ブルーベリー摘み取り園とcafeを起業!西田博一さんに聞く
futaba cafe 西田博一さん プロフィール
1974年生まれ。関東でIT関連企業に勤務していたが、実家で農業をしていた祖父の死をきっかけに地元で農業をやりながら新しいことを始めてみたいと思い立ちUターン。農業を軸に相性の良い飲食業を組み合わせ、お互いの長所を伸ばし短所を補うスタイルで丹波篠山の豊かな自然に育まれながら事業を展開している。
IT関係の仕事を辞めてUターン
西田さんは東京でIT関係の仕事をしていました。実家は米と黒豆を作る兼業農家。現在は地元に戻り、実家と近隣の農地を使ってブルーベリー、地元名産の丹波栗など、野菜全般を栽培しています。祖父や父が栽培していなかったブルーベリーに挑戦
調べてみると、実家で栽培している米や黒豆と収穫時期が違うこともわかりました。繁忙期が重ならないこと、通年で栽培できるものがあると収入が安定することなどを考慮して、ブルーベリーの栽培に踏み切ります。
仕事を続けながら、ブルーベリー栽培の準備
西田さんは、最終的にバッグ栽培を採用することで、その危機を乗り越えます。バッグ栽培とは、鉢の中で栽培に適した溶液を与えながら育てる方法。それでも、丹波篠山地域の寒さや実を採りすぎたことにより、最初に植えた400本のうち100本は枯れてしまったといいます。
補助金を活用して半年後にカフェを開店
農林水産省では、次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金や就農直後の経営確立を支援する資金を交付する事業を行っています。
農業次世代人材投資資金(農林水産省ウェブサイト)
カフェ開店に必要だったもの
カフェの開店には、飲食店経営のノウハウが必要です。心強かったのは、同郷の妻の真紀子さんと妻の妹の大上聖子(みなこ)さん。飲食店の店長経験がある聖子さんは、飲食店の経営について熟知していました。現在、「futaba cafe」では、農業分野を西田さんが、ランチを真紀子さんが、ケーキなどのスイーツを聖子さんが担っています。futaba cafe|開園までの歩み
年 | できごと |
2008年 | ブルーベリー専業農家で研修 |
2009年 | ブルーベリー400本定植 |
2010年 | ブルーベリー300本定植、改装・開店準備 |
2011年 | 飲食業・菓子製造業営業許可取得、futaba cafe営業開始、ブルーベリー収穫開始 |
2012年 | ブルーベリー摘み取り園開園 |
お客様に満足してもらえる接客を
観光農園を始めて気づいたこと
西田さんは、現在、30種のブルーベリーを育てています。栽培年数を重ねるうちに、西田さん自身も甘さだけではなく、ブルーベリーの持つフレーバーに関心が高まってきているそうです。
広告宣伝費はかけない代わりに…
こまやかな説明が口コミやリピーターにつながっています。
結果的に農業に専念できた
カフェは、農園のアンテナショップ、加工所、直売所、休憩所として活用され、オーナー制度や摘み取り園など、多様な販売方法を取っています。ヤギが出迎えてくれるfutaba cafeは地域の魅力も高めています。
futaba cafe
ブルーベリー園を併設したカフェ。自家農園や地元の季節の食材をふんだんに使ったランチとスイーツを提供しています。
住所:兵庫県丹波篠山市八上内甲85-1
TEL:079-506-1573
FAX:079-506-1574
定休日:毎週水・木曜日
アクセス:JR福知山線「篠山口」駅よりバス乗車「西八上口」より徒歩約2分または「西八上」より徒歩約5分、舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口」インターチェンジより車で約20分
観光農園とは
改めて観光農園の定義を確認しましょう。観光農園とは、農業を営む人がほ場において生産した農産物の収穫などを観光客に体験させたり、ほ場を観賞させて代金を得ている事業のことです。2015年時点において、全国で6,597経営体が観光農園を営んでいます。特に盛んなのが山梨県と長野県で、それぞれ800以上の観光農園があります。
参考:2015年農林業センサス報告書(農林水産省ウェブサイト)
観光農園経営のメリットと必要なことを知ろう
観光農園のメリット
単価が高くなる
観光農園では、体験に対しての料金として、普通に農産物を売るときよりも単価を高く設定していることが多いです。市場や直売所などのように価格競争をする必要がなく、農業体験を通してお客さんが商品の価値をわかって購入してくれたりするので、適正な価格で販売することができます。また、体験料金とともに、収穫する量を農園側が設定できるので、ある程度まとまった量を買ってもらうことができます。収穫の手間がなくなる
お客さんが自分で収穫するので、収穫作業が軽減できます。その場で持ち帰ってもらえれば、梱包や出荷の作業もする必要がありません。規格外の農産物も無駄にならない
規格外やわずかな傷のある農産物は出荷できないことがありますが、観光農園ではお客さんが収穫してくれれば商品になります。珍しい形のものが喜ばれたりする可能性もあります。西田さんのように飲食店を併設している場合や加工品を販売する場合は、原材料として使用することも可能です。
ファンやリピーターを作りやすい
出荷した商品はどこでどんな人が購入しているかまではわかりませんが、観光農園では畑に来てくれた人と交流し、農産物の魅力を直接伝えられます。また消費者にとって、観光農園を訪れたことは思い出となります。楽しい思い出ができれば、再び足を運ぶでしょう。観光農園に必要なこと
設備などの準備が必要
観光客を受け入れるにあたり、最低限トイレや看板が必要です。また、駐車場や受付、休憩場所などを用意するとなると、より初期費用がかかることになります。接客が必要
観光農園ではいろいろなお客さんがやってきて、その一人ひとりに接客が必要です。また、週末や祝日にオープンしておいた方が収益があがるなど、お客さんのニーズにあわせた勤務をする必要があります。観光農園の始め方|失敗しないために
西田さんのお話からもわかるように、観光農園を始めるにあたっては入念な準備が必要です。年間を通して作物を栽培し、来園してくれる人を安定的に確保するためにはどのような戦略をたてるのか、経営手腕が問われるでしょう。また、家族など協力者の存在も鍵となります。観光農園には、いろいろな人と直接交流し、多様な形で生計を立てられる魅力があります。収穫の手間が省け、市場には出せない規格外の農産物も収入につなげることができるのもメリット。今後、安定的に農業を続けるための手段として観光農園というかたちを選ぶ人が増えるかもしれません。