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農研機構がサツマイモ基腐病の病原菌を検出・同定する新技術を開発【最短約1日】


農研機構が、近年発生が確認され被害が拡大しているサツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の病原菌を検出・同定する新たな技術を開発。リアルタイムPCRによる迅速・高精度診断で、同病の発生域拡大の抑制が期待されます。

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サツマイモ基腐病菌の新しい検出・同定技術を開発

出典:写真AC
農研機構は、近年発生が確認され被害が拡大している、サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の病原菌を検出・同定する新たな技術を開発しました。
この技術を用いると、国内に広く発生する類縁菌と基腐病菌を、迅速かつ正確に区別して検出・同定できます。

深刻な被害をもたらすサツマイモ基腐病

サツマイモ基腐病は、日本では2018年に初めて発生が確認され、現在は九州から東北まで19都県において発生が確認(2021年8月25日現在)されています。
生育中のサツマイモが感染すると、株の地際の茎が黒変し、葉が黄変・赤変して萎凋・枯死するため塊根の収穫ができず、塊根が感染すると種イモから苗を作る苗床でも発生します。

また、感染植物の土壌中の残さが次作の感染源となることから、産地における被害は甚大となり、感染した種苗や罹病残さの移動により、発生域が拡がると考えられており、発生拡大を阻止し、産地を回復する技術の開発が強く求められています。

サツマイモ基腐病
糸状菌(Diaporthe destruens)によるサツマイモの病害で、名前の由来は地際(株元)が黒く腐ることによります。
発病が進むと地下部では塊根がなり首から腐敗し、地上部は枯死します。
感染した種イモも感染源となり、また症状がみられなかった塊根でも貯蔵中に腐敗することがあります。


形態的特徴が似ている「基腐病菌」と「乾腐病菌」

以前より国内の広い地域に、基腐病の病原菌である基腐病菌の類縁種である、サツマイモ乾腐病菌(かんぷびょうきん)も分布しており、主に塊根が貯蔵中に腐敗する被害が知られていました。
一方、基腐病はまだ、国内の限られた地域でのみ発生していますが、生育期にほ場で蔓延し、乾腐病より深刻な被害を産地にもたらしています。
ほ場での防除に加えて、種苗を通じた未発生地域への蔓延防止のためにも、疑わしい症状が発見された場合は、乾腐病と区別して直ちに適切な対応を取る必要があります。

しかし、乾腐病菌と基腐病菌は、菌の形態的特徴などが良く似ており、顕微鏡観察で正しく見極めるためには、菌の分離・人工培養に時間をかける必要があるため、正確な原因究明には2週間ほどかかっていました。

サツマイモ乾腐病(かんぷびょう)
糸状菌(Diaporthe batatas)によるサツマイモの病害で、貯蔵中の塊根を腐敗させるなどの被害が知られています。
20世紀初頭に初めて報告され、日本では本州や九州などで乾腐病菌が確認されています。


最短約1日で、基腐病菌と乾腐病菌を高精度に検出・同定する技術を開発

農研機構では、基腐病菌と乾腐病菌をそれぞれ特異的に検出できる、DNAプライマーを用いたリアルタイムPCR(耐熱性DNA合成酵素を用いて、人工的に特定のDNA断片を増幅する技術)により、最短約1日で基腐病菌と乾腐病菌を高精度に検出・同定する技術を開発しました。

重複感染でも正確に診断できる

基腐病の汚染ほ場で栽培したサツマイモの茎および塊根に症状が出ている場合、基腐病と乾腐病に重複感染していても両者を正確に診断できます。
茎では5~10mmほど、塊根では7mm角ほどの試料を用い、最短約1日で診断できます。

被害の拡大阻止、新たな防除技術開発に期待

この技術を活用することにより、発生を早期に把握して、適切な防除対策を講ずることができて、発生域拡大の抑制につながります。
また、既発生地域の産地を回復するための、新たな防除技術開発のスピードアップが期待されます。

詳しくはこちら
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/143594.html

農研機構
農研機構は食料・農業・農村に関する研究開発を行う機関
https://www.naro.go.jp/


サツマイモの症状から病気を推測


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