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ライター - kiko
出版社にて雑誌編集に3年間に携わった後、現在はWebライターとして活動中。多肉植物・観葉植物の魅力にはまり、鉢が増えていく日々。…続きを読む

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どっしりと重厚な葉姿がマニアに人気の「ガステリア」。葉を左右交互に重ねるものや放射状に広げるものがあり、色や模様の入り方も多種多様です。この記事ではガステリアの基本情報や品種、育て方、元気がないときの対処法などをご紹介します。
ガステリアはどんな多肉植物?

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ガステリアはアフリカ南部の乾燥した岩場などに群生する多肉植物です。ハオルチアやアロエと近縁で、アロエとの交配種もあります。ガステリアという名前は花の形が胃(gaster:ガスター)に似ていることが由来。
園芸植物として愛好家の間で人気が高く、いろいろな品種が作り出されてきたため、葉の色、模様、形、表面の質感のバリエーションが豊富です。斑の入り方も細い筋だったり、まだら模様だったりと個性豊か。葉は乾燥した環境に耐えるため分厚く、左右に広げるタイプとロゼッタ状に広げるタイプとがあります。いずれもその独特な株姿は迫力たっぷりです。
ガステリアは比較的丈夫な植物で、乾燥に強いです。ただし過湿には弱いので、水やりは土が乾いたときだけにし、直射日光を避けて適度に光を当てておけば過保護にしなくてもしっかり育ちます。日本と原産地では気候の違いが大きいので鉢植えが基本。一年を通して明るい日陰で管理しましょう。
一般的な品種は数百~千円程度で販売されていますが、大きな株や希少な品種などは1万円を超えることも珍しくありません。店頭で購入するなら葉の色ツヤがよく、元気な苗を選びましょう。良さそうな苗が見つからなければ、ネットで探してみるといろいろな品種が販売されていますよ。
ガステリアの基本情報

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基本情報
学名 | Gasteria |
科名 | ススキノキ科ツルボラン亜科(ユリ科) |
属名 | ガステリア属 |
園芸分類 | 多肉植物、観葉植物 |
形態 | 多年草 |
原産地 | アフリカ南部 |
特徴
草丈
5~30cm
栽培難易度
育てやすい
耐寒性
やや弱い
耐暑性
やや弱い
生長速度
遅い
生育型
春秋型もしくは夏型
ガステリアの花

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4~7月ごろになると株の中心から長い花芽を伸ばして小さな朱色の花をたくさん付けます。ぷっくりと膨らんだ付け根から花弁の先端にかけて細くなる姿は、たしかに胃に似ているかもしれませんね。花が咲き終わったら、株の養分が持っていかれないように花茎を付け根から切り取りましょう。
ガステリアの品種・種類

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臥牛(がぎゅう)

日本で古くから栽培されてきたガステリアの代表的な品種です。肉厚の葉が左右交互に重なり合い、どっしりとした株姿が特徴。牛が臥(ふ)せているように見えることから臥牛と命名されました。臥牛の中でもいろいろな種類があり、葉の長さや幅、厚み、質感などが異なります。
子宝
臥牛と並ぶ人気種・子宝。ガステリアの中では小型で、名前の通り子株をたくさん付け、群生して育ちます。
グロメラータ

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青緑色の葉がうっすらと白みがかって見えるグロメラータ。こちらもガステリアの中ではやや小型です。
ピランシー

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深緑色のつやつやとした葉が左右に重なって育ちます。うっすらと白のぶち模様が入り、扇状に生長した姿は見応え抜群。斑入り種のピランシー錦やエクセルサとの交配種など、多くの派生種が作られています。
恐竜
ピランシーとエクセルサの交配種です。葉幅と厚みはガステリア随一で、どっしりとした葉を扇状に広げるボリューミーな葉姿が持ち味。恐竜という名の通りかなり大型化し、30cm近くまで生長することもあります。
フロー(ファロー)
フローはガステリアとアロエとの交配種。見た目もアロエによく似ており、先のとがった細めの葉が特徴です。直線的な葉が放射状に展開し、濃い緑色と細かい白の斑が美しいコントラストを描きます。
アリスタータ
アリスタータもアロエとの交配種です。フローと同じく葉を放射状に広げ、全体に白い斑が入ります。葉姿はフローほど直線的ではなく、縁に細かいトゲを生やし、葉先が細いことからより繊細な印象を醸し出しています。
エクセルサ
すらっとした長い葉を放射状に伸ばす比較的大型のガステリア。生長すると直径が60cmを超えることもあります。濃い緑の葉に白い斑点模様が入り、中には緑と赤のグラーデーションカラーの品種も。
ドラゴンスキン
ゴツゴツとした質感の硬い葉が竜のウロコを思わせるドラゴンスキン。長い葉をゆるやかにねじらせながら生長します。葉の縁に沿って白い筋が入り、葉全体にも白い模様が細かく入ります。ガステリアの中では流通量が少ない希少種なので、通販で探すのがおすすめ。
虎の巻
茎が短く、へん平な長い葉を放射状に展開させる虎の巻。濃い緑色の葉に白い斑が入り、さながら虎の尻尾のようなしま模様を描きます。
臥牛錦
臥牛の斑入り種です。濃い緑に黄色~黄緑の斑がよく映えます。斑の入り方は個体によってさまざまで、中には斑の割合の方が大きいものもあります。斑の部分は光合成ができないので、斑が多いほど生長は遅め。
ピランシー錦
ピランシーの斑入り種です。黄色やクリーム色の斑が筋のように入り、緑とのコントラストが鮮やか。
子宝錦
子宝の斑入り種です。親株の脇から子株が次々と出てきて群生します。株によって斑の入り方が異なるので、気に入った子株を選んで株分けで増やしてもよいでしょう。
桜富士
株全体が白みがかり、淡緑色の斑とほんのり桜色の斑が入ります。
白馬錦
子宝錦にも似た姿の白馬錦。縦に入る黄色の筋と、葉全体の白い斑点が魅力的。よく群生します。
美鈴の富士
神秘的な白い肌が美しい美鈴の富士。筆で書いたような繊細な斑が縦に入ります。生長するとかなり大きくなり、子株もたくさん付きます。
白馬の輝き
肉厚な三角の葉を放射状に広げる白馬の輝き。薄緑色の葉に白っぽい筋が縦に入ります。葉の裏側にさりげなく入る筋にも注目。
ガステリアの育て方

栽培カレンダー
・植え付け・植え替え:3〜5月
・開花:4〜7月
・肥料:4〜6月、9〜10月
・葉挿し:4〜5月
・株分け:4〜5月
日当たり・置き場
地面に直接置くのではなく、棚などの上に置いて風通しを確保します。強い光に当てると葉焼けを起こす可能性があるので、明るい日陰か半日陰で育てましょう。ときどき鉢の向きを変えて株全体に日を当ててあげると、バランスの良い株姿に育ちます。
直射日光は苦手ですが、光量不足は徒長を招きます。葉が薄くなって間延びしたり、左右非対称の不格好な姿になってしまったり…。ガステリアは生長速度が遅く、一度徒長してしまうと元の姿に戻るまで数年はかかるので、日当たりには十分な配慮が必要です。室内で育てる場合、レースのカーテン越しに日が当たる窓際など、明るく風通しの良い場所で管理しましょう。
水やり
基本的に乾かし気味にすることが元気に育てるポイントです。生育期には土の表面が乾いてから2~3日置いてたっぷりと水やりをします。ガステリア初心者にありがちなのが水のやり過ぎによる根腐れです。少し乾燥ぎみなくらいがガステリアには適しています。また、水が直接葉にかかると葉焼けや蒸れの原因になるので、水は鉢の縁に注ぎましょう。
夏は鉢内が蒸れないよう水やりの頻度を減らします。目安としては10日に1回くらいでOK。気温の高い日中に水やりをすると鉢の中が蒸れて根腐れを起こすことがあるので、過湿を避けるためにも水やりは朝か夕方に行います。
休眠期の冬は水をあげ過ぎると株が体力を消耗してしまうので、月に1~2回くらいに抑えましょう。気温の低いときに水やりすると根が凍ってしまう可能性があるので、晴れの日や気温の高い時間帯を見計らって行います。生育が鈍い時期は一気にたくさんの水を与えると根が吸いきれません。一度に与える量は土の表面が軽く濡れる程度でも十分です。
温度
ガステリアの栽培適温は5~30℃。アフリカ原産とはいえ、赤道直下ではなく南部に生息しているので、暑過ぎは避けましょう。
夏越しのコツ
真夏の直射日光に当てないよう、寒冷紗などで遮光します。雨に当て過ぎると葉に染みができる原因に。梅雨の長雨に当てると過湿の原因になるので注意が必要です。
冬越しのコツ
気温が0℃以上あれば屋外で冬越しさせることもできなくはありませんが、氷点下が続くようだと葉が凍って枯れてしまう可能性があるので、室内に取り込んで管理した方が安全です。また、冬は休眠期に入るので水やりを控え、外に出している間は雨に当たらないよう注意しましょう。
肥料
基本的な栽培方法を守っていれば、肥料は与えなくてもすくすく育ちます。あげるとすれば生育期の4~6月、9~10月に、液肥なら週1回程度のペース、緩効性の置き肥なら肥料の用法に従って与えましょう。ただし、あげ過ぎると肥料焼けで根が枯れたり、かえって徒長を招いたりします。ガステリアは生長が遅い分、肥料の効き目もゆっくりです。元気がないからといって肥料をたくさん与えてしまうと時間差で肥料焼けを起こすこともあるので、さじ加減は慎重に判断しましょう。
用土
水はけのよい土を使用します。得にこだわりがなければ市販のサボテン・多肉植物用の培養土を使うのが簡単。自分で用意する場合、赤玉土7:腐葉土2:砂1の割合にします。もしくは赤玉土3:鹿沼土3:腐葉土3:軽石1でもよいでしょう。粒の大きさは中粒がおすすめです。
ガステリアの植え付け・植え替え

株が鉢からはみ出したり、鉢底から根がはみ出ていたりしたら植え替えが必要です。一回り大きな鉢に植えてあげると、再びのびのびと育つようになります。ガステリアは根が長く伸びるので、深めの鉢に植えます。時期は生育期に入り始める3~5月がベスト。鉢から株を取り出し、枯れた葉や根を取り除いて新しい鉢に植えましょう。根を折らないよう注意しながら、葉がバランスよく展開できるよう鉢の真ん中に株を据えます。
ガステリアの殖やし方

子株がついたら株分け
ガステリアは株分けで殖やすのが一番簡単です。根が定着しやすいよう生育期に行い、植え替えの際に子株が生長していたら株分けも一緒に行うとよいでしょう。タイミングとしては子株の葉が3枚くらいに生長したころが目安です。子株が小さ過ぎると発根しない可能性があるので、少し大きくなるのを待ちましょう。
葉挿し
株分けの次に行われているのが葉挿しです。株分けと同じく生育期に行います。植え替えの際などに下の葉を取り外し、切り口を3日ほどしっかり乾燥させてから土に浅く挿しておきましょう。根付いても芽が出るまではかなり時間がかかります。1年以上かかることも珍しくないので、気長に待ってあげてください。
実生
実生はあまり一般的ではなく、難易度が高いので基本的に上級者向け。ガステリアは自分だけでは種を作れず、ほかの株と受粉させる必要があるからです。実生に挑戦する場合は10月に種をまき、気温を15℃以上に保つと発芽しやすくなります。
ガステリアの栽培で注意が必要な病気・害虫

軟腐病
根元が水で染みたようになり、黄色っぽくなってやがて腐る病気です。腐ったところから悪臭を放つのが特徴で、放っておくと腐った部分が拡大し、根っこまで広がると株がしおれてしまいます。軟腐病は土の中にいる病原菌が株の傷口などから侵入して発症します。薬を使ってもあまり効き目がないので、一度病気になった株は処分してください。雨が多く気温が高い時期に起こりやすいため、水の与え過ぎに注意し、梅雨の時期などは微生物防除剤で予防するとよいでしょう。
カイガラムシ
白い粉状の物質に覆われた姿が特徴。葉に寄生して吸汁し、株を枯らす害虫です。風通しの悪い環境で管理していると発生しやすくなります。幼虫のうちは薬で駆除できますが、成虫は薬が効きにくいので歯ブラシなどで擦り落としましょう。
ナメクジ
戸外で育てていると雨の日や夜の間にナメクジが付くことがあります。食害に遭うと葉に穴をあけられてしまうので要注意。夜行性でジメジメとした環境を好み、はった跡はぬれて白い筋が残ります。見付けたらすぐに割り箸などで駆除しましょう。頻繁に発生するようであれば、ナメクジ用の殺虫剤を散布するのがおすすめです。
ガステリアの元気がないときには

葉が茶色っぽくなってきた
葉が茶色く枯れてきたら過湿による根腐れの疑いがあります。一度株を土から掘り出して根の様子をチェックしてください。根腐れを起こしていた場合、腐ったところをすべて切り落として数日ほど乾燥させましょう。切り口が乾いたら肥料の入っていないサボテン・多肉植物用の土に植え替え、根が出るまで水やりをせずに待ちます。土の中で発根すると新芽が出てくるので、そこからは通常通りに育てても大丈夫です。
葉が紫っぽくなってきた
真夏の直射日光に当てたり気温が高過ぎたりすると、葉が暗紫色に変色することがあります。葉焼けを起こしている状態なので、直射日光の当たらない明るい日陰に移して様子をみましょう。
ガステリアを育ててみよう!

直射日光を避けて乾かし気味にすることさえ気を付けていれば、ガステリアを育てるのはそこまで難しくありません。室内で育てる場合は光量不足にならないよう注意しながら、ゆっくりと生長を見守ってあげましょう!