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甲南女子大学名誉教授
奥田 和子福岡県生まれ。広島大学教育学部卒業後、甲南女子大学教授のほか、米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員などを歴任。現在は甲南女子大学名誉教授のほか、日本災害食学会顧問、防災安全協会顧問、NPOボランティアネットワークNANDA理事を務める。 災害食や食に関する著書多数。 ■関連サイト 認定NPO法人 日本災害救援ボランティアネットワーク ■著書 『震災下の食 神戸からの提言』(NHK出版) 『働く人の災害食 神戸からの伝言』(編集工房ノア) 『本気で取り組む災害食 個人備蓄のすすめと共助・公助のあり方』(同時代社)など…続きを読む
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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
被災者が災害時に不足したと感じた食材1位は野菜!
実は、阪神・淡路大震災、東日本大震災の災害後、食生活で災害時に足りないと感じた食材1位は「野菜」との調査結果が出ています(※下図参照)。非常食として、ご飯や乾パン・即席麺などの主食は備蓄していても、野菜を意識して準備しているという方は少ないのではないでしょうか。
災害時は主食だけでなく野菜の備蓄も必須!
ところが、災害時は野菜を摂取することが難しくなります。店が閉まって購入できなかったり、畑がある人でもライフラインが止まって洗うことや調理することができなくなるためです。震災後の自治体の救援物資の食料も家庭と同様、主食をメインとしたものです。その結果、震災後の避難所入所後約4割が便秘になり、その半数が、原因は食べ物のせいだと答えています。東日本大震災発生後、岩手県の栄養士会の被災者調査では、便秘になった人に野菜ジュースと栄養剤を配ると便秘はたちまち5分の1に減ったというデータがあります。
このことから、災害時にも野菜の摂取が健康には不可欠ということがわかったのです。
野菜の摂取量の目標値は1日350gです。健康を保つために、普段野菜が身近にある農業従事者も、意識して備蓄に野菜を取り入れましょう。
ここからは、いざという時のために備える、時系列でわかる野菜の非常食や、長持ちさせる野菜の保存方法、少しの手間で野菜を長持ちさせるレシピなどを紹介していきます。
ステージ1-災害直後~3日後に活躍
水も熱源も不要!そのまますぐに食べられる野菜の非常食
野菜の摂取方法としては、電気・ガス・水道などのライフラインが停止している可能性があるため、水や熱源が不要で封を開ければすぐに摂取できる「野菜ジュース」や「野菜スープ」を備えておくことをおすすめします。
手軽にとれる野菜ジュース
カゴメ 野菜一日これ一本 長期保存用
長期保存が可能な野菜ジュース。1缶の中に、緑黄色野菜を中心にした30品目の野菜が1日分の350g入っています。 食塩、砂糖、香料、保存料無添加。栄養強化を目的とした添加物も使用していません。野菜汁100%です。
内容量 | 190g×30本 |
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賞味期間 | 5.5年 |
野菜スープ
カゴメ 野菜たっぷりスープ
温めずそのまま食べることが可能な野菜のスープ。着色料不使用で、1食当たりの食塩相当量は1g以下と体にやさしいスープは、塩分の多いお弁当にプラスしても安心。
内容 | トマトのスープ(約160g)、豆のスープ(約160g)、かぼちゃのスープ(約160g)×各3 |
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賞味期間 | 5.5年 |
ステージ2-災害後4日~1カ月に活躍
日常の食事に近づけるための野菜のおかず
野菜のおかず
ご飯に合う!缶詰の野菜のおかず
サンヨー おかず缶詰セット
プルトップで缶切り不要のおかず缶セット。常温で保存でき、温めずにそのまま食べることができます。全体的に味付けがしっかりしているので、ご飯がすすみます。
内容 | きんぴらごぼう、牛すき焼き風、たっぷり五目野菜豆、たけのこやわらか煮、切り干し大根うま煮×2 |
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賞味期限 | 3年 |
日常使いにも!ローリングストックに最適なおかず
uchipac レトルトおかず15品目セット
できたてを真空パックにしたお惣菜専門店「内野家」のセット。ほかにはないさまざまな野菜のおかずがラインナップされ、非常食としてだけでなく、日常使いとして活躍し、ローリングストックできておすすめです。食品添加物、保存料、着色料は使用していないので、安心して食べることができますよ。
内容 | 牛すじこん煮100g、豚の角煮100g、照り焼きチキン1切、煮込みハンバーグ(豆腐入り)1個、鮭の塩焼き1切、さばの煮つけ1切、内野家 牛丼の具110g、ごぼうと牛肉のしぐれ煮100g、竹の子と野菜の炊き合わせ100g、筑前煮100g、肉じゃが100g、ひじき五目煮100g、鶏と大豆の旨煮100g、具だくさん卯の花100g、千切り大根煮100g |
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保存期間 | 常温で1年 |
化学調味料、着色料、保存料などを一切使用していないおふくろの味の缶詰
べターホーム協会 おふくろの味 お惣菜20缶セット
化学調味料、着色料、保存料などを一切使用せず、かつお、昆布、しいたけなどの食材からだしを取った、日本最大の料理教室を持つ「ベターホーム協会」の味付けです。野菜が入ったおふくろの味の和食が手軽に食べられます。プルトップのフルオープン缶で、缶切りがなくても開けられます。
内容 | うの花炒り65g、きんぴらごぼう45g、ごもく豆70g、切り干しだいこん65g、ひじき65g、たけのこかか煮55g、さといもいか風味70g、まめこんぶ60g、むらさきはな豆70g、かぼちゃいとこ煮60g×2缶 |
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賞味期間 | 3年 |
汁物にプラス!フリーズドライの野菜
乾燥野菜 ベジ日和
九州産のキャベツ、にんじん、玉ねぎ、ほうれん草、えのき茸を乾燥させた、野菜の保存食。お味噌汁やスープ、ラーメンに入れて手軽に野菜を取り入れることができます。野菜の甘みがあり、味もおいしいと評価の高いフリーズドライ食品です。
内容量 | 50g×2パック |
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賞味期間 | 10カ月 |
ステージ3-災害後1カ月以降に活躍
常温で日持ちする野菜と災害後に購入したい野菜
※東日本大震災の場合、1週間後で電気の復旧率98.6%、3週間後で水道の復旧率99%、5週間後でガスの復旧率99%
常温で日持ちする野菜は何がある?
ローリングストックとして普段使っている野菜を多めに購入しておきましょう。常温で長持ちする野菜がストックされていれば、すぐに買い物に行けない状況であっても、料理に活用できますよ。▼家庭菜園で栽培しながらローリングストックするという手も!
1. じゃがいも:冷暗所で3カ月保存
普段からよく食べられるじゃがいもは、でんぷんが主成分ですが、ビタミンCやカリウム、食物繊維も豊富な優秀な野菜です。暑い季節でなければ冷暗所で2~3カ月の保存が可能です。じゃがいもは光が当たると緑色に変色し、食中毒をひき起こすソラニンを生成するので、光を避けて保存するのが基本になります。湿気に弱いので、新聞紙に包むといいでしょう。寒さにも弱いため、暑い時期の保存は冷蔵室よりも温度の高い野菜室ですることをおすすめします。2. さつまいも:常温で1カ月保存
10~1月が旬のさつまいもは、涼しい季節であればそのまま常温保存可能な野菜です。ただし、室温が20℃を超えると芽がでてきてしまうので、保管場所に注意しましょう。さつまいもは、おやつにもなり、ビタミンCやビタミンB1、食物繊維やポリフェノールが豊富で、腹持ちも良い食材なので、ローリングストックにおすすめです。▼さつまいもを保存方法を知りたい方はこちら!
3. かぼちゃ:冷暗所で1~2カ月保存
甘みがあり、子どもや女性に人気が高いかぼちゃは、カットせずまるごとであれば13℃以下の冷暗所で1~2カ月保存が可能な野菜です。栄養素も高く、免疫力を高める働きがあるβ-カロテンをはじめ、ビタミンB群、ビタミンE、カルシウムなどを豊富に含みます。新聞紙に包んで保存するとさらにいいでしょう。▼かぼちゃを長く貯蔵する方法や保存のコツを知りたい方はこちら!
買い物ができるようになったら
物流ストップに備える!野菜を長持ちさせる保存方法
少しの工夫で野菜は長持ちします。災害時だけでなく日頃から、野菜の保存方法にひと手間かけてみませんか?
長期保存できる野菜の保存方法|冷蔵・冷凍
▼玉ねぎの長期保存について知りたい方はこちら!
▼ほうれん草の長期保存について知りたい方はこちら!
▼白菜の長期保存について知りたい方はこちら!
長期保存できる野菜の保存方法|干し野菜
▼干し野菜の作り方について知りたい方はこちら!
少しの手間で長期保存できる野菜のレシピ
【保存食】焼きパプリカのにんにくオイル漬け:冷蔵保存で1週間~10日・脱気して3カ月~半年
ここでは、彩り鮮やかな焼きパプリカのにんにくオイル漬けをご紹介します。
材料
・パプリカ:3個・エキストラバージンオリーブオイル:大さじ6
・塩:小さじ1
・砂糖:大さじ1
・黒コショウ:少々
・にんにく:1片(つぶしてみじん切り)
・純米酢:大さじ2
作り方
1. パプリカは洗って半分に切り、種とヘタをとってグリルで20分ほど全体が黒くなるまで焼く。3. パプリカを縦に包丁で細切りする。
4. パプリカと、ほかの材料を混ぜてビンに入れる。※ビンは煮沸消毒してから使用しましょう。
5. できあがり!味をなじませるために1日置く。
保存期間
冷蔵庫で1週間~10日【さらに長期保存したい場合】
ビンを脱気させるために、パッキン付きのふたのビンを準備します。
ビンにオイル漬けを入れたあと、鍋に水を入れ(ビンのふたよりも下の水位)、沸騰したあとに食材を詰めたビンを浸けて5~8分ほど火にかけます。その後、ビンを鍋から取り出しフタを少しずつゆるめていくと内圧が上がったビン内から空気が逃げ、「シュッ」と音がしますので、すぐにふたをきつく閉め直します。キツくふたを閉めたビンを、再び熱湯の中に入れ20~30分煮沸消毒。ビンを取り出し、常温で冷ませば、できあがり!
元のふたの状態よりふたの中央がへこんでいるのが、脱気が成功した証です。保存期間は3カ月~半年ほどです。
参考サイト:食べ太郎.com「自家製瓶詰めで食品を長期保存する」
▼ネギミソについて知りたい方はこちら!