近郊農業とは?その利点や将来性をチェック!

小学生や中学生のときに社会科で習う近郊農業。そもそも近郊農業とはどんな意味?園芸農業との違いは?関東や関西で盛んな県はどこ?などの基本的な情報や、都市から近いという利点がある近郊農業のメリットやデメリット、現状とこれからについて、わかりやすくまとめました。


千葉県の畑

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「近郊農業」という言葉に触れたのは、小学生や中学生のときの社会科の授業だったのではないかと思います。都会の近くで行われる農業ということは理解していても、似たような言葉があって混同したり、実際にどのようなものが栽培されているのかは知らなかったりしませんか?ここでは、近郊農業の特徴、現状とこれからについてまとめました。

近郊農業とは

ビニールハウスとネギ畑
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「近郊農業」は都市の近郊で行われる農業を意味します。農産物を販売する市場や消費地が近いことを生かして、鮮度が求められる生鮮野菜、花、果物、鶏卵などが生産されます。都市で生活する人たちに向けたさまざまな作物が作られており、「都市近郊農業」といわれることもあります。市場のニーズに合わせた出荷をするために、ビニールハウスを利用して促成栽培や抑制栽培を行っているケースも見られます。

近郊農業と園芸農業の違いって?

道路を走るトラック
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近郊農業と混同しやすい言葉に「園芸農業」があります。園芸農業とは、生活に必要な野菜や果物、観賞用の花などを生産する農業のことをいいます。園芸農業は、かつては都市近郊で行われることが多かったのですが、輸送方法の発達により、都市部から遠く離れた場所でも行われるようになりました。

つまり、園芸農業には、都市の近郊で行われていないものもあるのです。都市から離れたところで行われ、輸送されて都市に出荷される園芸農業は「輸送園芸農業」といわれます。

近郊農業が盛んな場所はどこ?

畑のほうれんそう
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近郊農業が盛んな場所について、関東と関西に分けて、特に生鮮野菜である葉物野菜を中心にみていきましょう。

関東では

関東平野は日本一広い平野で、野菜が多く生産されていますが、近郊農業が特に盛んといえるのは、茨城県、千葉県でしょう。茨城県は全国有数の農業県でハクサイ、レンコン、ピーマンなど数多くの作物で全国一の出荷量を誇っています。千葉県ではサヤインゲン、エダマメ、シュンギクなどの作物が栽培されており、ホウレンソウは関東で一番出荷されています。

関西では

近畿地方では、各府県ごとに特色ある農業を行っていますが、近郊農業が特に盛んといえるのは、大阪府、京都府、兵庫県でしょう。大阪府では小松菜、京都府ではホウレンソウ、兵庫県ではレタスの出荷が、それぞれ関西で一番多いです。大阪府では、府内でまとまった生産量があり、独自の栽培技術で生産されている農産物のことを「なにわ特産品」、基準を満たす伝統野菜を「なにわの伝統野菜」としてブランド化を進めています。兵庫県では肉用牛など畜産も盛んです。
参考:農林水産省「平成29年野菜生産出荷統計

千葉県印西市で独立就農を果たし、自分なりの農園を築いてきた「はるさん」の農業漂流記はこちらからどうぞ。

近郊農業で出荷されるものは?

シクラメンの苗
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近郊農業で栽培されるものには、鮮度が重視される葉物野菜のほかに、ブロッコリー、カブ、キュウリなどの野菜があげられます。1軒の農家が少しずつたくさんの品目を栽培する少数多品目経営をしているケースも。また、シクラメンなどの鉢もの、パンジーなどの苗もの、チューリップなどの切り花などもあるほか、梨やみかんなどの果物、鶏卵も出荷されます。

一人で年間140種類の野菜を栽培する千葉県のタケイファーム。その取組はこちらからどうぞ。

近郊農業のメリットとデメリット

朝市
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近郊農業には利点も多くありますが、一方で欠点もあります。

近郊農業のメリット

輸送コストが抑えられる

まず、輸送に時間がかからないことです。鮮度の高い状態を保ったまま、野菜を市場や顧客に届けることができます。また、輸送費も抑えられます。

顧客との距離が近い

顧客との距離が近いので、レストランに卸したり、イベントに出店したりと直接的な販路を確保する機会が豊富です。そのような販路では、顧客の反応を直接得ることができるので、生産者のモチベーションにつながります。また、貸農園や体験農園を営む場合も、都市住民が訪れやすいといえます。

多様な商品を求める消費者がいる

消費者が多いということは、それだけ多様な消費者がいるということにつながります。価格よりも品質や、ストーリー性のある商品を重視する消費者もいるでしょう。多様なニーズに合わせた生産ができることも近郊農業の魅力です。

新たに農業を始めるときに移住のハードルが低い

農業を始めるにあたり都市から地方へ移住する場合に比べ、転居や地域に溶け込む努力などの負担が少ないといえるでしょう。

近郊農業のデメリット

農地の確保が難しい

都市部では農地が限られているため、新規就農を考える場合にはその確保が難しいです。また、農地を買う場合にも、借りる場合にも地方よりコストがかかります。農地の確保が限られると、大量生産も難しくなります。

生活費、人件費が高い

都市近郊では、生活費や人件費が地方よりも割高になります。

近郊農業のこれから

ネギを栽培する女性
出典:写真AC
大きな人口を抱える都市を相手に物流コストをかけずに出荷ができる近郊農業は、これからもそのメリットを生かして都市住民の食卓を支えていくでしょう。災害の多い日本では、都市の近くに食料の生産拠点があることが、備えの一つにもなります。

農業が都市住民にもたらす効果にも期待が高まっています。例えば、高齢化が進む中、高齢者が近郊の農園で働いたり、活動できれば、健康増進の効果が期待できます。

また、農林水産省では障がい者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組「農福連携」を推進しています。これは、近郊農業だけのものではありませんが、都市に近ければ、多くの人の参加が可能です。

子どもや働き盛りの世代にも、身近に土や畑がある生活は癒しをもたらします。近郊農業はこれから食料の出荷以上の価値を生み出すものとして、注目されていくかもしれません。

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ネギを栽培する女性
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神山 朋香
神山 朋香

大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報や農業体験の記事などを執筆しています。