目次
食料自給率とは?
食料自給率には以下の2つがあります。
- 個別の品目ごとの自給率を示す「品目別自給率」
- 食料全体についての自給率を示す「総合食料自給率」
- また、総合食料自給率は、カロリー(熱量)単位に換算した「カロリーベース(供給熱量ベース)総合食料自給率」と、金額単位に換算した「生産額ベース総合食料自給率」があります。
食料自給率の計算方法
品目別自給率
品目別自給率は、各品目における自給率を重量ベースで算出しています。その算定式は次のとおりです。算定式
品目別食料自給率=その品目の国内生産量÷その品目の国内消費仕向量×100(%)<品目別自給率算定のポイント>
・国内消費仕向量とは、国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(または+在庫の減少量)
・食用以外の飼料や種子などに仕向け(割り当て)られた重量を含んでいる。
例:2019年の小麦の品目別自給率(日本)
農林水産省のウェブサイトでは、例として2019年の小麦の品目別自給率を算出しています。小麦の国内生産量(103.7万t)÷小麦の国内消費仕向量(632.3万t)×100=16%
カロリーベース総合食料自給率
カロリーベース総合食料自給率は、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合で、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)ベースで算出しています。その算定式は次のとおりです。算定式
カロリーベース総合食料自給率=1人1日当たり国産供給熱量÷1人1日当たり供給熱量×100(%)<カロリーベース総合食料自給率算定のポイント>
・国産供給熱量とは、純食料×単位カロリー×品目別自給率(×飼料自給率・原料自給率)
・供給熱量とは、純食料×単位カロリー
・国産供給熱量を計算する際に、品目が畜産物の場合には飼料自給率を、加工品の場合には原料自給率を乗じて輸入依存した部分を除いている。
・換算のために使用する単位カロリーは、文部科学省『日本食品標準成分表』に基づいている。
2019年度のカロリーベース総合食料自給率(日本)
1人1日当たり国産供給熱量(918kcal)÷1人1日当たり供給熱量(2,426kcal)×100=38%生産額ベース総合食料自給率
生産額ベース総合食料自給率は、経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合で、金額ベースで算出しています。その算定式は次のとおりです。算定式
生産額ベース総合食料自給率=食料の国内生産額÷食料の国内消費仕向額×100(%)<生産額ベース総合食料自給率算定のポイント>
・国内生産額とは、食料×国産単価(-輸入飼料額・輸入原材料額)
・国内消費仕向額とは、食料×単価
・国内生産額を計算する際に、品目が畜産物については輸入飼料額を、加工品については輸入原料額を控除している。
・換算のために使用する単価は、農林水産省『農業物価統計』の農家庭先価格などに基づいている。
2019年度の生産額ベース総合食料自給率(日本)
食料の国内生産額(10.3兆円)/食料の国内消費仕向額(15.8兆円)×100=66%日本の食料自給率の問題点|世界と比べると著しく低い?
日本の食料自給率の推移グラフ
食料自給率を世界の国々と比べてみると
また、農林水産省が公表している「世界各国の穀物自給率」という資料によると、日本の穀物自給率は28%で、172の国・地域中125番目、OECD加盟37カ国中32番目です。穀物は食料のなかでもカロリーが相対的に高いので、自給率の実態により近い指標と考えられています。ちなみにアメリカは119%、インドは108%、中国は98%で、日本より穀物自給率の低い国は、国土が小さい孤島のような国がほとんどです。
食物自給率は、その計算方法によっても数値に大きな違いが見られ、さまざまな観点で考察する必要がありそうです。
食料自給率の低下原因は?
生産面
日本はもともと国土が狭いうえに平坦(へいたん)な土地が少ないため、農用地面積が小さいという不利な条件のもとにあります。その上、農業就業者の減少、高齢化などにより国内生産が縮小しています。消費面
食生活の「洋風化」により、米の消費が減少した一方、小麦の消費が増加するとともに、畜産物や油脂の消費が増加するなど食料消費の傾向は大きく変化しました。この変化に国内の生産状況が十分に対応できていない状況にあります。また、畜産物の消費の増加に伴って、飼料用穀物の輸入が増加していることも要因の一つです。貿易面
日本は関税や輸入制限を取り払い、農産物の貿易自由化をすすめてきました。貿易自由化による農産物輸入の拡大は、食料の安定供給をもたらす面もありますが、国内生産の縮小、後退にもつながります。実際に、ほかの多くの作物より早く1961年に輸入数量制限を撤廃した大豆の品目別自給率は、わずか6%(2019年度)となっています。食料自給率を上げるには?農業の現場の課題を知ろう
食料自給率の目標
日本では、「食料・農業・農村基本法」で食料自給率の目標を定めることを規定しています。2020年3月に策定された「食料・農業・農村基本計画」で設定された食料自給率の目標値は次のとおりです。2018年度(基準年度) | 2030年度(目標年度) | |
カロリーベース総合食料自給率 | 37% | 45% |
生産額ベース総合食料自給率 | 66% | 75% |
農業を持続的に発展させるために
農地の確保
必要な農地を確保しておくために耕作放棄地を改めて活用したり、生産性向上のために農地を集約すること、農業用水などの農業資源を整備することなどが必要です。担い手の育成・確保
農業に携わる人が減り続けることがないように、新規就農者の育成や、事業継承などは継続して行われるとともに、安心して仕事を続けることができるよう経営力強化のための支援が求められます。生産技術の向上
供給力を高めるために、生産技術の向上も欠かせません。優れた農家から技術を継承したり、デジタル技術を活用したりして、競争力の高い「選ばれる」作物を生産すれば、国内だけでなく海外のマーケットからも需要があるでしょう。品目別食料自給率ランキングから考える
品目別食料自給率と主な品目の特徴を見てみましょう。消費傾向と生産現場の課題が自給率に影響を与えています。品目 | 自給率(2017年度概算、単位%) | |
1 | 米 | 97 |
2 | 鶏卵 | 96 |
3 | きのこ類 | 88 |
4 | 野菜 | 79 |
5 | いも類 | 73 |
6 | 海藻類 | 65 |
7 | 牛乳・乳製品 | 59 |
8 | 肉類(鯨肉を除く) | 52 |
9 | 魚介類 | 52 |
10 | 果実 | 38 |
11 | 砂糖類 | 34 |
12 | 小麦 | 16 |
13 | 油脂類 | 13 |
14 | 大麦・はだか麦 | 12 |
15 | 豆類 | 7 |
米
日本人の主食である米は、潜在的な生産力は高いものの、需要の落ち込みとともに生産量が低下しています。消費者や事業者などのニーズに即した生産・流通体制の確立や、農地の集約、多収品種やスマート農業技術の導入などにより、生産性を向上することが期待されています。鶏卵
消費傾向は安定しており、需要は常にあります。供給側の生産現場も経営規模の拡大がすすみ、安定的に生産されています。野菜
加工・業務用野菜への対応を高めることで、より自給率を向上させることができると考えられています。環境制御・作業管理等ができる機器の導入や、貯蔵・加工等の拠点インフラの整備が求められます。牛乳・乳製品
チーズ、バター、生クリームなどの消費は増加しており、自給率が低下しています。後継者不足などにより酪農家数は減少しているため、担い手の育成や酪農ヘルパーなどの活用によって労働を軽減することなどが必要です。小麦
うどん、パン・中華麺など、今後も消費の増加が見込まれているため、需要に応じた品種の栽培が求められています。乾燥調製施設などの充実や高性能農業機械の導入が期待されています。豆類
健康志向の高まりもあり、特に大豆の消費については増加が見込まれる中、ロットが小さく、供給量や価格の不安定さなどの問題が指摘されてきました。新しい品種や栽培技術の導入により、需要に即した生産の拡大が求められます。食料自給率向上のために、私たちにできることを探そう
国産の食品を選ぶ
消費者が国産の食品を選ぶことは、生産を盛んにすることにつながります。特に、地産地消を意識して地元産の農産物を選べば、輸送などのエネルギーを使うことが少なくなり環境にもメリットがあります。地域の農家を支える地産地消とCSAの取り組みはこちら
食生活を育てる食育
食事の「洋風化」が食料自給率の一因だったことからもわかるように、食生活を変化させることが有効です。和食は栄養バランスも良く、ユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、その健康効果には改めて注目が集まっています。幼少期の食習慣は、その後の人生の食生活に大きな影響を与えると考えられており、食育の重要性が指摘されています。食品ロスを減らす
2017年度に日本国内の食品廃棄物は事業者から出たものが328万t、家庭からでたものが284tでした。世界中から食べ物を輸入し、その食べ物を廃棄してしまうことがないように、食べ物は無駄なく食べたいものです。食料は命をつなぐために不可欠なもの
しかし、日本は北海道から沖縄まで多様な風土を持ち、食料を生産できない国ではありません。現時点の自給率のみを見るのではなく、不測の事態をしのげる食料自給力(潜在生産能力)の維持が重要との声もあります。食料は生きていくために不可欠なものです。できることをこつこつと積み重ねながら、食や生産者への感謝を忘れずに生活していきましょう。