目次
-
- Akiko Isono
編集者兼ライター。家庭菜園・ガーデニング専門誌の編集に8年間携わり、現在は雑誌やムック、WEBを中心に、植物、農業、環境、食などをテーマとした記事を執筆。好きな野菜はケールとにんじん。…続きを読む
家庭菜園で大量に野菜が収穫できたとき、おすそわけで野菜をたくさんもらったとき、うれしい反面、頭を悩ませるのがその保存法ですよね。
できるだけ鮮度をキープして、むだなく完食したい。でも、冷蔵庫には入りきらない……。とくに大根などの大きな野菜は、冷蔵庫に丸ごと入れるのはむずかしく、途方に暮れてしまう人もいるかもしれません。
そこで挑戦してほしいのが、干し野菜!
保存に便利なだけでなく、味、栄養、調理のしやすさなど、いろいろな面でいいことづくめですよ!
1.うまみも栄養もギュッと凝縮!干し野菜の魅力
干し野菜は、野菜を天日に干して乾燥させ、長期保存する昔ながらの知恵。常備菜やお弁当に欠かせない切り干し大根、ねっとりした甘みがたまらない干しいもなど、日本人にとってはおなじみの食材です。
身近な干し野菜ですが、最近はヘルシー食材、エコ食材としても大人気。干し野菜の魅力を、あらためて見直してみませんか?
干し野菜の魅力① おいしい!
野菜を干すと、水分が抜けてうまみや甘みがギュッと凝縮します。また、生のときとは違った歯ごたえが生まれ、レシピの幅も広がります。干し野菜の魅力② ヘルシー!
太陽の光に干すことで、もともと野菜に含まれている栄養が凝縮し、生のときよりも栄養価がアップします。たとえば切り干し大根の場合、100g当たりの栄養素は、鉄分が約49倍、カルシウムが約23倍、食物繊維が約16倍、カリウムが約14倍。このほかビタミンB群なども大幅にふえることがわかっています。干し野菜の魅力③ コンパクト!
野菜は水分の割合が高いので、干すとぐんとコンパクトになります。瓶やジップロックに入れて、スペースをとらずにで保存できます。干し野菜の魅力④ 調理が楽!
干し野菜は戻し時間がかかるので、調理が面倒……と思っている人もいるかもしれません。でも、細切りの切り干し大根やにんじんなら、戻し時間は15分程度。ほかの食材を準備している間に水につけるなど、段取りよく調理すれば、皮をむいたり切ったりするよりも時間が短縮できますね。汁物や煮物に使うなら、サッと洗ってそのまま入れるのもアリです。2.これで失敗なし!干し野菜作りQ&A
干し野菜づくりには、どんな野菜が向いているのでしょうか。失敗しない干し方は?
そんな疑問にお答えしましょう!
Q.どんな野菜が向いている?
A.保存のためにしっかり干すなら、根菜や葉物野菜、きのこなど。セミドライならいろいろな干し野菜が楽しめます
干し野菜には、長期保存のために中までしっかり干す場合と、風味を加えるためにセミドライに干す場合があります。中までしっかり干すなら、大根やにんじん、ごぼう、蓮根などの根菜が定番。しいたけ、えのきなどのきのこや、長ネギなどの薬味野菜も干しておくと便利に使えます。ローズマリーやローリエなどのドライハーブも、いわば干し野菜の一つですね。
トマトなどの水分の多い果菜は、天日で中までしっかり乾かすのがむずかしいので、長期保存にはあまり向きません。ただ、軽く干して水分が抜けると、風味がアップしておいしくなります。調理前に半日ほど干して料理に使うと、いつもとはちょっと違う一品に。
Q.いつ干すのがベスト?
A.しっかり干すなら、冬がベストシーズン。晴天が続くときに干そう
切り干し大根や干しいもといった定番の干し野菜は、本来は真冬に作ります。夜間に野菜の水分が凍り、日中に気温が上がると水分が解け出して蒸発する、この繰り返しによって中までカラカラに乾き、うまみや栄養分が凝縮されると言われています。大根やにんじん、さつまいもなどは11〜12月が旬なので、収穫したてのおいしい時期に干せることもポイントです。干す日数は、天気や干す場所、野菜の切り方にもよりますが、細切りにした切り干し大根、切り干しにんじんなどは3〜5日で完成します。天気予報をチェックして、晴れた日が数日続くタイミングを狙いましょう。
Q.何を準備すればよい?
A.大きめのざるや干しカゴを準備しよう
干し野菜作りで大事なのが、重ならないように広げて干すこと。たくさん干すなら、大きめのざるを用意しましょう。軒下などに吊るせる専用の干しカゴも便利ですよ。鳥や虫などの被害が心配なら、ネット付きの製品もあります。おすすめのざる、干しカゴはこちら!





Q.どのくらい保存できるの?
A.中まで完全に乾燥させれば、数か月保存可能
干し野菜の保存期間は、水分の残っている割合で変わります。中までカラカラに乾燥させたものなら3か月〜半年ほど保存できます。乾燥剤と一緒に、密閉できる瓶や容器に入れ、直射日光や湿気を避けて保存するのがポイントですよ。セミドライの場合は水分が残っているので、長期間おくとカビが生えたりします。冷蔵庫に入れて、数日〜1週間で食べきるようにしましょう。
Q.最近話題のドライフードメーカーって?
A.水分の多い野菜も簡単に乾かせる。自家製ドライフルーツも!
ドライフードメーカーは、温風で野菜やフルーツを乾燥させる、最近人気のキッチン家電。価格も数千円台からあり、保存目的だけでなく、ふだんの食材の風味や食感を簡単にアレンジできるメリットもあります。レモンやオレンジなど、天日では乾燥させにくい水分の多いフルーツも、ドライで楽しめるのはうれしいですね。栄養価などは、天日で干した場合とは少し異なるようです。おすすめのドライフードメーカーはこちら
3.さっそく実践!干し野菜をつくってみよう
初心者でも挑戦しやすい干し野菜は、根菜類やきのこなど。切り方や厚みを変えれば、自分だけのオリジナル干し野菜がつくれますよ。
①野菜をカット
野菜はよく洗い、好みの長さ、厚さにカットします。厚みがあると、そのぶん乾くのに時間がかかるので、早く完成させたいなら薄くカットするのがポイントです。
○大根・にんじん・ごぼう・蓮根など
細切り、薄い輪切り、半月切り、いちょう切りなど、用途に合わせた切り方でかまいません。皮はむいてもむかなくても、お好みでOK。煮物などに使う一般的な切り干し大根なら、5mmくらいの輪切りにしてから、5〜6mmの太さに切るのが目安です。食感をしっかり楽しみたいなら、2cmくらいの厚みにカットしましょう。○きのこ
しいたけは石づきを取り、縦半分に切ると早く乾きます。えのきだけなら、細かい房にほぐして干します。②広げて干す
ざるや干しカゴに、切った野菜を並べます。できるだけ重ならないように広げることで、均一に乾燥させられます。干す場所は雨や霜を避けられる軒下やサンルームなどがベスト。基本的には干しっぱなしで大丈夫ですが、雨が降り込むようなときは室内に取り込みます。
2〜3日たって表面が乾いたら、裏返してまんべんなく乾燥させます。
③完成!
手で触ってみて、かたくカラカラに乾燥していたら干し野菜の完成です。乾燥剤と一緒に密閉できる容器に入れて保存しましょう。4.甘くてねっとり!干しいもを自作しよう
冬の定番おやつといえば、干しいも!何も加えていないのにねっとりと甘く、そのままでも軽くあぶってもおいしいですよね。こちらも意外と簡単につくれるので、その方法を教えましょう。
①さつまいもを準備
基本的にどんなさつまいもでも干しいもがつくれますが、人気は安納芋、紅はるかなどの甘みの強い品種。もし手に入るなら、こちらで挑戦してみましょう。ちなみに、収穫したばかりのさつまいもは甘みが少なく、おいしくありません。収穫してから2〜3週間おくと、デンプンが糖に変化して、ねっとりした甘みが生まれます。
②さつまいもを蒸す
さつまいもをよく洗い、蒸し器に入れて蒸します。細いいもなら30〜60分、大きめのいもは1〜2時間かけて、中までじっくりと加熱し、甘みを引き出します。時間を短縮したいなら、圧力鍋が便利ですよ。
③熱いうちに皮をむく
中までしっかり蒸し上がったら、取り出して熱いうちに皮をむきます。軍手などをはめて、やけどしないように気をつけてください。冷めると皮がむきにくくボロボロになるので、熱いうちに作業するのがポイント。④好みの大きさにスライス
皮をむいたさつまいもは、1cmくらいの厚さに縦にスライスします。スティック形の干しいもにするなら、さらに1cm幅に切ります。④干す
重ならないようにざるや干しカゴに並べ、風通しのよい軒下などにおきます。日中は外に出し、夜は室内に取り込んで、3〜5日乾燥させます。
⑤完成!
水分が抜け、好みのかたさになったら自家製干しいもの完成です。家庭でつくったものは長期保存には向かないので、できるだけ早めに食べきるようにしてくださいね。5.干し野菜のおいしい食べ方は?
煮物やお味噌汁などが定番の食べ方ですが、アイデア次第で洋風、中華風のレシピにも活躍してくれます。干し野菜ならではのコクのある風味や歯ごたえを楽しみましょう。
干し野菜サラダ
切り干し大根や切り干しにんじんを戻し、水けをよく絞って好みのドレッシングであえます。きゅうりや水菜など、歯ごたえのよい野菜をプラスしても。干し野菜ナムル
干し野菜を戻し、水けを絞ってからゴマ油、にんにく、糸唐辛子、塩、白ごまであえます。大根、にんじん、蓮根など、いろいろな干し野菜でつくれますよ。干し野菜スープ
大根、にんじん、きのこなどの干し野菜を、戻さずにそのままコンソメスープや鶏がらスープで煮込み、塩、胡椒で味を整えます。干し野菜からうまみたっぷりのだしが出て、戻し時間もかからないお手軽レシピ。干し野菜チップス
好みの干し野菜を、中温の油で表面が薄く色づくまで揚げ、パラリと塩をふるだけ。野菜のうまみが詰まったヘルシーおやつです。おばあちゃんの知恵に学ぶ、切り干し大根の簡単おいしい養生ごはん
6.栄養もおいしさもいいとこどり!の干し野菜
単なる保存食ではない、魅力的な干し野菜。栄養豊富で、野菜のうまみが詰まっていて、まさに「いいとこどり」ですね。切って干すだけなので、誰でも手軽にできるのもうれしいポイント。「野菜が余ったら、サッと干す」、そんな賢くエコな食のスタイルを暮らしに取り入れてみませんか?