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ライター - 神山 朋香
大学卒業後、地方公務員として消費者教育や労働福祉の普及事業に従事した後、AGRI PICK編集部に。AGRI PICKでは、新規就農に役立つ情報などを執筆しています。…続きを読む

写真提供:HAHA PROJECT
「HAHA PROJECT」は、子どもを育てながら自分らしく幸せに生きていきたい女性たちの会員制コミュニティ。神奈川県葉山町にオープンさせたコミュニティハウスで、家庭菜園にチャレンジしています。
今回は、HAHA PROJECTがAGRI PICKとともに取り組んできた春夏栽培の完結編。育てた野菜はどうなったのでしょうか?
計画から収穫まで楽しんだ春夏栽培

写真提供:HAHA PROJECT
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これまで、HAHA PROJECTはAGRI PICKとともに、計画から植え付けまでを行ってきました。
「
子どもと一緒に野菜を育てたい」
家庭菜園アドバイザーsanaさん

写真提供:sanaさん
AGRI PICKで栽培について多くの記事を執筆している植物ライターのsanaさん。自身のライフスタイルに合った無理のない家庭菜園を楽しんでいます。今回もHAHA PROJECT代表の林理永さんにアドバイスをしてくれましたよ。
sanaさんプロフィール
農業研究センターで6年間、大豆と稲の研究作物の栽培及び実験助手業務に従事。その後、屋上ガーデン・屋上菜園などの管理業務を経て、植物ライターに。植物・園芸サイトやフリーペーパーなどで活動。AGRI PICKでは新規就農者のための野菜の栽培方法や農業経営者の取材記事を執筆中。
予想よりも伸びなかったミニトマト

写真提供:HAHA PROJECT
HAHA PROJECTのミニトマトの株には、いくつもの赤い実がついていました。約1カ月ぶりに、HAHA PROJECTのミニトマトを見たsanaさんは少し驚いた様子でした。
葉が少なくて、元気がないですね。先月から今日に至るまでの途中経過を見ていないので、詳しい要因について断定することはできませんが、葉が少ないために光合成が行われず、生育していないようです。今ついているミニトマトは赤くなり、収穫することはできますが、残念ですがこれ以上草丈は伸びず、このまま枯れていくと思います。
確かに、1カ月前と比べると実は赤く色づいていますが、草丈は大きく変化していません。一見、大きな問題はないように見えますが、本来なら人の背丈を超えるほどに生長し、アーチ形の支柱に沿ってミニトマトのアーチができる予定でした。
おそらく葉を取り過ぎてしまったのだと思います。基本的に黄色くなり古くなった葉は、そのまま残しておいても光合成ができないので、不要な葉として取り除きます。しかし、なんらかのトラブル発生(悪天候や生理障害、病害虫)によって葉が黄色くなった際は、それらを改善するための対策が不可欠です。でも、家庭菜園初心者にとって、トラブルに対して臨機応変に対応することは難しいかと思います。こうして収穫までこぎつけたのですから、家庭菜園初挑戦としてOKではないでしょうか。
生理障害は、作物にとって適さない温度や光、水分、土壌などの栽培環境によって、正常な生育ができなくなることで起こります。例えば、日ごろの管理では、肥料の与え過ぎや養分不足、水の与え過ぎや過乾燥などが生理障害を招く主な要因です。そして、生理障害によって生育が弱まった作物は、健全なものに比べて病害虫の被害も受けやすくなります。
sanaさんからのアドバイス
確かに作物を育てるのは人ですが、太陽の光や恵みの雨など自然の助けがなければ作物は大きく育ちません。初めから完璧な栽培を目指そうとすると疲れてしまうので、こうして収穫までたどり着けたことをお子さんと一緒に喜び、もぎたての野菜のおいしさを味わってください。
ちょっと失敗したのは残念ですが、来年リベンジします!
トマト、ミニトマトの病気、病害虫についてはこちらをチェック
まっすぐで大きなキュウリが実った!

写真提供:HAHA PROJECT
前回は小さくて曲がった実をつけていたキュウリ。1カ月経って、いっそうつるを伸ばし、葉を広げて支柱に沿って生長していました。そして、そこには大きくてまっすぐな実がついていました。
収穫最盛期のキュウリは、1日で3cmほど大きくなるので、十分な水やりが欠かせません。通常プランター栽培の水やりは、朝たっぷり与えて、夕方に土が乾くくらいがベストですが、真夏は気温が上昇するので、土中の水分が乾燥しやすく、しっかり水を与えてあげないと作物が水不足に陥ります。
最近は、朝たっぷり水を与えても、昼ごろには乾いてしまっています。
昼ごろに土の中に指を入れてみて、水分を確認してみてください。もし、乾いているようなら、水やりが十分でない可能性が…。ささっと水をかけておしまいではありませんか?鉢底から水が流れ出るくらい、しっかり水を与えてあげましょう。
それでも土が乾燥してしまう場合は
朝の水やりを早朝(6:00くらい)と、午前中(いつもの林さんの水やり時間8:00)の2回に増やします。再度夕方に土の水分状態を確認して、乾燥が激しい際は湿らせる程度の水を与えてあげるなど、キュウリの収穫期は過乾燥を防ぐ管理が大切です。
乾燥を防ぐ重要性とともに、sanaさんは水の与え過ぎにも注意が必要だと話しました。
心配だからといって、夜に水を与え過ぎると、ひょろひょろと伸びる徒長(とちょう)の原因になってしまうので、ほどほどに。あくまで午前中までに植物がしっかり水を吸い上げて、光合成ができる環境を整えてあげましょう。
また、水やりの際、夏の日差しでホース内の水が熱湯になっていることがあるので、水温には十分注意してください。
畑での露地栽培は、水やりは雨任せなところがありますが、土の量が限られるプランター栽培では、季節によって水やりの方法を変える必要があります。栽培上手になるためには、作物の様子を観察しながら、その都度適した水やりを探ることが求められるのですね。
キュウリの栽培方法はこちらをチェック
ナスは更新剪定をすることで秋まで栽培が可能

写真提供:HAHA PROJECT
続いてはナス。葉がたくさん茂り、つやつやとした実をつけています。
林さんは、ナスとの相性が良いみたいですね。ナスは水と肥料が大好きなので、引き続き水をたっぷり与え、コンスタントに追肥してあげましょう。ナスは秋まで長い期間収穫できる作物です。もちろん夏までに収穫を終わらせ、新たな秋冬野菜の栽培をスタートすることもできます。林さんはナスの栽培を秋まで続けますか?
では、7月中旬~8月上旬ごろまでに更新剪定(せんてい)をしましょう。
更新剪定のやり方
なり疲れたナスの株の枝を3分の1から2分の1ほど切り戻します。切り戻したナスの株は、剪定(せんてい)することで生長が促され徐々に葉が出てきます。このとき、ナスの株元から30cmほど離れたところにスコップで垂直に差し込んでナスの根を切り、根の発育も促しましょう。
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たくさんの実をつけたピーマン

写真提供:HAHA PROJECT
ピーマンも青々とした葉を茂らせて、きれいな緑色の実をつけていました。
ピーマンの生育適温は25~30℃と比較的高温を好みますが、温度が高くなり過ぎると、着果や結実が正常に行われなくなる性質があります(昼間が高温でも夜間涼しくなることで花芽の形成は可能)。暑さが落ち着いてからの方が、多く実をつけるかもしれませんね。ピーマンも秋以降、長ければ初冬にかけて収穫することができます。ピーマンはナスに比べて根が浅いので、特に乾燥しやすい真夏の水やりはたっぷり与えてください。
ピーマンの栽培方法はこちらをチェック
春夏栽培の終わりはいつ?

写真提供:HAHA PROJECT
林さんは、春夏栽培の終わりが気になってきました。
ナスやピーマンは、秋まで育てられることがわかりました。ミニトマトとキュウリは元気がなくなってきたら、そのまま終わりですか?
キュウリははっきりと元気がなくなってくるので、抜くタイミングが8月中にわかると思います。通常ならミニトマトも初冬まで育てることが可能ですが、残念ながら林さんのミニトマトはこれから枯れていってしまうので、収穫が終わった時点で抜き取りましょう。
キュウリとミニトマトは8月中に抜き取って、9月から新たに秋冬野菜を育てたいです!
では、今から秋冬に何を育てたいのか考えておいてください。秋冬野菜には、ケールやブロッコリー、ダイコン、ハクサイなどアブラナ科の作物が数多くあります。越冬野菜ではソラマメやスナップエンドウなどのマメ科作物や、一季成性品種のイチゴなどです。同じ作物でも品種によってさまざまな色や形があるので、種苗会社のカタログなどを見て、ワクワクしながら育てたい作物を探すといいですね。また、一緒に育てる作物の相性も考えてあげるといいですよ。例えば、ダイコンとニンジンを一緒に育てることで、それぞれの害虫を防ぐことができるコンパニオンプランツになります。
ブロッコリー、やりたいです!ダイコン、ニンジンもお料理に使いやすいですね!
コンパニオンプランツについてはこちらをチェック
秋冬栽培では自家製堆肥も活用したい!

写真提供:HAHA PROJECT
HAHA PROJECTはコンポストで堆肥を作っています。秋冬栽培には、自家製の堆肥も活用できそうです。
コンポストで作った堆肥は、種子をまく、または苗を植え付ける3週間前までに、土に混ぜ込んでおいてください。というのも、自作の堆肥は未完熟の可能性があるため、土に投入すると、そこから発酵が始まってしまい、発芽を抑制したり、植え付けた苗の根を傷めたりしてしまうからです。また土に混ぜ込んだ後は、プランターに寒冷紗などをかけて、害虫(成虫)が土の中に卵を産み付けにやってくるのを防ぎましょう。
これからは育てた野菜を食べて、ヘタや皮など不要な部分はコンポストで堆肥作り。それを土に投入して、野菜を育てる持続可能な家庭菜園が実現できます。sanaさんは「自分で作った堆肥で栽培してみると、びっくりするほど野菜がよく育つのを実感できると思いますよ」と自家製堆肥で栽培した経験を伝えていしました。
コンポストについてはこちらをチェック
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家庭菜園をやってみた感想は?

写真提供:HAHA PROJECT
約4カ月にわたり、AGRI PICKと一緒に取り組んだ初めての家庭菜園。感想を林さんに聞いてみました。
本格的に家庭菜園をしたのは初めてで、何から始めればいいかもわからなかったのですが、sanaさんに定期的にアドバイスを受けられたのは本当に心強くて、安心感がありました。自分一人だったら、何も収穫できなかったような気がします。私はどうしても放置気味にしてしまうのですが、そういう自分の癖や作物との相性などに気づけたのもよかったです。これから秋冬栽培や来年に向けて経験値が増やせたと思っています。
子どもにもきっと心に残るものがあるはずと林さんは考えています。
子どもはまだ積極的に栽培するとまではいきませんが、私が水やりをしていると外に出てきて「あ、キュウリだ!」とか「ピーマンってこういうふうになるんだね」と言っています。スーパーで売っている野菜しか知らないというわけではなく、野菜がどのように育ってどこからくるのかということを経験できたことは貴重だと思います。子どものそばで栽培していることが大切なんですね。
HAHA PROJECTが植えつけをしたのは5月。わずか2カ月半の間に、大人も子どももいろいろな経験をすることができました。今後、秋冬野菜にも挑戦する予定。新しい作物との出会いや初めての経験が、さらに林さんたちの経験値を上げていくことでしょう。
HAHA PROJECTでは、2021年9月から新たにメンバーを募集したり、Instagramを相互フォローした人にコミュニティハウスを利用してもらう取り組みを始める予定です。興味のある方は、HAHA PROJECTのウェブサイトをチェックしてくださいね。
HAHA PROJECT