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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
しいたけ栽培の基礎知識や育て方、実際に栽培キットで育ててみた様子をレポート!よくある失敗や対処法も紹介します。
しいたけ栽培のポイント
しいたけ栽培の概要をまとめました!詳しくはこの後の内容をチェックしてくださいね。- 原木では2~6年、菌床栽培では5~12カ月。栽培キットなら10日程で収穫できるものもあります。
- 春、秋、冬が栽培可能な時期で、気温が30℃を越えてしまうと菌が弱ってしまうため夏の栽培は向きません。
- 直射日光の当たらない、湿度の高い場所で育てましょう。栽培キットであれば浴室で育てるのがおすすめです。
- 栽培キットの場合は1日1回霧吹きで湿らせるようにしましょう。
原木・菌床|シイタケ栽培の方法は2種類
しいたけ栽培には大きく分けて2つの方法があります。自然に近い状態で育てる原木栽培、そして安定して育てられる菌床栽培です。原木栽培
きのこの発生しやすい場所で、自然に近い状態で行う方法です。細めの丸太を乾かしたものに、菌を繁殖させた小さな木片などを打ち込みます。それを森などに重ねて置いておくことでしいたけを発生させます。仕込みから収穫まで数年かかりますが、数年にわたって収穫できます。香りや味は天然物に近いといわれています。菌床栽培
おがくずなどに栄養となる糠などを混ぜたものを利用する方法です。空調のあるハウスや室内で育てます。栽培が短期間で行え、安定的に栽培できます。初めての栽培ならこちらがおすすめです。しいたけ栽培の基礎知識|季節や期間、育てる場所は?
栽培に必要な期間はどのくらい?
しいたけ栽培に必要な期間は、原木では2~6年、菌床栽培では5~12カ月です。大部分は菌糸を繁殖させる期間にあたります。菌糸が繁殖した後の原木や菌床を使えば、きのこの発生自体は5~10日程度しかかかりません。しいたけ栽培に向く季節・時期は?
しいたけ栽培に重要なのは温度です。春、秋、冬が栽培に適しています。特に、昼は暖かく夜は寒い秋や春先が適期です。30℃以上になると菌が弱るため、夏は難しく、行う場合には空調設備を用意しましょう。栽培に適した温度は?
しいたけは8~25℃で栽培できます。ただし、低温度が続くと弱るため、冬でも4~5時間は20℃以上になるようにしましょう。また、発芽するためには夜との温度差が10℃以上あると良いとされています。どんな場所が適しているの?
直射日光が当たらず、湿度が高い場所で育てます。本格的に行う場合はハウスや室内、森林の日陰など。家庭で行う場合は直射日光や暖房が直接当たらない場所なら大丈夫。カバーをかけるなどして乾燥しないようにします。おすすめのしいたけ栽培キット5選
ここまで書いてきたように、温度や湿度管理、場所を整えるのが大変そうなしいたけ栽培ですが、お家でも育てられます。少しのお世話でしいたけが生えてくるキットがほとんどです。実際に自宅で簡単に育てられるしいたけ栽培キットを7つご紹介します。本記事でも実際に使ってみた定番キット
もりのしいたけ農園 きのこ栽培キット
今回使用した森のきのこ倶楽部のしいたけ栽培キットです。筆者も数回使っていますが、説明書に従って育てた場合、失敗したことはありません。栽培容器が付いているものと付いていないものがあるので注意しましょう。
セット内容 | 菌床本体(国産広葉樹オガ、栄養体、シイタケ菌)、栽培手引書、保温保湿用ポリ袋 |
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サイズ | 直径約13×縦約17cm |
重さ | 約1.5kg |
きのこの種類を3つまで選べる
きのこ栽培キット【きのこ農園3個チョイス(化粧箱なし)】
きのこの種類を3つまで選べるセットです。しいたけ、エリンギ、ぶなしめじ、なめこ、えのきたけ、ひらたけから選べます。菌床本体のみで、付属品や説明書はありません。既に育てたことがある人が2本目として購入するのに向いています。
セット内容 | 菌床本体 |
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かわいい絵柄でお子さんへのプレゼントに
しいたけニョキニョキ
テレビやラジオ、雑誌などでも取り上げられている商品です。森XR1という品種のしいたけを使用しています。パッケージのかわいらしい絵柄が特徴的で、お子さんへのプレゼントにぴったりです。
セット内容 | 菌床本体(国産広葉樹オガ、栄養体、シイタケ菌)、栽培手引書 保温保湿用ポリ袋(※菌床本体を入れている袋) |
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サイズ | 直径約13×長さ約8cm |
重さ | 0.7kg |
本格的な原木で栽培できる
しいたけの成る木(短木)
小型な栽培キットではなく、本格的な原木で育てるタイプです。水に浸けたり、芽出し作業のために遮光ネットをかけたり、実践的な作業も含まれるので、広いスペースをお持ちのご家庭に向いています。
セット内容 | 栽培ブロック(原木)、栽培説明書 |
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サイズ | 直径8~15×縦45cm |
重さ | 約4~5kg |
初心者に嬉しい収穫目安の解説付き
岩手でつくった しいたけ栽培キット
岩手県産の菌床を使ったしいたけ栽培キットです。2本セットになっています。キット用の容器は不要なので、場所をとりません。写真付きでしいたけの収穫時期の目安を解説してくれているので、初心者の方でも安心して栽培できます。
セット内容 | 栽培ブロック(菌床)、栽培説明書、栽培用ビニール袋 |
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サイズ | 直径約13×縦約15cm |
重さ | 約1.2kg/本 |
スプレーヘッドが付属でついてくる
カネコ種苗 原木しいたけ栽培セット なるきのこデラックス
山梨県産のしいたけが収穫できる栽培キットです。ペットボトルに装着できるスプレーヘッドが付属でついてきます。栽培に必要なものは全て同梱されているので、買ったらすぐに栽培が始められます。
セット内容 | ホダ木、説明書、浸水・保湿袋、輪ゴム、底皿 |
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サイズ | 縦30cm |
重さ | 1.06kg |
お子さんの自由研究にも使える
山形白い森のきのこハウス
山形県最南端の小国町にある小国きんたけ工房で育てられた菌床です。国産広葉樹チップを使っています。かわいいパッケージなので、お子さんの夏休みの自由研究にも向いています。最大3回栽培が可能です。
セット内容 | 菌床、ビニール袋(保湿用)、栽培方法のしおり |
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しいたけの菌床栽培の方法
家庭で育てる場合、すでに菌床ができたものを購入するのがほとんどでしょう。ここでは菌床からの育て方を簡単に紹介します。菌床栽培しいたけの育て方
Step1. 菌床を取り出して水洗いします。Step2. 栽培容器や袋に入れ、湿度が高い状態にセットします。
Step3. 1日1回霧吹きで軽く湿らせます。5日~2周間ほどでしいたけの芽が出てきます。
Step4. 傘がひらいてきたら収穫します。
Step5. 乾かない程度に保湿しながら、2~3週間休養させます。
Step6. 水につけて8~15時間置きます。
Step7. 再び栽培容器にセットし、1回目と同じように収穫します。2~4回繰り返し収穫できます。
しいたけの原木栽培の方法
原木しいたけの育て方
山に土地がある人や、風味にこだわりたい人は原木栽培に挑戦するのもいいでしょう。Step1. 原木を用意します。クヌギなどの広葉樹を伐採して乾燥させたものを使います。
Step2. 種菌を用意します。駒状のものが定番です。
Step3. 原木に種菌を接種させます。原木に穴をあけ、駒を埋め込みます。
Step4. 風が通るように木を組みます。組み方は井げた型や鳥居形などさまざま。乾燥しないよう散水したり、ひっくり返したりします。
Step5. 十分に菌糸が回ったら、浸水させます。
Step6. しいたけが発生するので、適時収穫します。
Step7. 4年程度収穫できます。
原木栽培におすすめのグッズ
たくさんのしいたけ接種でも使いやすいドリル
マキタ 椎茸栽培用ドリル DD2020
たくさんの原木に接種させるなら、しいたけドリルという専用品があります。種菌の駒に適した深さで次々に穴を空けられます。効率的に栽培したい方向けです。
サイズ | 27.4×6.7×13.1cm |
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適正回転数 | 10,000回転/分以下 |
一般のドリルにも取り付けられるしいたけドリル
スターエム 六角軸しいたけビット 41X-092
しいたけドリルを購入するほどではないけど、原木への接種をしたい人には、しいたけビットが便利です。一般の電動ドリルに取り付けることで、しいたけドリルとして使えるようになります。
サイズ | 全長7.5cm |
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適正回転数 | 2,400回転/分以下 |
適用機種 | インパクトドライバー、電気ドリル |
6日で収穫!きのこ栽培キットで育ててみた
菌床栽培キットを使い、実際に育てた様子をレポートします。使ったのは森のきのこ倶楽部さんのしいたけ栽培キットです。栽培記録
到着・開封!
注文した翌日には到着!ちなみに森のきのこ倶楽部さんは、確実に受け取れるよう、発送連絡のメールで宅配便の受け取り時間変更用の情報も記載してくれています。なぜなら菌床は生きており、できるだけ早くセットしなければいけないから。というわけでさっそく開封!今回初めて栽培ケース付きを買ったのですが、予想より大きくてちょっと驚きました。
入っているのは、栽培ケース、菌床、説明書の3つ。
菌床は土のような、森で朽ちてふわふわになった木のようななんともいえない見た目。
しいたけの芽がところどころ白く見えていますね。
そして上の方には息ができるようにフィルターが。生き物なんだなーとしみじみします。
セット
さっそくセットしていきます。丁寧に説明書がありますが、手順自体は「こんなので大丈夫かな?」とちょっと心配になるレベルで簡単です。
菌床の袋をあけて…
表面を水で軽く洗い流します(水道水でOK)。
ケースに入れたら、表面に霧吹きで水を吹きかけて終わり!10分もかかりません。霧吹きがない場合はコップの水をかけるだけでもいいそうです。
栽培場所は直射日光の当たらない場所で。きのこというと暗い場所に映えるイメージがありますが、しいたけは暗くする必要はありません。昼間は20~23℃、夜は18℃以下になるのが理想だそう。今回の場所は暑いときには30℃以上になる場所でしいたけには暑いかも。大丈夫かな…
ちなみに、栽培容器を使うと観察しやすいうえに見た目も良く、自宅室内に置いても汚い感じはしません。高さがあるのでそのまま棚に置けず、棚板を1枚取り外して置くことに。テーブルなどに乗せるにも場所をとるので、栽培場所をどこにするかは買う前にシミュレーションしておいた方が良さそうです。
2日目
次の日には、しいたけの芽のようなものが膨らんできている気配が。3日目
3日目には、すでにきのこっぽくなっている部分が!驚くべき生長スピードです。朝起きて様子を見るのが楽しみになってきます。4日目
これはもうしいたけでしょう!小さめの傘がかわいいです。5日目
完全にしいたけですね。6日目
傘がひらいてきて、裏側にひだが見えるようになったら収穫とのこと。それ以上置いておくと傘がどんどんひらいていきます。収穫
それでは楽しい収穫の時間です!軸の根元からはさみで切っていきます。
この日はまだ育っていないものを除いて30個ほど収穫。数日後もう一度収穫し、合計85個、550g収穫しました。
キット2回目
菌床を2~3週間休養させるとまた育てることができるそう。現在休養中。2回目にもチャレンジしたいと思います。保存
ちなみに85個は食べきれなかったので余った分は乾燥しいたけに。乾燥させることで保存が利くだけでなく、風味がまし、ビタミン類も多くなるそう。ほかのきのこにも挑戦中!
しいたけ栽培に味を占め、ほかのきのこも育ててみることにしました。第2弾はエリンギ。栽培の様子はこちら。
しいたけ栽培のよくある失敗と栽培のコツ
しいたけキットは簡単ですが、それでもうまく行かないときはあります。よくある失敗と、その原因・対処法を紹介します。白いカビのようなものが見える
よくある失敗として「白いカビのようなものが容器やしいたけについた」というものがあります。この場合、多くはカビではなくしいたけの胞子です。しいたけの収穫が遅くなると傘がひらき、ひだから白い胞子が出ます。適切な時期に収穫すれば防げます。青いカビのようなものが見える
青カビが生えてしまう原因は「湿度が高過ぎる」、「温度が高過ぎる」、そして「栄養となりやすいものがある」の3つです。しいたけに適切な湿度は80~90%で、湿度が90%以上になるとカビが生えやすくなります。とくに、収穫した後の石突の残りや潰れたしいたけの芽などは、ほかの菌に対する防御力が低く、そこからカビが生える原因となるので、取り除きましょう。カビが生えてしまったら早めに水で洗い流します。また生えたら同じようにし、数回繰り返します。ただ、一度出たカビを完全に取り除くのは難しいため、まずはカビを生やさないように温度と湿度に気をつけましょう。
小さいしいたけしか育たない
たくさんのしいたけが一度に重なってできると一つひとつが小さくなります。小さくて弱いしいたけを間引きし、一本一本に十分な広さと栄養が行き届くようにしましょう。また、温度が高いと生長が早くなる分、早い時点で傘がひらいてしまい、小さいものが多くなります。しいたけ栽培は初心者でも簡単
しいたけ栽培の魅力は伝わったでしょうか?菌床栽培キットはとっても手軽。そして何といってもおもしろい!筆者は毎日眺めるのが楽しみで早起きになったほどです。短期間でも楽しめるので、植物は枯らしてしまいがちだけど何か育ててみたい、という方でも大丈夫です。ぜひ一度挑戦してみてくださいね。しいたけがにょきにょき生えてくる、タイムラプス動画も作ったのでこちらもぜひご覧ください。