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防災士
柳原 志保宮城県多賀城市生まれ。結婚後退職し2児のママに。離婚した後に東日本大震災で被災。熊本県和水町に移住し、防災啓発活動をスタートした後、熊本地震や令和2年7月豪雨を経験。現在「歌う防災士しほママ」としてフリーで講演活動等を行っている。…続きを読む
3度の災害を経験したママ防災士に聞く「災害用トイレの選び方」
災害時のトイレ事情
柳原さん
東日本大震災や熊本地震ほどの大地震になると、ライフラインが止まり断水が起こりがちです。断水しなかった地域でも下水道管が破裂して水洗トイレは使えないことが多々あります。
東日本大震災で宮城県多賀城市の避難所にお子さんと避難した柳原さん。みんなが水が流れないトイレで無理やり用を足したため、トイレの周辺や廊下まで汚水や汚物まみれになっていたそうです。数日経ってプールの水で流すことになりましたが、実は下水管も破損していたため、水で流してしまったことで、復旧により時間がかかったとのこと。※下水管の破損と復旧に時間がかかった旨は後日発覚したそうです。
柳原さん
大きな地震の後、すぐに水洗トイレを使ってはいけないというのは、今では常識です。災害時は自治体の情報を確認し、断水や排水のトラブルがあるとわかったら、災害用トイレを使って用を足し、ゴミとして処分します。またその処分方法は自治体によって異なるので、必ず確認しておきましょう。
【災害用トイレの種類】携帯トイレは3種類
柳原さん
尿を吸わせるための凝固剤や吸水シートと処分用の袋がセットになったのが携帯トイレです。吸水効果はどの商品もさほど差がありませんが、防臭・抗菌効果や付属品、凝固剤のパッケージの材質で値段も変わってきます。防臭袋になっているタイプ、凝固剤が高機能で防菌作用や防臭効果を持つタイプに加え、長期保存できるよう凝固剤のパッケージの材質がアルミ製の袋になっているものもあり、それぞれ異なる特徴があります。ご家庭の事情に合わせて用意しておくのが良いでしょう。
汚物袋は透明より黒色など不透明タイプが良いと言われています。何日もゴミを出せない場合もありますが、中が見えないと不快感の低減に繋がります。
携帯トイレ(1)便器に袋を被せて使うタイプ
柳原さん
袋をセットする時は、便器の上からかぶせる場合と、便座の上からかぶせる場合があります。用を足す際に便座にウイルスなどの飛沫が付着することがあるため便座ごと被せると安心ですが、座り心地が悪いため、どちらにするかは状況によって判断してください。用を足した後、付属の凝固剤を入れて袋の口を結んでゴミとして処理します。
消臭機能付きでコスパ抜群
柳原さん
凝固剤に抗菌・消臭効果があり、便器カバーや手袋付きで衛生管理もばっちり。アルミ製パッケージで長期保管にも対応。高機能なのにコスパが良いのが特徴です。
携帯トイレ(2)受け口が付いていて手で持った状態で使うタイプ
箱型なので女性でも使いやすい
柳原さん
受け口が丸型の携帯トイレが多いのですが、箱型で間口が広く飛び散りにくい。つまみもついていて持ちやすいので、女性や子どもも安心して使えますよ。防臭袋付きなのもうれしい。わたしは車に備蓄しています。
携帯トイレ(3)箱型・筒型になっていて地面に置いて使うタイプ
ポンチョ付きでどこでもサッと広げて用を足すことができる
【災害用トイレの種類】簡易トイレ
柳原さん
自宅のトイレが使えない、避難している場所からトイレが遠い、トイレがあっても和式で使い勝手が悪い、または使えない、衛生的に使いたくないなど災害時のトイレ環境は普段とは全く異なります。ファミリートイレとして簡易トイレがあると安心です。我が家ではワンタッチテントと折り畳みトイレを準備しています。軽くて場所をとらず持ち運びやすいだけでなく、椅子としても使えるため普段使いもできるんです。
折り畳み式の便座
パイプ椅子の形状のものや箱型・筒型のケースの上に便座を取り付けるものがあります。簡易トイレと凝固剤や汚物袋がセットになっています
介護用のポータブルトイレ
トイレ介助の負担を減らすために、ベッドの横に置いて使用するトイレを介護用のポータブルトイレと呼びます。水洗機能やソフト便座など、快適な機能が備わるものも多くあります。簡易トイレだと安定感が足りなかったり、安心できない場合には、こうした介護用トイレを災害用に購入する方法もあります。座り心地が良く安心して使用できる
【災害用トイレの種類】マンホールトイレや仮説トイレなど
災害時に使われるトイレには、自分で準備する携帯トイレや簡易トイレの他にもマンホールトイレや仮設トイレなど自治体で準備されるタイプのトイレがあります。柳原さん
各自治体で備蓄が異なりますので、特に障がいがある方や要介護の方など特別な配慮が必要な方は備蓄トイレが使えるのかを確認しておきましょう。自分が使いやすい携帯トイレや簡易トイレを備えておくと安心材料になりますよ。
仮設トイレ
マンホールトイレ
必要な災害用トイレの数
【必要な災害用トイレの数】=【1日5~6回】×【3~7日間】×【家族の人数】で準備しておく必要があります。柳原さん
トイレの平均回数は5回~6回。内閣府は最低3日間、できれば1週間の備蓄が必要だとしています。わが家の場合は3人なので、3日間だと45回分、1週間だと105回分必要になります。東日本大震災の時、食べ物は我慢できてもトイレは我慢することができなかったです。さらに臭くて汚いトイレには行きたくなくて水分を控えました。熊本地震は震災関連死が直接死の4倍でした。水分制限は体力低下やエコノミークラス症候群などの病気を招き、関連死につながることも危惧されます。また、公衆衛生の悪化による感染症の蔓延にもつながります。災害時でも快適に利用できるトイレ環境を準備しておくのは必要不可欠なことだと考えています。
凝固剤と消臭袋でお手軽携帯トイレに!
柳原さん
携帯トイレは機能にもよりますが、セットで1回100円くらいとそれなりのお値段なので、コストが気になる方には、単品で凝固剤、ポリ袋、消臭袋を購入する方法もあります。
柳原さん
例えばこの商品を利用すると、凝固剤が1回10円、ポリ袋は5円、消臭袋が12円で、1回のトイレが27円で済む計算になります。なお、この凝固剤は1回10gとありますが、尿の量によってはもっと少なくても吸水する場合があります。我が家で実験した際には、大人の尿の想定で300mlの量の水を吸水させてみたところ5gくらいで十分でした。コスト重視で尿処理ならこちらもアリ。ただし、激臭の糞便処理には不向きです。
携帯トイレ編集部おすすめ3選|凝固剤と袋のセット
高い防臭力で人気驚異の防臭袋|BOS 簡易トイレ 50回分
抗菌性凝固剤で安心|SANYO簡易トイレセット 80
ヤシ殻活性炭入り凝固剤で消臭|シャットレット非常用トイレ
1回約80円!マイレットの凝固剤と袋のセットが割安
組み立て式便座・簡易トイレ|おすすめの災害用トイレ5選
大きな災害時には、自宅以外での避難生活を余儀なくされることもあります。車中泊で数日過ごさなければならないときなどは、トイレ事情もさらに深刻に。災害用トイレと一緒に組み立て式の簡易便座があると、いざというときも安心です。非常用簡易トイレ かん太郎|組み立て簡単・洗えて清潔!
簡単に組み立てられる便座はポリプロピレン製。洗えるので、繰り返し清潔に使えます。付属の収納袋に入れれば、持ち運びにも便利です。汚物袋と凝固剤が5回分セットになっています。コジット 緊急用組み立て式トイレ|ダンボール製で楽々持ち運び!
持ち運びを考えるなら、軽量のダンボール製便器がおすすめです。軽くて組み立ても簡単ですが、耐荷重は100㎏と頑丈なつくり。汚物袋と凝固剤が10回分付属しているので、いざというときにも安心です。ポータブルトイレ 便座一体型|水洗いOK!軽量でコンパクト
水洗いが可能な便座一体型の非常用ポータブルトイレ。素材は耐久性に優れたABS樹脂製。耐荷重150kgで、大人二人が乗っても大丈夫。避難所や自宅、テントの中など様々な場所に簡単に設置することができます。プラダン製洋式トイレ|水に強く焼却処分可能!
水に強く軽量ですが、耐荷重は350㎏以上という頑丈さを誇るプラスチックダンボール製の組み立て式便座です。使用しなくなったら焼却処分できるのもメリット。便座のみなので、凝固剤と汚物袋は別に用意しておきましょう。アイワ 緊急用トイレ&チェア|折りたたみ式チェアが便座に!
折りたたみ式小型チェアが、緊急時には便座になります。座面部分のカバーをかければ、通常のチェアとしても使えます。汚物袋がずれるのを防ぐストッパー付きです。凝固剤と汚物袋が10回分付いているので、すぐに使えますよ。プライバシーを護る|テント付き災害用トイレセット3選
屋外などで災害用トイレを使用する場合は、プライバシーの確保が肝心。ここでは、おすすめのテント付き災害用トイレをご紹介します。ポータブルトイレ ワンタッチテントセット|簡単設置のポップアップ式
組み立て式の簡易トイレとパッと広げるだけのポップアップ式テントがセットになっています。トイレの脚部分はショートとロングの2サイズが付属。子どもから大人まで、体格に合わせて座面の高さ調節が可能です。災害用テントセット マイレット|大人数に対応する100回分の処理セット
先にご紹介した「簡易トイレ処理セット マイレット」に、テントとペール缶便器が付属した災害用トイレセットです。テントの内側には使用中の影が映らないシルバーコーティングが施され、ペーパーホルダーやランタンラックも装備。100回分使える処理セットで、大人数にも対応できる充実のセットです。簡易トイレ ワンタッチルーム|軽量ダンボールトイレで持ち運びが楽
組み立て式便器とポップアップテントのセットです。折りたためば、付属のキャリーバッグにコンパクトに収まります。便器がダンボール素材なので軽く、持ち運びも楽におこなえます。吸収パッド入りの汚物袋付き。日本トイレ研究所の災害用トイレガイドも便利
柳原さん
日本トイレ研究所の災害用トイレガイドというウェブサイトがあります。自治体のトイレ対策事例や災害時のトイレ事情などの情報があるので、一度見ておくと良いでしょう。
日本トイレ研究所「災害用トイレガイド」
手作りでお手軽に災害トイレを用意する方法も
簡易トイレやパーテーションは段ボールで手作りできる
ワンタッチテントの代わりに段ボールなどでパーテーションを作成してプライバシーを護る方法もあります。簡易トイレを段ボールで作る方法もありますよ。詳しい作り方は柳原さんのWebサイトに掲載されています。 防災士 柳原さんのWebサイト
災害用トイレには、携帯に適した凝固剤と汚物袋の簡易セットから、避難先でも使える組み立て式の便器がセットになったものまでさまざまな種類があります。いざというときの携帯には数回分の簡易セットをバッグに、自宅や事務所にはテントセットなどと分けて備蓄するのも賢い方法です。