あまり耳慣れない名前ですが、じつはこれらは、私たちがふだん食べている里いもの品種名です。里いもは縄文時代に日本に伝わったといわれ、とても栽培の歴史が古い作物。全国各地で、その土地の環境に合った在来品種が育てられ、大切に受け継がれてきました。ひと口に里いもといっても、品種によって形や風味、食感は少しずつ異なり、向いている調理も違います。いろいろな里いもと、それぞれのおすすめの食べ方をご紹介します。

1. 里いもとは?どんな野菜?

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里いもは、インド東部からインドシナ半島などの熱帯アジア原産のサトイモ科の野菜です。春に種いもを植えると、熱帯植物らしい大きな葉を広げて生長し、秋に収穫を迎えます。収穫するいもは、根ではなく茎が太ったもので、まず種いもの上に親いもができ、さらにその周りに子いも、孫いもができて、放射状に大きくなるのが特徴。品種によっては、親いもだけが大きくなるものもあります。

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里いもの種類は、利用する部分によって、子いもを主に食べる「子いも用品種」、親いもと子いもの両方を食べる「兼用品種」、親いもを食べる「親いも用品種」の3つに分けられます。また、いもではなく「ずいき」と呼ばれる葉柄(ようへい)を収穫する専用品種もあります。

2. 注目の栄養素

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里いもの栄養素として注目されているのが、特有のぬめりの元であるガラクタンという成分。脳細胞を活性化する作用や免疫力を高める作用があり、認知症やガンの予防効果が期待されています。また、血中コレステロールや血圧を下げる働きがあり、生活習慣病の予防にも役立ちます。

このほか、イモ類の中ではカリウムを最も多く含み、血中のナトリウムを排出し、高血圧を予防する働きがあります。

3. 里いも品種その1「子いも用品種」

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親いもの周りにできる子いも、さらにその周りにできる孫いもを主に食べる種類で、生長の様子から、子孫繁栄の縁起物としておせち料理などにも使われます。里いも特有のぬめりが強く、そのまま煮物などにすると汁にねばりけが出たり、味がしみ込みにくくなったりします。きれいに仕上げたいとき、しっかり味をつけたいときは、皮をむいて切ったあとに多めの塩をまぶし、水洗いしてぬめりを取りましょう。それでも取れない場合は、熱湯で3〜4分下ゆでします。

土垂(どだれ)

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収穫量が多く、関東地方を中心に全国的に栽培されていて、流通している里いもの多くがこの品種です。お尻が丸くふくらんだラグビーボール型で、ぬめりがしっかりと感じられるのが特徴。煮っころがしや豚汁など、幅広い料理に向き、東北地方の秋の風物詩「芋煮」にもよく使われます。

石川早生(いしかわわせ)

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大阪で古くから栽培されていた品種で、手のひらに収まる小ぶりのサイズと、ころんと丸い形が特徴。「早生」の名前どおり収穫までの期間が短く、早い地域では夏に出荷がスタートします。皮をつけたまま丸ごと蒸して、塩や味噌だれを添えた「きぬかつぎ」が定番の食べ方で、石川早生のことを「きぬかつぎ」と呼ぶこともあります。

大野芋

福井県大野市周辺で古くから栽培されている品種で、味のよさともちもちした食感が人気。肉質がかためで、長く煮込んでも煮崩れしにくいのが特徴です。しょうゆ、砂糖、みりんで照りを出して煮た「ころ煮」は、産地の定番料理となっています。

親いもは食べられる?

里いもの中心にできる大きな親いもは食べごたえがありそうですが、子いも用品種の場合、あまり食用にはされません。繊維が多くてかたいため、調理には少し工夫が必要です。まずは茎に近い部分を大きめに取り除き、皮をむいて食べやすくカット。塩をまぶしてから水洗いしてぬめりを取り、やわらかくなるまで蒸します。圧力鍋を使えば大幅に時間短縮も可能。やわらかくなった親いもは、普通の里いもと同じように煮物などに使えます。つぶしてコロッケやポタージュにしたり、グラタンにしたりと、洋風レシピもおすすめですよ。

4. 里いも品種その2「兼用品種」

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親いもと、その周りにできる子いもの両方を利用できるお得な品種。代表的なものに、お正月料理に使われる八ツ頭があります。子いも用品種に比べるとぬめりが少ないため、味がしみ込みやすく、煮るとホクホクした食感が楽しめます。

セレベス

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インドネシアのセレベス島(スラウェシ島)原産の里いもで、芽の部分が赤いことから「赤芽いも」という呼び名もあります。ほかの品種に比べてぬめりが少なく、煮物やおでんにするとほっくりとした仕上がりに。油との相性もよく、コロッケやスティック型に切って素揚げにすると、ジャガイモとはまた違ったおいしさが楽しめます。葉柄もアクが少なく、ずいきとして利用できます。

八ツ頭(やつがしら)

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1つ500gほどにもなる大きな里いもで、親いもと子いもが合体した独特の形から「八ツ頭」という名前が付きました。末広がりの「八」の字が付くことから、縁起のよい食材としてお正月料理の定番になっています。形がいびつで皮がむきにくいのが難点ですが、ほとんどぬめりがないため、下ゆでなどの手間はかかりません。鶏肉やにんじん、しいたけなどと一緒に煮るお煮しめのほか、だしを効かせた塩味の煮物や、オーブン焼きなどのシンプルな料理で味わうのもおすすめです。葉柄もずいきとして食べられます。

海老芋

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京都の伝統野菜の一つで、江戸後期に青蓮院宮が「唐芋(とうのいも)」という里いもを長崎から持ち帰り、京都で栽培したのが始まりといわれています。栽培中に土寄せを繰り返すことで、土の重みでいもが反り返り、表面の縞模様とあわせて海老のように見えることから、「海老芋」と名付けられました。兼用品種ですが、海老に似ているのは主に子いもです。炊き合わせや揚げだしにすると、特有のもっちりした食感が楽しめます。戻した棒ダラと海老芋を炊き合わせた「いもぼう」は、京都の名物料理の一つになっています。

媛かぐや

海老芋と、親いも専用品種のたけのこいもの交配によって生まれた、愛媛県のオリジナル品種。長さ30cm以上にもなる大きな親いもと、その周りにできる子いもや孫いも、さらに葉柄も食べられるお得な里いもです。さつまいもに近いホクホクした食感で、煮物などの一般的な調理のほか、産地ではアイスクリーム、モンブランといったデザートへの加工も行われています。

5. 里いも品種その3「親いも品種」

親いもだけが大きくなる、ちょっとめずらしいタイプの里いも。代表的なものに「たけのこいも」があります。

たけのこいも(京いも)

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「京いも」とも呼ばれますが、主な産地は宮崎県。長さ20cm以上、大きなものでは40cmほどにもなり、見た目が掘りたてのたけのこに似ていることから、こう名付けられました。里いも特有のぬめりが少なく、煮崩れしにくいので、煮物にするときれいに仕上がります。ホクホクした食感で、コロッケや揚げだしなどもおすすめ。

6. 里いも品種その4「ずいき用品種」

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「ずいき」は里いもの葉柄のことで、金沢の「赤ずいき」、奈良県の「白ずいき」などが地域の伝統野菜として知られています。セレベスや八ツ頭の葉柄もずいきとして食べられますが、ずいき専用の品種もあります。繊維が多くシャキシャキした食感で、酢の物や和え物、煮物などに利用できます。ただし、アクが強いため、調理前にはきちんとアク抜きをしてください。

 

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ずいきの皮をむいて乾燥させた「いもがら」は昔ながらの保存食品で、味がしみ込みやすく、味噌汁や煮物などに利用されます。

はすいも

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太く立派な葉柄を収穫する品種で、土の中のいもは大きくなりません。春に苗を植え付けて、収穫は初夏から秋にかけてがピークとなります。葉柄の断面は空洞の多いスポンジ状で、穴がたくさんあいた様子がハスに似ていることから、こう呼ばれているようです。食べ方は皮をむいて薄切りにし、酢水に浸けるか熱湯で1分ほどゆでてアク抜きをしてから、おひたしや和え物にするのが一般的。スポンジ状なので味がしみやすく、軽く塩もみするだけでもおいしく食べられます。また、厚めに切ってきんぴらなどにすると、サクサクの歯ごたえが楽しめます。

7. 里いもは、日本人にとって特別な野菜

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滋養に富み、縁起のよい食材として古くから愛されてきた里いも。お正月料理はもちろんのこと、里いもの収穫時期と十五夜が重なることから、中秋の名月を「芋名月」と呼び、お月見に里いものきぬかつぎを供えて豊作を祝う風習も残っています。身近な品種や食べ方は地域によって違いますが、この機会に、ぜひいろいろな里いもに目を向けてみてはいかがでしょうか。

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Akiko Isono
Akiko Isono

編集者兼ライター。家庭菜園・ガーデニング専門誌の編集に8年間携わり、現在は雑誌やムック、WEBを中心に、植物、農業、環境、食などをテーマとした記事を執筆。好きな野菜はケールとにんじん。