東京農業アカデミー第2期生インタビュー|「子育てをしながら地域に貢献できる農業を」佐藤睦美さん

東京農業の担い手を育てるために、東京都が設立した「東京農業アカデミー」。個性豊かな第2期生にインタビューしてきました。 今回は一児の母でもある佐藤睦美さん。管理栄養士だった佐藤さんが、なぜ農業を志したのか、研修の印象、将来のビジョンなどを伺いました。


佐藤睦美さん

撮影:上溝恭香
東京の農業の担い手を育成するため、2020年に誕生した東京農業アカデミー。第2期生として学ぶ佐藤睦美さんに、就農を目指す理由、研修の印象、将来のビジョンなどを伺いました。

管理栄養士としてキャリアを重ねて

佐藤睦美さん
撮影:上溝恭香

あきる野市に生まれ育ち、管理栄養士に

佐藤さんは東京都あきる野市出身。大学卒業後は管理栄養士に。老人ホームに勤務したり、健康診断で指摘事項があった人にアドバイスをする特定保健指導の仕事をしたりして、管理栄養士としてのキャリアを重ねてきました。

子育てと仕事の両立の難しさに直面

30代に入った佐藤さんに、出産という大きな喜びが訪れます。しかし、2歳になった子どもを保育園に預け、働き始めて直面したのが、子育てと仕事との両立の難しさでした。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
子育てしながら仕事をするのは、すごく大変でした。時間の融通がきいて、子育ても仕事も両立できるものはないかと思ったときに、近所にたくさん畑があるなと思ったんです。


祖父が趣味で家庭菜園をやっていたため、幼いころから畑は身近な存在でした。管理栄養士として食に関わる仕事をしていた佐藤さん。農業なら、「食」の仕事を続けていけることも大きな魅力の一つでした。

農業を始める方法を聞きに市役所へ

佐藤睦美さん
撮影:上溝恭香

農業の始め方がわからない

農業を始めたいと思ったものの、どうしたらいいのかわからない…。そんな佐藤さんがとった行動は、市役所に直接聞きに行くというものでした。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
どうしたらいいのかまったくわからなかったので、あきる野市役所の農林課に「農業をしたいんですけど、どういう方法があるんですか?」と直接聞きに行きました。市役所から東京農業会議の方を紹介していただき、いろいろ教えてもらいました。東京農業アカデミーか農家研修か迷いましたが、東京農業アカデミーを受けることにしました。学校なら、農業の基礎をしっかり教えてもらえると思いましたし、ちょうど説明会があったので行ってみることにしました。

子育てとの両立への不安|「できる限り協力します」の一言が支えに

東京農業アカデミーの説明会では、指導員がほ場を歩きながらていねいに説明をしてくれました。子育てしながら通学をすることに不安を感じていた佐藤さんは、その場で指導員に相談したと言います。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
子どもが熱を出したりすることもあるし、子どもの都合で休んでしまうこともあるかもしれない、と率直に相談しました。指導員の先生が、「できる限り協力します」と言ってくださったことが大きな後押しになりました。


夫に東京農業アカデミーに通いたいと相談すると、「やりたいことはやったほうがいい。協力するよ」と言ってくれました。家族の温かい応援も得られた佐藤さんは、書類選考、ほ場での実地試験、面接試験を経て東京農業アカデミーに入学しました。

東京農業アカデミーでの研修は発見の連続

撮影:上溝恭香

農業には栽培以外の知識も必要

研修が始まってから佐藤さんが驚いたのは、農業には栽培以外の作業がいくつもあるということでした。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
研修を始める前は、野菜を育てるだけかと思っていたのですが、研修では、トラクターや農業機械のメンテナンスやハウスの組み立てなども行いました。農業には、栽培だけではなく機械や建築の知識も必要なのだと知りました。


農業用ハウスを組み立てる研修は、特に印象に残りました。男性3人、女性2人の同期の研修生で協力しても大変だった作業。自分一人で就農するときにできるのだろうかと思いをめぐらせました。

家庭菜園の規模とは違う

東京農業アカデミーのほ場は広く、収穫できる量は佐藤さんの想像を上回るものでした。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
家庭菜園の規模とは違いますね。一度にたくさん収穫できるので、売り先を確保することの重要性を実感しました。管理栄養士なので野菜のレシピはたくさん知っているのですが、それでも、毎日収穫が続き、同期の仲間にレシピを聞かれると、レパートリーを出し尽くしたという感じがあります。

支え合える仲間、相談できる指導員がいる環境

佐藤睦美さん
撮影:上溝恭香

年齢も経歴もさまざまな同期との出会い

東京農業アカデミー第2期生の研修生は5人。20代から40代まで年齢も経歴もさまざまですが、助けあって楽しく研修することができています。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
ここに来なければ出会わなかった人たちだと思うんです。お互いに今までの経験をうまく出し合えているなと感じています。得意分野は積極的にやったり、教え合ったり。助け合って楽しく研修をすることができています。

質問しやすい雰囲気の指導員がいる

研修が楽しいもう一つの理由に、指導員の人たちに質問しやすい雰囲気があります。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
指導員の皆さんが気を遣わずに相談しやすい雰囲気を作ってくださっているのが、とても有難いですね。カリキュラムにない野菜を栽培したいという意見も柔軟に取り入れてくださって、今、私が栽培をしてみたかった長いもを栽培させてもらっています。

就農後のビジョンは?

佐藤睦美さん
撮影:上溝恭香

地域の子どもやママのために貢献できる農業を

佐藤さんは地元のあきる野市での就農を目指しています。
佐藤睦美さん
佐藤睦美さん
栽培品目はまだ決めていないのですが、子どもの食育に関心があるので、子どもたちに畑にきて収穫してもらいたいと思っています。また、野菜の廃棄を減らしたいという思いもあって、形が悪いだけで味がよい野菜を加工して販売することも考えています。1人で実現することは難しいので、余力ができたら雇用をしていくつもりです。子育て中のママ達が子どもを育てながら働ける場所をつくれたらという思いもあるので、意欲のある人を雇用できるといいですね。


新鮮な野菜を食べることができ、時には親子が畑に来て収穫することを楽しみ、子育て中の女性の働く場所ができる。佐藤さんの描いている農業はとてもあたたかい思いの詰まったものでした。

農業への思いを「子どもがいるからしばらくは無理だ」と諦めた時期もあったという佐藤さん。しかし、5歳になった子どもは佐藤さんのやりたいことを理解してくれて、保育園にいる時間が増えることも「いいよ!」と受け入れてくれました。佐藤さん自身も、子どものことは全力でサポートするという揺るぎない気持ちを持ちながら、「私には私の人生がある」と思えるようになったと言います。

自分自身の行動力で新たな一歩を踏み出した佐藤さん。その行動力と東京農業アカデミーで得る知識が、今後の夢をかなえる大きな力になることでしょう。

東京農業アカデミー八王子研修農場
概要:就農希望者を都市農業の担い手として育成することを目的として東京都が開設した研修農場
対象:18歳以上で都内で就農を目指す人(毎年5名程度を受入れ)
研修農場 : 八王子市大谷町(約20,000㎡)
研修期間 : 2年間(年間約220日)
問い合わせ:東京農業アカデミー八王子研修農場 042-686-1077、東京都産業労働局農林水産部農業振興課 03-5320-4814(直通)

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神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報などを執筆しています。

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