目次
溶接って難しい?溶接の始め方
溶接を始めるのに必要なものは?どのくらいの費用が掛かるの?
溶接の必需品
溶接に必要なものは溶接機と溶接の材料、それに身を守るためのグッズです。一つひとつ見ていきましょう。1. 溶接機
溶接を行うための機械。これがなくては始まりません。溶接方法によってさまざまな種類があります。ダイヤルの付いた金属の箱に、アースのコードと溶接トーチのコードが付いています。安いもので1万円前後~。2. 溶接棒・ガス(消耗材)
溶接で溶かし入れるための金属や、ガスなどが必要です。金属は棒状のものとワイヤー状のものがあり、溶接の種類によって選びます。また、ガスを使う溶接と使わない溶接があります(次のセクションで解説します)。棒は1本数百円、ワイヤーは一巻き3千円、ガスは1本千円前後~。3. サングラス・溶接面
溶接は非常に強い光が出るので、直接見ると目を傷めてしまいます。そこで、専用の面やサングラスが要ります。初心者なら、溶接の光が出たときにだけ暗くなる自動遮光のものがおすすめです。形は、手で持つタイプ、ヘルメットタイプ、サングラスタイプがあります。ヘルメットかサングラスタイプなら両手を空けられるので作業しやすいです。安いもので千円前後~。4. 防火手袋
手元は火花が降り掛かりますし、溶接した金属は非常に熱くなるため、防火手袋は必須。革素材が多いです。千円前後~。5. 防火エプロン
火花をガードするためにあると良いです。こちらも革素材のものが多く、2千円前後~。6. マグネット
なくても良いのですが、あると便利なのが固定用マグネット。張り合わせる板をぴったりくっつけて保持したり、直角に保持して溶接したりできるので、歪みを小さくできます。千円前後~。価格
上記で挙げたものをすべて個別にそろえて、大体1万5千円+消耗材費で2万円程度でしょうか。もちろん安い商品を選べばという条件付きなので、より良いものを選べばこれ以上掛かります。でも、「思ったよりは安いな」という印象の方も多いのではないでしょうか?さらに、個別に揃えるのでなくセットなら、必須の1~4がそろって1万円しないお得なものもあるようです。育良精機 アークファン IS-H40BF
溶接の種類の選び方
用途から選ぶ
溶接する素材から選ぶ
溶接しやすい金属と、難しい金属があります。鉄(軟鉄)<ステンレス<アルミ<マグネシウムの順で難しくなり、溶接方法も限られてきます。アーク溶接 | 半自動(ガス) | 半自動(ノンガス) | TIG(直流) | TIG(交流) | |
鉄(軟鉄) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ステンレス | ✕ | △ | △ | ◎ | ◯ |
アルミ | ✕ | △ | △ | ✕ | ◎ |
マグネシウム | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
見た目から選ぶ
溶接の周りに付く粒のようなものをスパッタといいます。アーク溶接やノンガスの半自動溶接ではこのスパッタが多く出て見た目が損なわれます。スパッタが出にくいのはTIG溶接。車のカスタムなど、溶接部分の美しさが求められる場合はTIG溶接が向いています。使う環境から選ぶ
屋外で溶接を行いたい場合は、アーク溶接かノンガスの半自動溶接を選ぶと、風の影響を受けずに使えます。逆に、TIG溶接やガス利用の半自動溶接は屋外では利用できません。作業の種類・量から選ぶ
半自動溶接、アーク溶接、TIG溶接の順に溶接スピードが早いです。建築物や構造物は溶接箇所が多いため、素早く溶接できる半自動溶接が向いています。屋外の場合はノンガスが良いでしょう。バイクのフレームや船のステンレス溶接には、きれいに溶接できるTIG溶接が向いています。一覧表
アーク溶接 | 半自動(ガス) | 半自動(ノンガス) | TIG(直流) | TIG(交流) | |
素材 | 鉄 | 鉄(ステンレス・アルミ) | 鉄・ステンレス | 鉄・ステンレス・アルミ・Mg | |
見た目 | ✕ | △ | ✕ | ◯ | ◯ |
環境(屋外利用) | ◯ | ✕ | ◯ | ✕ | ✕ |
スピード | △ | ◯ | ◯ | ✕ | ✕ |
向く用途 | 建築物や構造物 | バイクのフレームや船 |
仕組み・特徴
アーク
もっとも一般的な溶接方法がアーク溶接です。トーチに取り付けた溶接棒に電気を通し、母材(溶接するもの)に接触させるとアークが発生し、溶接棒と母材が溶けて一体化します。仕組みが単純なため溶接機も比較的安価で始めやすい溶接方法です。一方で溶接自体の難易度は高めで、初心者がきれいに溶接をするのは難しいです。半自動溶接
上記のアーク溶接の溶接棒がワイヤーに代わったバージョンで、スイッチを押すことでノズルから自動で溶接ワイヤーが送り出されるしくみの溶接のこと。自動でワイヤーが出てくるので、初心者でも扱いやすい溶接方法です。ガスを使用し、種類によってMIG溶接(アルゴン)、MAG溶接(混合ガス)、CO2溶接(炭酸ガス)などと呼ばれます。また、フラックス入りワイヤーを使う場合、ガスなしでも溶接できます。扱いやすさと溶接スピードの速さが利点の溶接方法です。TIG溶接
トーチ先端のタングステン電極からアーク光を出し、母材を溶かすことで溶接します。そのため、溶接棒を使わずに母材同士を溶かして溶接することもできます(溶接棒を使った溶接もできます)。仕上がりが美しく、音も静かです。一方で溶接スピードは他の方法に劣ります。その他の溶接 レーザー溶接・ガス溶接など
設備が必要、また危険が大きいなど、初心者が扱うことはほぼない溶接方法です。溶接してみよう(1)家庭用溶接機を用意する
家庭用溶接機は大きめのホームセンターやネットショップなどで買うことができます。アーク溶接か、半自動溶接か、TIGか、溶接の種類を決めて溶接機を選びましょう。さらに、以下のポイントにもご注意を。
選ぶ際に知っておきたいこと
100V or 200V
一般家庭ですと100Vを選びそうになるかと思いますが、ちょっと待ってください。溶接のパワーは電気。パワーが高い方が母材が溶けやすいので初心者でも扱いやすいし、厚いものも溶接できます。実は多くの一般家庭で200Vも引き込まれています。エアコンのコンセントが200Vではありませんか?コンセントはなくても、分電(ブレーカー)に200Vの表示があれば、簡単な工事で200Vが使えるようになります。契約定格電流を調べ、下回る機種を選びましょう。複数方式が使えるものも
溶接の種類が複数使える溶接機もあります。半自動溶接のガス式とノンガスの切り替えはもちろん、アーク溶接とTIG溶接の切り替え、さらに100Vと200Vの切り替えができるモデルも。さまざまな用途で溶接するなら、将来的に2台買うより、1台で複数方式選べるものを買うのがお得かもしれません。定格使用率とは
溶接機には、連続使用によって起こる温度上昇で溶接機を壊さないための防護機能があります。10分間に何パーセント使用したかという使用率が設定されており、それを超えると使用できません。例えば使用率20%なら、10分中2分までしか利用できません。溶接量が多いなら、定格使用率が高い機種を選びましょう。電源がない場合はバッテリー式やエンジン発電式も
電源のない山の中や畑で溶接を行う場合、バッテリー式やエンジン発電式のものもあります。ただし、入門用としては非常に高価なので、初心者はまず普通の溶接機で練習してからが良いでしょう。人気メーカーのおすすめ溶接機
スズキッド
溶接機といえばスズキッドと言っても良い定番溶接機メーカー。扱っている溶接機の種類も豊富で、欲しい機種がきっと見つかるはず。スズキッド(SUZUKID) 100V専用直流インバータ溶接機 アイマックス60 SIM-60
スズキッド(SUZUKID) 直流インバータ溶接機 アイマックス120 SIM-120
スズキッド(SUZUKID) 100V半自動溶接機 アーキュリー80 SAY-80L2
Duty Japan
車の整備工具などのメーカーであるDuty Japan。その名の通り日本のメーカーです。溶接機の種類は多くありませんが、手頃な値段で人気です。Duty Japan ノンガス半自動溶接アークMIG単相200V
アストロプダクツ・RILAND・その他
工具のメーカーとして有名なアストロプロダクツでも溶接機を販売しているほか、RILANDなどもよく使われているメーカーです。RILANDは特に半自動溶接用のワイヤーが安価で、使っている方が多い気がします。高品質 アーク・TIG兼用溶接機/TIG200-SD インバーター溶接機
レンタル・中古情報も参考に
個人でも使える溶接機レンタル
溶接機のレンタルはさまざまな会社が行っていますが、個人で借りられるところは意外に少ないです。でも本格的な溶接機を使いたい!という方は下記会社はいかがでしょうか。また、スペース付きでのレンタルを希望するなら、最終ページで紹介しているワークショップ・レンタルスペースもチェックしてみてください。南部興産
個人への貸し出しも対応可能だそう。料金は基本料金1,000円+1日2,000円~。個人でも本格的な溶接機を使いたい方はこちらへ。HP→南部興産
中古情報
楽天中古市場
楽天中古市場では中古品、新古品の溶接機が売られています。種類はそれほど多くはありませんが、タイミングによっては人気機種がお得な価格で売られていることも。HP→楽天中古市場
溶接してみよう(2)準備
高温で、火花が飛び散る溶接は、しっかりした安全対策が必要です。防護グッズを使い、服装に気を付け、環境を整えましょう。溶接面・ゴーグル
溶接時の強い光から目を守る溶接面や溶接用ゴーグル。普通のものは、溶接のときだけ光とその周りがぼやっと見え、通常時は周りが全く見えないほど暗く、手元が見えません。自動遮光式なら、通常時は見えつつ、強い光が出たときだけ暗くなるので手元が見え、初心者でも作業しやすくおすすめです。スズキッド(SUZUKID)液晶式自動遮光溶接面 アイボーグアルファ2 EB-200A2
自動遮光 溶接ゴーグル 溶接メガネ フルオート ソーラー 遮光速度1/25000s
服装
防火手袋・防火エプロン
手元はもっとも火花が散るので、しっかりした防火手袋、防火エプロンを使いましょう。燃えたり溶けたりする化学繊維は厳禁。防火手袋はこちらの記事でも紹介しています。周囲の環境を整えよう
体の防備をしっかりしたら、次は環境の準備。周囲に燃えやすいものがあると、火花から燃え移り家事になる危険性が。燃えやすいものをどけてから作業を始めましょう。半自動溶接機の使い方
各部の名称
本体
箱のような形の本体にはメインスイッチ、ワイヤー送り調節ダイヤルが付いており、機種によっては出力調整のダイヤルやガス/ノンガス切り替えスイッチなどがついています。カバーを開けるとワイヤーが入っています。アース
本体には、アースケーブルが付いています。先は金属のクリップのようになっており、母材もしくは溶接台に取り付けます。電源ケーブル(キャプタイヤケーブル)
電源を取るためのケーブルが出ています。コンセントのアースに接続する用の電源ケーブルのアースが付いています。トーチ(ガンノズル・ホルダー)
トーチは溶接を行う場所です。溶接ガン、ガンノズル・ホルダーなどともいわれます。トリガーを引くと通電し、ワイヤーが自動で出てきます。ノズル内のチップは消耗品で、しばらく使ったら交換する必要があります。溶接機の使い方
Step1. 接続する(つなぎ方)
・溶接トーチを本体につなぎ、電源ケーブルをコンセントにつなぎます。・本体カバーを開いてワイヤーをセットします。
・トーチの中のチップを取り外し、ワイヤー送りボタンをトーチからワイヤーが出るまで押します。
・ワイヤーの余分な部分を切ってチップを取り付けます。
・アースのクリップを母材に取り付けます。
Step2. 出力調整
・本体に、溶接の厚さによって、電流とワイヤー送り速度の目安値が書いてあるので、まずはその通りに調整します。・数回溶接をしてみて、自分のやりやすいワイヤー送り速度に合わせていきます。その際、送り速度を遅くするのであれば電流を小さく、速くするのであれば電流を大きく調整するとバランスを取りやすいです。
Step3. 溶接
・ワイヤーがチップから1cmくらいになるようにカットします。・先に、端の2点ほど点付けして仮止めします。溶接したい部分にワイヤーを近づけ、少し浮かした状態でトリガーを引きます。
・本溶接をします。点付けと同じように近づけ、距離を保ちつつ溶接個所に沿って動かし、溶接します。
参考になる動画
半自動溶接初心者向け説明
セッティングの仕方~溶接の仕方まで丁寧に解説されています。特にセッティングが詳しく解説されており、ワイヤーの通し方なども分かりやすいです。【DIY】100V溶接機の使い方を初心者に教えてみた!
こちらも初心者向けに基本の解説です。初心者に実際教えるという形なのでとっつきやすく、また、調整の仕方が丁寧に解説されています。TIG溶接機の使い方
使い方
Step1. 準備
・タングステン電極の先端をディスクグラインダーなどで削って尖らせます。ただし、アルミ溶接の場合は鈍角に。・トーチの中に電極を差し込み、5mmほど出した状態でキャップを締めます。
・アルゴンガスの流量を調整します。メーターを見て調節ねじを回し、5~10になるようにします。
・電流を調整します。本体または取扱説明書の目安表に従ってください。
・アースを母材か作業台に接続します。
Step2. 溶接
・電極を母材より少し浮かし、ゆっくりと溶接する線に沿って動かします。・溶接棒ありの溶接の場合、溶接の進行方向側に溶接棒を持ち、金属が溶けている部分に溶接棒の先を流し入れるように溶接していきます。アークに触れるとだまになりはじかれるので注意。
参考になる動画
WT-TIG200を使った初心者向けTIG溶接の説明
溶接までの準備がしっかりと解説されています。アルミTIG溶接
アルミのTIG溶接について丁寧に解説されています。TIG溶接ローリング教えますEnglish subtitles
TIG溶接をより美しく仕上げるためのローリングの動きについて解説されています。溶接講座・ワークショップなら安心して始められる
1人でやるのは不安、という方はまずワークショップや溶接講座に参加するのはどうでしょうか?溶接機やスペースの貸し出しをしているところもあるので、使い方が分かったら、そこで自分のしたい溶接作業をすることもできます。カインズ
ホームセンターのカインズでも実は溶接のワークショップをやっています。内容はプレートの作成など。また、溶接コーナーの貸出もあるので、体験した後に自分の作品を作るのにも使えて嬉しいですね。実施している店舗には限りがあるのでHPで確認を。HP→カインズ DIYstyle
Fe★NEEDS
溶接機のSUZUKIDが溶接を体験する場所として運営する店舗。さまざまなワークショップメニューがあり、スツールやアームライトなど、実用品も選べます。小学生から体験可能なので、お子様の自由研究にも。HP→Fe★NEEDS
MakersBase
会員制の工作スペースMakersBase。機材とスペースの貸出がある他、スツールづくりなどのワークショップもあります。機材とスペースの貸出には講習を受ける必要があるので注意を。HP→MakersBase