- ライター
- Akiko Isono
編集者兼ライター。家庭菜園・ガーデニング専門誌の編集に8年間携わり、現在は雑誌やムック、WEBを中心に、植物、農業、環境、食などをテーマとした記事を執筆。好きな野菜はケールとにんじん。…続きを読む
出典:PIXTA
江戸時代から愛されてきた日本の花・サクラソウ。早春に芽吹くことから春を告げる花として知られ、白やピンク、紫色などの美しい花色と、しっとり落ち着いたたたずまいが魅力的です。寒さに強く、庭植えでも鉢植えでも育てられ、一度植えると毎年のように花を楽しむことができます。人気のサクラソウ品種と、栽培のポイントをお伝えします。
1. サクラソウとは?どんな植物?
出典:写真AC
サクラソウはサクラソウ科サクラソウ属の植物で、日本、朝鮮半島、中国東北部などの東アジアが原産です。漢字では「桜草」と書き、ハート型に切れ込みの入った五弁の花が桜に似ていることから、あるいは、桜と同じ時期に咲くことから名付けられたと言われます。清楚で可憐なその姿から、「初恋」「憧れ」「純潔」などの花言葉があります。
日本では古くから山地や高原、川辺などに自生していて、江戸時代中期には武士階級を中心に、栽培・鑑賞が流行しました。色や形の珍しい野生種を掛け合わせた品種改良が盛んに行われ、愛好者同士がその美しさを競い合ったと文献に記録されています。現在、サクラソウは300以上の品種があり、江戸期に誕生したものも多く残されています。毎年春には、全国各地でサクラソウ展が開かれ、伝統的な品種から現代の品種まで、さまざまなサクラソウを鑑賞することができます。
2. サクラソウとプリムラの違いは?
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サクラソウとプリムラは、どちらも同じサクラソウ科サクラソウ属の植物です。優しい雰囲気のサクラソウと、カラフルで豪華なプリムラは、あまり似ていないようにも思えますが、サクラソウ属の仲間はヨーロッパからアジアまでの広い地域に分布していて、花色や形は品種によってさまざま。改良によって次々と新しい品種が登場しているため、バリエーションはさらに広がっています。
プリムラは「サクラソウ」の名前で出回ることもあり、日本生まれの品種を特に区別する場合には、「日本桜草(ニホンサクラソウ)」と呼び分けています。
3. おすすめのサクラソウ品種
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サクラソウには300を超える品種があり、しっとり落ち着いた白や薄紫色、明るいピンク色、華やかな八重咲き、花びらに縁取りや模様のあるものなど、色も咲き方もバリエーション豊富です。江戸時代から愛好家によって受け継がれてきた品種も多く、和の趣を感じさせる名前にも注目してみましょう。
朝日潟(あさひがた)
日本サクラソウ 朝日潟
江戸末期に作出された品種です。薄ピンク色の花弁に、筆でのせたような紫色が華やか。
・内容:3号(9cm)ポット
紅葉橋(もみじばし)
日本サクラソウ 紅葉橋
淡いピンク色の花に絞り染めのような模様が入ります。羽を広げたような軽やかな姿も魅力的です。
・内容:3号(9cm)ポット
磯牡丹(いそぼたん)
日本サクラソウ 磯牡丹
丸みのある花びらは、外側が紫色、内側は紫の縁取りに中心から白いぼかしが入ります。八重咲き品種ですが、株が充実するまでは一重の花が咲くこともあります。
内容:3号(9cm)ポット
赤蜻蛉(あかとんぼ)
日本サクラソウ 赤蜻蛉
名前の通り、細い茎に赤とんぼがとまったような姿。繊細な切れ込みの入った花弁と、くっきり鮮やかなピンク色が印象的な品種。
・内容:3号(9cm)ポット
緑竜(りょくりゅう)
日本桜草 緑龍(中苗)
群馬県で発見された野生のサクラソウ。緑と紫の入り混じった不思議な花は、花びらが一部ガクのように変化したものです。
舞紅葉(まいもみじ)
日本桜草 八重咲き 舞紅葉
花弁の外側は濃いピンク、内側は細いしま模様の入ったピンクの八重咲き品種。小ぶりですが、フリルのようなかわいい花が咲きます。
・内容:3号(3cm)ポット
神代冠(かみよのかんむり)
日本サクラソウ 神代冠
江戸時代後期から続く品種で、梅のように内向きに咲くかわいらしい姿と、中心がほんのり色づく花色が特徴です。
・内容:3号(9cm)ポット
浜千景(はまちかげ)
日本サクラソウ 浜千景
しっとり落ち着いたすみれ色。花の裏表で濃淡が分かれ、表情豊かな八重咲きサクラソウです。
・内容:3号(9cm)ポット
4. サクラソウの育て方
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サクラソウはもともと、川べりや森の木かげなどに自生する植物で、暑さや乾燥に弱いのが特徴です。庭植えする場合、直射日光の当たる場所や乾燥しやすい場所は避けましょう。ただし、直接雨に当たる場所では花が早く傷んでしまうので、適度に日差しの当たる木の下などが適しています。鉢植えで育てる場合も、雨が直接当たらない明るい場所に置き、水切れに注意しながら育てるのがポイントです。
植え付け
サクラソウは種や株分けで育てることもできますが、初めて育てるなら、市販の苗を購入すると良いでしょう。苗は時期によって、根だけのもの、葉やつぼみの付いたものなど、状態はさまざまです。植え付けは、冬の寒さがゆるみ始める2月中旬から3月中旬が最適期。庭植えの場合は赤玉土や腐葉土を入れ、水持ちと水はけの良い土になるように改良します。鉢植えの場合は、草花用などの培養土を使うのが手軽です。培養土を入れる前に、水はけを良くするための鉢底石を敷きましょう。庭植えも鉢植えも、深植えし過ぎないように注意し、根を土の上に広げながら植え付け、根茎がしっかり隠れるように土をかぶせます。
水やり
鉢植えの場合、土が乾いていたらジョウロでたっぷりと水やりします。特に開花中や乾燥しやすい夏は、水切れさせないように注意してください。冬の間は休眠期に入るため、水やりは控えめにしましょう。庭植えでは基本的に水やりは不要ですが、土が乾き過ぎているようなら、鉢植えの場合と同じように与えます。
肥料
開花前の3月ごろから花が咲き終わるまで、草花用の液体肥料を与えると、花が多く付きやすくなります。液体肥料の使用法や与える量・頻度などは製品によって違うので、パッケージの記載を参照してください。
増し土
サクラソウは、古い根茎の上に新しい根茎ができ、翌年にそこから新しい芽を伸ばします。そのままにすると、新しい根が地上に露出して乾燥してしまうので、これ防ぐために、株元に新しい土を盛り上げる「増し土」という作業を行います。増し土は開花が終わった頃から、成長に合わせて数回行います。
5. サクラソウは自分で増やせる?
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サクラソウは種や株分けによって、自分で増やすこともできます。サクラソウをたくさん咲かせたい方は、次の方法を参考に、ぜひ挑戦してみてください。
種まき
開花が終わった花をそのままにしておくと、丸い実が付き、6月ごろに種が取れます。湿らせた土や砂の中に種を入れ、乾燥させないように注意しながら冷蔵庫で保管します。種まきは翌春の3月ごろが適期。ポリポットや育苗トレイに種まき用の培養土を入れて水で湿らせ、種をまいて、薄く土をかぶせます。その後は日当たりの良い場所に置き、水やりしながら育てます。花を付けるのは翌年の春以降になります。
株分け
株分けは植え付けと同じく2~3月に行います。サクラソウの根茎を掘り上げ、土を落としながら根を軽くほぐすと、自然に株が分かれるので、1芽ずつに分けて枯れ葉や茶色い根を取り除きます。鉢に鉢底石と培養土を入れ、根を土の上に広げるように植え付け、水やりをします。根が乾かないように、株分け後は手早く植え付けるのがポイント。その後の管理は、植え付け後と同様です。
6. 和の趣を楽しむサクラソウ
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古くから日本人に愛されてきたサクラソウは、派手さはないけれど、可憐で和の風情を感じさせるたたずまいが魅力的です。今年はサクラソウの花を眺めながら。春の訪れを感じてみませんか?
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